近ごろ、地方の小規模企業でも「営業でAIを使ってみた」という声が増えてきました。
人口10万人未満の地域では営業人員が限られ、資料作成や提案準備に十分な時間を割けないため、生成AIは確かに強い味方になります。
しかし実際には、AIで作った提案がそのまま使えず、結局は「机上の空論で終わった」という失敗例も多く見られます。
便利さだけを期待してAIを使うと、提案の中身が現場の実情とかけ離れ、逆に営業力を落としてしまうケースすらあります。
本記事では、地方の小規模企業がやりがちな生成AIの“失敗パターン”と、使い方を間違えないための視点を解説します。
目次
1. なぜAIで作った提案が「机上の空論」になってしまうのか
生成AIは文章をつくることは得意ですが、「あなたの会社のリアル」や「顧客の現場の実状」を理解しているわけではありません。
特に地方の小規模企業では、業界の慣習・担当者の価値観・地域特性が売上に大きく影響するため、AIが出す一般論の提案では刺さらないことがよくあります。
つまり、AIで作った提案が的外れになる原因は、AIの精度ではなく、入力された情報の不足にあります。 曖昧な指示でAIに提案を作らせると、どうしても「聞こえのよい一般論」になってしまい、現場では使えない内容になりがちです。
2. 地方の小規模企業がやりがちな失敗パターン
① AIに“丸投げ”してしまう
「顧客向けの提案書を作って」とだけ指示してしまうと、AIは当然ながら一般的なテンプレートに沿った提案を返します。
しかし、それでは次の問題が起きます。
- 実際の顧客の課題とズレている
- 自社の強みが反映されていない
- 現場で実行できない施策が含まれている
地方の小規模企業では、業務の特性や社内体制が大企業と違うため、一般論がそのまま適用できないケースが多くあります。 丸投げによって「架空の会社向け提案」になり、結果として机上の空論が生まれます。
② 自社と顧客の情報が“浅いまま”AIに投げている
AIの良し悪しは、ほぼ100%「入力の質」で決まります。
しかし、小規模企業では次のような曖昧な情報でAIに依頼してしまうことが多くあります。
- 「製造業のお客さん」
- 「コスト削減の提案がしたい」
- 「Webから集客したいと言ってた気がする」
このような情報では、AIは深掘りした提案を作れません。
本来必要なのは次のような具体情報です。
- 業界・市場の変化でどんな影響を受けているか
- 担当者は何に困っていると言っていたか
- 自社はその顧客の何を理解しているか
- 過去の提案でうまくいった/いかなかった内容
これらを意識的にAIに伝えることで、初めて“自社と顧客に合わせた提案”がつくられます。
③ “やればいいことリスト”が提案だと思ってしまう
生成AIは「改善案」や「アイデア」を大量に出すことが得意です。
しかし、小規模企業の現場は人も時間も限られているため、「全部やる前提の提案」はほぼ実行不可能です。
AIが作る提案には、次のような傾向があります。
- 施策の数が多く、優先度がバラバラ
- 専門知識が必要で実行が難しい
- 外部委託を前提とした高コスト提案が紛れ込む
小規模企業では、実行できる提案は「一つか二つの現実的な改善策」に限られます。
AIが出してきた10個の施策をそのまま顧客に持っていくと、「結局どれが大事なの?」と評価されません。
提案とは「選ぶこと」であり、AIの役割は「選ぶ前の選択肢を広げること」です。
そこを誤解すると、机上の空論が生まれます。
④ 地域特性・業界慣習をAIが理解できている前提で使ってしまう
生成AIは全国規模のデータを参照して文章をつくります。
しかし、地方の小規模企業の営業では、市場の規模、客層、商習慣、口コミの影響力など、地域特性が大きく影響します。
AIはそれを自動で理解できません。
たとえば「ネット広告を増やしましょう」という提案も、地域によってはターゲットがネットを見ていないこともあります。
地域特性をAIに伝えずに提案をつくると、現実とズレが生じやすくなります。
3. 机上の空論にならないための生成AI活用のポイント
① 入力の「背景情報」「制約条件」を細かく伝える
AIは「背景情報 × 制約条件 × 目的」がそろって初めて正しい提案を作れます。
小規模企業の場合は特に、次のような条件を明確にして入力します。
- 人手が少ない(何人で実行するのか)
- 予算の上限
- 短期間で実行できる施策に限定
- 顧客の地域性(年齢層・価値観・市場規模)
これを入れるだけで、提案のズレが大幅に減ります。
② AIを「提案の下書き」に使うと割り切る
AIが作るのはあくまで「たたき台」です。
そこに、現場の経験や顧客との関係性、会社の強みを肉付けして初めて提案として機能します。
AIは“考える速度”を上げる道具であって、提案の責任者ではありません。
③ AIが出した施策は「優先順位」を必ずつける
提案の中に10個も施策があると、どれも実行されません。
小規模企業の場合は、次のように3つまで絞るのが最適です。
- 即実行できること
- 効果が高いこと
- 負担が少ないこと
これはAIには判断できない領域であり、人が決めるべき部分です。
④ ローカルの事情は必ず“人間”が補う
生成AIは「全国平均の常識」で提案をします。
地方の商圏・顧客層・採算ラインは、地域によって大きく異なります。
その差を埋めるのは、現場を知っている人間の役割です。
まとめ:生成AIは“営業のパートナー”であって“営業担当”ではない
生成AIは、小規模企業の営業にとって非常に強力な武器になります。
しかし、それはあくまで「使い方次第」です。
丸投げすれば机上の空論。
情報を丁寧に渡せば、現場に根ざした提案を生み出すアシスタントになります。
大切なのは、AIに「任せる」のではなく、「一緒につくる」姿勢。
そのスタンスを持てば、地方の小さな会社でも、AIを活かした提案営業で確実に差別化できます。
筆者プロフィール
泉 正道(Masamichi Izumi)
従業員100名以下の中小企業の伴走支援コンサルタント。C&Pいずみ社会保険労務士法人 代表。
採用定着士、特定社会保険労務士、生成AIアドバイザー。2025年現在、延べ100社以上の中小企業を支援。
採用・定着・労務に関する相談は累計2,000件超。
徹底的な伴走支援で、中小企業の採用定着を「仕組み化」する事を得意とする。
商工会、商工会議所、大手生命保険会社でのセミナー講師など、精力的に「事例」中心の情報発信をし続けている。
*姫路播州採用定着研究所
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