採用コストをかけても辞められる|地方中小企業で多発する“ミスマッチ面接”の盲点

採用コストをかけても辞められる|地方中小企業で多発する“ミスマッチ面接”の盲点

「せっかく採用したのに、3カ月で辞めてしまった」
「面接では良い印象だったのに、入社後のギャップが大きすぎた」
地方の中小企業で、このような“採用ミスマッチ”が繰り返し起きています。

採用に広告費や人件費をかけても、入社後すぐに辞められてしまえばコストは回収できません。
むしろ、現場の混乱や既存社員の士気低下といった「見えない損失」まで生じてしまいます。

本記事では、採用定着士・特定社労士・生成AIアドバイザーとして多くの地方企業を支援してきた立場から、
なぜミスマッチ面接が発生するのか、そしてそれを防ぐための考え方と実践策を解説します。


1. 地方中小企業で「ミスマッチ面接」が起きる3つの構造的な理由

① 面接の目的が「採用すること」になっている

多くの地方企業では、面接の本来の目的が「見極め」ではなく「採用決定」に偏っています。
「せっかく応募があったのだから」「この人を逃したくない」という心理が働き、
本来確認すべき価値観や働き方のすり合わせを十分に行わないまま採用してしまうのです。

結果として、入社後に「思っていた仕事と違う」「社風に合わない」というギャップが発生し、早期退職へとつながります。
採用定着士の視点では、面接は“見極め”と同時に“相互理解の場”であることを再認識する必要があります。


② 「自社のリアル」を伝えきれていない

面接での説明が「きれいごと」や「理想の姿」に偏ってしまうのも、ミスマッチの大きな原因です。
求職者が「現場のリアル」「上司との関係」「地域企業ならではの働き方」を十分に理解しないまま入社すると、
入社後の現実とのギャップが衝撃として返ってきます。

特に地方の中小企業では、「忙しい」「業務範囲が広い」「少数精鋭でやっている」という特性があります。
これをネガティブに隠すのではなく、
「だからこそ自分の意見が通りやすい」「経営者に近い距離で成長できる」といった魅力とセットで伝えることが大切です。

採用定着士としては、面接時に「期待と現実のギャップ」を意図的に伝えることを推奨しています。
“厳しさも含めて魅力を伝える”面接こそ、定着につながる本当の採用です。


③ 経営者と現場で求める人物像がズレている

地方企業では、面接官が経営者一人であることも多いですが、
その場合「現場が求める人材像」との認識にズレが生じることがあります。
例えば、社長は「将来会社を任せられるような人がほしい」と考えていても、
現場は「即戦力で動ける人」を求めている、といったケースです。

このズレが修正されないまま採用を進めると、入社後に現場が受け入れられず、
本人も「何をすれば評価されるのか分からない」と迷子状態になってしまいます。
面接前に、経営者と現場リーダーが「今回の採用の目的」「求める人物像」を共有するだけで、ミスマッチは大きく減ります。


2. ミスマッチを防ぐための面接設計のポイント

① 「相互理解」を軸に面接を再定義する

面接の目的は、「採用すること」ではなく「共に働けるかを確かめ合うこと」です。
採用定着士として推奨しているのは、「見極め面接」から「対話型面接」へのシフトです。

質問するだけでなく、「うちはこういう文化だけど、どう感じる?」「どんな働き方を望んでる?」といった双方向の対話を意識します。
このような面接を行うことで、候補者は「自分の価値観と合う会社か」を自ら判断できるようになります。


② 「3年後の姿」を一緒に描く質問を取り入れる

多くの面接では、過去の経験を中心に質問しますが、
ミスマッチを防ぐには「未来志向の質問」が効果的です。

例えば次のような質問が有効です:

  • 「3年後、どんな仕事をしていたいと思いますか?」
  • 「理想の上司・チームってどんな人ですか?」
  • 「仕事で一番やりがいを感じる瞬間は?」

これらの質問は、候補者の価値観やモチベーションを引き出すのに役立ちます。
採用定着士の立場では、こうした質問を通して「自社の未来像と重なる人」を見つけていくことが重要だと考えています。


③ 面接官自身が“会社の顔”としての意識を持つ

面接官は、会社の「第一印象」を決定づける存在です。
特に地方企業では、「経営者や幹部の人柄」そのものが採用の決め手になることが多いのです。

そのため、面接の際には「相手を選ぶ」のではなく、「共に未来を描けるか」を確認するスタンスで臨むことが大切です。
誠実でリアルな対話をすることで、「この人と働きたい」と感じてもらえる信頼関係が生まれます。


3. 生成AIを活用して“ミスマッチ防止面接”を強化する

最近では、生成AIを活用することで、面接質問や求人原稿をより的確に設計できるようになっています。
たとえば、AIに「3年後に経営を支える人材を採用したい」と入力すれば、
価値観・コミュニケーションスタイル・思考特性などを引き出す質問例を自動生成できます。

また、面接後の評価コメントや候補者の印象をAIに要約させることで、
「感覚的な印象」ではなく「定量的な見極め」ができるようになります。
これは、地方企業が人事担当を置けない状況でも、面接の質を大きく高める有効な方法です。

採用定着士×生成AIアドバイザーとしては、
「人の温度感 × AIの分析力」を組み合わせることが、これからの地方採用の新常識になると考えています。


まとめ:「採用の目的」を変えれば、定着は変わる

採用コストをかけても辞められてしまう――その背景には、面接での“相互理解不足”があります。
採用活動の目的を「人を採る」から「人を活かす」に変えるだけで、離職率は確実に下がります。

地方中小企業こそ、採用の数よりも「マッチする一人」を大切にするべき時代です。
リアルな自社の姿を伝え、共感でつながる採用を始めましょう。


筆者プロフィール

泉 正道(Masamichi Izumi)
従業員100名以下の中小企業の伴走支援コンサルタント。C&Pいずみ社会保険労務士法人 代表。
採用定着士、特定社会保険労務士、生成AIアドバイザー。2025年現在、延べ100社以上の中小企業を支援。
採用・定着・労務に関する相談は累計2,000件超。

徹底的な伴走支援で、中小企業の採用定着を「仕組み化」する事を得意とする。
商工会、商工会議所、大手生命保険会社でのセミナー講師など、精力的に「事例」中心の情報発信をし続けている。

姫路播州採用定着研究所
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