従業員50名以下の企業が直面する「労務トラブル」最新対応事例

従業員50名以下の企業が直面する「労務トラブル」最新対応事例

従業員50名以下の企業では、専任の人事担当者がいない・管理者が兼務している・制度整備が後回しになりがちといった理由から、労務トラブルの発生率が高くなる傾向があります。
特に人口10万人未満の地方都市にある小規模企業では、情報不足や法改正への対応遅れによって、トラブルが深刻化しやすいという特徴があります。

近年は働き方の多様化や法改正が加速し、労務リスクは以前より複雑になっています。
ここでは、小規模企業で実際に増えている「最新の労務トラブル」と「どのように対応したか」という具体事例を紹介します。


1. トラブルが増えている背景とは

小規模企業で労務問題が起きやすい理由には次のような共通点があります。

  • 法律を満たすルール(就業規則や書類)が整備されていない
  • 管理職が労務知識を持っていない
  • 「慣例で運用している」部分が多く、証拠が残っていない
  • 曖昧な指示・口頭での約束が後のトラブルに発展する
  • 何となくの人事評価や処遇変更が不満に繋がる

特に最近は、従業員側が労働法や権利に詳しくなっていることもあり、「説明を求められる場面」が確実に増えています。


2. 小規模企業で増えている“最新”労務トラブル事例

事例①「未払い残業」指摘と証拠を持った従業員からの申し立て

ある企業では、管理職が「残業をつけるほどではない」と判断し、サービス残業が常態化していました。
従業員が自分で勤務記録をスマホに残しており、「法定の残業代を支払っていない」と申し立て。
結果的に過去2年分の未払い残業の支払いを求められ、想定外のコスト負担となりました。

対応のポイント:

  • 従業員自身が記録した勤務時間が証拠として扱われた
  • 「管理職の判断」ではなく「労働時間の実態」で判断される
  • 勤怠のルール・承認フローの整備が不可欠

事例②「業務指示の曖昧さ」から起きたハラスメント指摘

指示が言葉足らずで伝わらず、従業員が失敗。上司が叱責したところ、「パワハラではないか」と相談が入りました。
従業員はそのやり取りをスマホで録音しており、企業として対応を迫られました。

対応のポイント:

  • 叱責そのものではなく「感情的な言葉」が問題視された
  • 口頭ベベースの指示は認識ズレを生むため、文書化・チャット化が有効
  • 管理職のコミュニケーション教育は小規模企業ほど重要

事例③「評価基準の不明確さ」から発生した不利益変更のトラブル

賞与カットや降格、人事異動などが“経営判断”として行われた結果、従業員が「説明不足」「不当ではないか」と不満を持ったケース。
評価制度がなく、「社長の主観」で決めているように見えると、トラブルは起きやすくなります。

対応のポイント:

  • 評価・処遇の根拠は「言語化」しなければ伝わらない
  • 会社側は「説明責任」を問われる時代になっている
  • 制度は簡易でもよく、基準を可視化するだけでトラブルは激減

事例④「問題社員対応」が遅れ、状況が悪化

小規模企業では、「辞められたら困る」と問題行動を放置してしまいがちです。
しかし、放置すると他の社員の不満が蓄積し、辞めるのは“問題社員以外”という逆転現象が起きます。

対応のポイント:

  • 指導は「事実ベース」「記録ベース」で行う
  • 口頭のみの注意は後で反論されやすい
  • 小規模企業ほど「早期対応」が重要

事例⑤「採用後すぐの退職」から生じる採用費用の損失

採用した人が短期間で辞めてしまい、採用コストや教育コストが回収できないケースも増えています。
トラブルに見えないものの、小規模企業にとっては経営への影響が大きい“隠れ労務問題”です。

対応のポイント:

  • 採用時の期待値のズレが離職の大半を占める
  • 仕事内容・役割・評価の基準を面接段階で明確に伝える
  • オンボーディング(入社後の立ち上げ期間)を仕組みにする

3. トラブル発生を防ぐために、小規模企業が押さえるべき視点

① ルールの整備は「最低限」でよいが「可視化」が必須

完璧な制度を作る必要はありません。 しかし、次の3つが整っていれば、小規模企業でもトラブルを大幅に減らせます。

  • 就業規則の整備(法改正対応)
  • 勤怠管理のルール化
  • 評価・処遇の「最低限の基準」

“曖昧さを残す”ことが最も危険です。


② 記録を残す文化をつくる

トラブル対応で最も重要なのは、「証拠」です。 小規模企業では「口頭文化」が根強く、これが後の食い違いの原因になります。

そのため、 ・指示はチャットやメモで残す ・注意や指導は記録しておく ・シフト・勤怠は必ずデータ管理 といった基本を徹底するだけで、トラブル対応の負担は劇的に減ります。


③ 管理職・リーダー層の「コミュニケーション教育」は必須

50名以下の企業では、管理職の発言がそのまま「会社の印象」になります。 叱り方・褒め方・注意の仕方など、コミュニケーションの質によって働きやすさが大きく変わるため、最低限の教育が必要です。

特に最近は、感情的な指摘が録音されてトラブルにつながるケースが増えています。 コミュニケーションの基本を整えることが、最大の労務リスク対策になります。


まとめ:小規模企業こそ「早期対応」と「見える化」でトラブルを防げる

従業員50名以下の企業では、労務トラブルは起きやすいものの、「起きても手遅れになる前に対処できるかどうか」が大きな分かれ目です。 小規模だからこそ、対応が早く、改善のスピードを上げやすいという強さもあります。

ルールの明文化、記録の習慣化、コミュニケーションの改善。 この3つを押さえるだけで、労務トラブルの大半は未然に防げます。

情報が錯綜する時代だからこそ、「小さな会社なりの適切な仕組み」を整えることが重要です。

筆者プロフィール

泉 正道(Masamichi Izumi)
従業員100名以下の中小企業の伴走支援コンサルタント。C&Pいずみ社会保険労務士法人 代表。
採用定着士、特定社会保険労務士、生成AIアドバイザー。2025年現在、延べ100社以上の中小企業を支援。
採用・定着・労務に関する相談は累計2,000件超。

徹底的な伴走支援で、中小企業の採用定着を「仕組み化」する事を得意とする。
商工会、商工会議所、大手生命保険会社でのセミナー講師など、精力的に「事例」中心の情報発信をし続けている。

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