地方都市の小規模企業が「3年後のナンバー2」を採用するために必要な考え方

地方都市の小規模企業が「3年後のナンバー2」を採用するために必要な考え方

人口10万人未満の地方都市では、「求人を出しても人が来ない」「採用してもすぐ辞めてしまう」といった声が後を絶ちません。
特に従業員50名以下の小規模企業では、経営者が営業・現場・管理をすべて担いながら日々を回しているケースも多く、
「もう一人、自分の代わりを担える右腕がほしい」という切実な願いが現場にはあります。

しかし、その「右腕=ナンバー2」を今すぐ採用しようとするのは、地方の労働市場では現実的に難しいのが実情です。
だからこそ、必要なのは「3年後のナンバー2を見据えた採用」という考え方。
この発想があるかどうかで、採用の成果も、会社の未来も大きく変わります。


なぜ「今すぐの即戦力」を求めると失敗するのか

地方の小規模企業が採用でつまずく最大の理由は、「今すぐ戦力になる人がほしい」という前提で動いてしまうことです。
求人広告にも「即戦力」「経験者優遇」「管理職候補」などの言葉が並びますが、
実際にその条件を満たす人材は、すでに他社で重宝されており、地方市場にはほとんど出てきません。

その結果、応募が集まらず、焦って採用した人がすぐに辞めてしまう。
「採用コストをかけても定着しない」という悪循環に陥ってしまいます。

小規模企業に必要なのは、“今すぐ助けてくれる人”ではなく、“3年後に支えてくれる人”です。
ナンバー2を「完成品として採る」のではなく、「時間をかけて育てる前提で採る」。
この発想の転換こそが、地方企業の採用成功の分かれ道になります。


「3年後のナンバー2」を採用するための3つの考え方

① 採用条件を「経験」ではなく「価値観」で決める

小規模企業では、経験やスキルよりも価値観の一致が定着のカギを握ります。
どれだけ能力が高くても、経営者の考え方や会社の文化に合わなければ長くは続きません。

たとえば求人票に「成長意欲のある人」「地域に貢献したい人」「経営者の隣で会社を支えたい人」と書くことで、
スキルよりもマインドで共感してくれる人を惹きつけることができます。

これは、採用定着の観点からも非常に重要です。
共感から始まる採用は、最初の給与や条件ではなく、「この会社と一緒に成長したい」という想いをベースにしています。
その想いこそが、3年後にナンバー2としての役割を果たす原動力になります。


② 育成のロードマップを描いてから採用する

ナンバー2を採用したいと言いながら、実際には「どのように育てていくか」が決まっていないケースが多く見られます。
採用の前に、「3年後にどんな役割を任せたいか」「どんなスキルを身につけてほしいか」を明確にしておくことが大切です。

例えば次のように、ステップを具体化しておくと採用後の育成がスムーズになります。

  • 1年目:経営者の方針や仕事の全体像を理解する
  • 2年目:一部の業務を任せ、チームをまとめる経験を積む
  • 3年目:経営会議に参加し、意思決定に関わる

このように明確な育成ロードマップを提示することで、
候補者も「自分がどう成長していけるのか」を具体的にイメージできます。
結果として、採用後のモチベーション維持や定着にもつながります。


③ 「採用活動=発信活動」と捉える

地方の小規模企業が採用で苦戦する大きな理由の一つが、「そもそも知られていない」ことです。
せっかく良い会社であっても、求人媒体に出している情報だけでは伝わらない。
求職者に「この会社、気になる」と思ってもらうには、発信が必要です。

SNSやブログ、自社サイトなどを通じて、経営者の考え方や働く人の声、職場の雰囲気を少しずつ発信する。
その積み重ねが、会社の「見えない信頼資産」になります。

特にナンバー2を採用したい場合は、「経営者とどんな未来をつくるか」というストーリーを伝えることが効果的です。
条件よりも「この人と働きたい」と思わせる発信が、共感採用を実現します。


ナンバー2採用は「経営者の考え方」を問われる採用

「3年後のナンバー2を採用する」というのは、単なる人材戦略ではなく、経営者自身のスタンスの変化を意味します。
すべてを自分で抱えるのではなく、任せる。
短期的な即戦力よりも、長期的なパートナーを信じて育てる。

この覚悟を持てるかどうかが、採用成功の分かれ目です。
ナンバー2採用とは、単に「優秀な人を雇う」ことではなく、会社の未来を共に担う人を迎える経営判断なのです。


まとめ:「人がいない」ではなく「育てる前提で採る」へ

地方都市では、確かに人材は限られています。
しかし、採用がうまくいかない原因は「人がいない」ことではなく、「人を育てる前提で採っていない」ことにあります。

今すぐ会社を支える人を探すよりも、3年後に支えてくれる人を迎え入れる。
スキルよりも価値観。
採用よりも育成。
その積み重ねが、地方企業の未来を強くしていくのです。

3年後、経営者が一人で背負わなくても良い会社になるために。
「3年後のナンバー2を採る」という考え方こそ、地方企業の持続的な成長の第一歩です。

筆者プロフィール

泉 正道(Masamichi Izumi)
従業員100名以下の中小企業の伴走支援コンサルタント。C&Pいずみ社会保険労務士法人 代表。
採用定着士、特定社会保険労務士、生成AIアドバイザー。2025年現在、延べ100社以上の中小企業を支援。
採用・定着・労務に関する相談は累計2,000件超。

徹底的な伴走支援で、中小企業の採用定着を「仕組み化」する事を得意とする。
商工会、商工会議所、大手生命保険会社でのセミナー講師など、精力的に「事例」中心の情報発信をし続けている。

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