インフルエンサーの宮崎麗果被告が、約1億5000万円を脱税したとして懲役2年6ヶ月を求刑されました。
この事件、「インフルエンサーの個人的な問題」として見ていたら、大事なことを見落とします。
姫路の中小企業の経営者にとっても、他人事ではない話が含まれています。
SNSマーケティングが当たり前になった今、インフルエンサーや個人クリエイターに業務を委託する会社が増えています。「フリーランスだから社会保険も雇用保険も関係ない」と思っている経営者の方、注意が必要です。
目次
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「インフルエンサーに仕事を頼む」ことの落とし穴
「フリーランスだから社会保険も雇用保険も関係ない」
「業務委託契約だから、労働者として扱わなくていい」
こう思っている経営者の方、注意が必要です。
実態が「雇用」に近ければ、契約書の名称に関係なく「労働者」と判断されるリスクがあります。
「業務委託で頼んでいるだけ」のつもりが、後から「これは雇用だった」と判断され、遡って社会保険料の追徴・有給休暇の付与義務・残業代の未払い請求が発生するケースが現実に起きています。
「業務委託」が「雇用」と判断される基準
労働基準法上の「労働者」かどうかは、契約の名称ではなく「実態」で判断されます。
以下の状況が当てはまるほど、「労働者」と判断されるリスクが高まります。
- 仕事の依頼を断れない関係になっている
- 業務の進め方や時間を会社が指定している
- 報酬が時間や成果ではなく「固定」になっている
- 他社の仕事を実質的にできない状態になっている
- 会社の指揮命令の下で動いている
「フリーランス契約なのに、毎日出勤させて指示を出していた」
こういう実態があると、後から「これは雇用だった」と判断され、大きな追加コストが発生します。
今回の宮崎麗果被告の事件の本質は脱税ですが、「個人に依存した働き方・発注の不透明さ」というリスクも浮き彫りにしています。
インフルエンサーや個人クリエイターとの取引が増えている今、発注側の会社も契約の実態を見直す必要があります。
フリーランス保護法も施行されている
2024年11月から「フリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス保護法)」が施行されています。
発注者(会社側)に義務づけられた主な事項はこちらです。
- 書面等による取引条件の明示(業務内容・報酬額・支払期日など)
- 報酬の60日以内の支払い
- ハラスメント対策のための体制整備
- 不当な給付内容の変更・やり直し要求の禁止
「フリーランスだから何でもOK」という時代は終わっています。
口頭だけで仕事を依頼していた・報酬の変更を一方的に伝えていた、という会社は今すぐ見直しが必要です。
経営者として確認すべきこと
① 業務委託契約書の内容を見直す
契約書があっても、実態が伴っていなければ意味がありません。
以下を契約書に明記し、実態も契約通りに運用できているかを確認してください。
- 業務内容・報酬・納期の明確化
- 指揮命令関係がないことの確認(業務の進め方は受託者が決める)
- 他社との兼業を妨げていないか
- 報酬の決め方(固定額ではなく成果・時間連動が望ましい)
② 社会保険・雇用保険の加入要件を再確認する
「業務委託のつもりが、実は雇用だった」という場合、さかのぼって社会保険料の支払いを求められることがあります。
フリーランスや個人事業主に仕事を発注している場合は、一度、社労士に実態を確認してもらうことをお勧めします。
③ フリーランス保護法の義務事項を確認・整備する
まず、発注時に書面(メールでも可)で取引条件を明示しているかを確認してください。
「口頭で頼んできた」という慣習がある会社は、今すぐ書面化のルールを設けることをお勧めします。
よくある質問
Q. 個人に「業務委託」で発注する場合、消費税の扱いはどうなりますか?
A. 労務管理とは別の論点になりますが、インボイス制度(適格請求書等保存方式)の導入により、免税事業者のフリーランスに発注する場合は仕入税額控除ができないケースがあります。発注先がインボイス登録事業者かどうかを確認しておくことをお勧めします。詳細は税理士へご確認ください。
Q. フリーランス保護法に違反した場合、どんなペナルティがありますか?
A. 公正取引委員会や厚生労働大臣による助言・指導・勧告・公表の対象となります。罰則(50万円以下の罰金)が適用される場合もあります。違反が公表されると信頼失墜につながるため、コンプライアンス面からも早めの対応が重要です。
まとめ
今回の脱税事件の本質は脱税ですが、この話には「個人に依存した働き方・発注の不透明さ」という問題も含まれています。
フリーランスへの発注が増えている今だからこそ、「契約の仕組み」を整えることと、「どういう関係性で仕事をするのか」を対話で合意することの両方が重要です。
姫路の中小企業でインフルエンサーや個人クリエイターと取引している会社は、今一度、契約内容と実態の整合性を確認してみてください。
「これって違法?」「トラブルになる前に相談したい」——そのタイミングが一番大事です。
姫路の中小企業の現場を知る社労士が、一緒に整理します。
筆者プロフィール
泉 正道(いずみまさみち)|特定社会保険労務士/採用定着士/生成AIアドバイザー
姫路を拠点に中小企業延べ150社以上へ伴走。採用・定着・労務の相談累計3,000件超(2026年6月現在)。北は福島、南は佐賀まで顧問先があり、全国オンライン対応。
「採用より定着が先」——これが口癖であり、信念。耳が痛くても言い続ける。親に与えてもらった環境や収入を「全て自分の力」と誤解する2代目社長に説教して解約された経験あり。それでも伝え続けるのが私の役目。
支援の軸は制度(ハード)と対話(ソフト)の両輪。就業規則や評価制度を整えるだけでも、研修や面談を繰り返すだけでも、人の問題は解決しない。両方が噛み合って初めて、人が辞めない組織が動き出す。伴走とダメ出しができる社労士。
生成AI支援では「研修を受けた企業の9割が1ヶ月後に何もしていない」という現実に向き合い、経営者のPCを直接触り、当日に課題を解決する「実装型」の伴走を展開。商工会・商工会議所・大手生命保険会社でのセミナー講師としても精力的に活動中。

