「応募を増やしたいから、少し良く見せる」。この発想が、結果的に採用失敗や離職につながっているケースが増えています。
特に人材確保が難しい地域では、他社との差別化を意識するあまり、実態よりも良く見せた求人表現になりがちです。しかし、“盛った採用”はほぼ確実に後で崩れます。
目次
1. よくある「盛りすぎ求人」のパターン
現場でよく見かけるのが、次のような表現です。
- 「有休消化率100%」(実際は半分程度)
- 「残業ほぼなし」(実際は繁忙期に長時間)
- 「アットホームな職場」
- 「やりがいのある仕事」
問題は、「ウソ」と「抽象表現」が混ざっている点です。
求職者は一見ポジティブに受け取りますが、入社後にギャップを感じた瞬間に不信感に変わります。
2. なぜ“盛る”と失敗するのか
採用で一番避けるべきは、ミスマッチです。
盛った求人は、一時的に応募数は増えますが、「本来合わない人」を引き寄せてしまう状態になります。
その結果、
- 入社後に「話が違う」となる
- 早期離職につながる
- 社内の雰囲気が悪化する
さらに怖いのは、SNSや口コミで情報が広がることです。一度「この会社は話が違う」と認識されると、その後の採用はさらに難しくなります。
3. 「正直に書く」と応募が減るは間違い
よくある誤解が、「正直に書いたら応募が来なくなる」という考え方です。
確かに、応募数は一時的に減る可能性があります。しかし、それは「合わない人」が来なくなるだけです。
むしろ、正直に書くことで「それでも働きたい」と思う人だけが応募してきます。結果として、採用後の定着率は上がります。
4. 書くべきは「メリット」ではなく「リアル」
求人で重要なのは、良く見せることではなく、リアルを伝えることです。
例えば、
- 仕事の具体的な内容
- 一日の流れ
- 大変な点や厳しさ
- どんな人が向いているか
こうした情報があることで、応募者は「自分に合うかどうか」を判断できます。
結果として、ミスマッチが減り、長く働く人が増えます。
5. 信用は採用活動の“資産”になる
採用は単発の活動ではありません。積み重ねです。
一度信頼を失うと、次の採用に影響します。逆に、正直な情報発信を続けている会社は、「あの会社はちゃんとしている」という評価が積み上がります。
この差は、時間が経つほど大きくなります。
まとめ
求人広告での“盛りすぎ”は、短期的には応募を増やすかもしれませんが、長期的には信用を失い、採用を難しくします。
重要なのは、良く見せることではなく、正しく伝えることです。リアルな情報を出し続けることで、「合う人」だけが集まり、結果として採用の質が上がります。
採用はマーケティングであると同時に、信頼づくりでもあります。その視点を持つことが、これからの採用には欠かせません。
筆者プロフィール
泉 正道(いずみまさみち)|特定社会保険労務士/採用定着士/生成AIアドバイザー
姫路を拠点に中小企業延べ150社以上へ伴走。採用・定着・労務の相談累計3,000件超(2026年6月現在)。北は福島、南は佐賀まで顧問先があり、全国オンライン対応。
「採用より定着が先」——これが口癖であり、信念。耳が痛くても言い続ける。親に与えてもらった環境や収入を「全て自分の力」と誤解する2代目社長に説教して解約された経験あり。それでも伝え続けるのが私の役目。
支援の軸は制度(ハード)と対話(ソフト)の両輪。就業規則や評価制度を整えるだけでも、研修や面談を繰り返すだけでも、人の問題は解決しない。両方が噛み合って初めて、人が辞めない組織が動き出す。伴走とダメ出しができる社労士。
生成AI支援では「研修を受けた企業の9割が1ヶ月後に何もしていない」という現実に向き合い、経営者のPCを直接触り、当日に課題を解決する「実装型」の伴走を展開。商工会・商工会議所・大手生命保険会社でのセミナー講師としても精力的に活動中。

