年商2億円の会社が、社員教育に2,000万円を払う|姫路の採用定着士が伝える、契約の前に「やめる基準」を決めておくべき理由

年商2億円の会社が、社員教育に2,000万円を払う|姫路の採用定着士が伝える、契約の前に「やめる基準」を決めておくべき理由

先日、姫路市内で住宅の設備工事をしている社長から、外部のコンサルティング会社に1年で2,000万円を払うと決めた、という話を聞きました。社員9人、年商2億円の会社です。

金額だけ見れば、年商の1割を社員の教育に投じるという判断です。私はこの決断そのものには賛成しました。ただ、その場で1つだけ、先に決めておいてほしいことをお伝えしました。

今日はそれについて、私の持論をお話しします。


目次

  1. 相談の概要
  2. 年商2億円の会社が教育に2,000万円を出す判断は、間違っていない
  3. 1年後に何がどうなっていれば成功なのかを、契約の前に決める
  4. 来年「続けますか」と聞かれたときの判断基準を、今のうちに紙にする
  5. やめる基準が必要なのは、コンサルティングだけではない
  6. 社員には、数字の意味を先に説明する
  7. よくある質問
  8. まとめ

相談の概要

社長が困っていたのは、売上でも人手でもなく、社員の考え方でした。何度同じことを伝えても、社員から返ってくるのは「やり方を決めてほしい」「手順を決めてくれたらその通りにやります」という言葉ばかりでした。

そこで社長は、社会人としての考え方そのものを変えてもらうために、外部のコンサルティング会社を入れると決めました。報酬は1年で2,000万円。社員向けの研修、社員一人ひとりのキャリアを考えるプログラム、営業の進め方を学ぶ講座、社長との面談。この4つを同時に走らせる契約です。

来年は利益を出すことに集中し、再来年から新入社員に一般教養やビジネスマナーを教える時間をつくりたい。そのための原資を貯めるのだ、というのが社長の説明でした。研修を受けた社員が、やりたいことはここではないと気づいて辞めてもかまわない、とまで言っていました。


年商2億円の会社が教育に2,000万円を出す判断は、間違っていない

まず申し上げたのは、この決断に反対する気はまったくない、ということです。社員9人の会社が、設備でも広告でもなく人に2,000万円を使うと決めたのは、私は立派だと思います。人に投資しない会社で、定着が良くなったのを見たことがありません。

研修に出す、外部の人に関わってもらう、社長以外の大人の話を聞かせる。どれも、社内で社長が同じことを10回言うより効きます。社長の言葉は、長く一緒にいるほど聞き慣れた言葉になってしまうからです。

それでも1つだけ引っかかったのは、この投資の終わりが決まっていないことでした。人が変わるのを待つ投資は、待とうと思えばいくらでも待てます。1年たって「まだ途中です」と言われたら、社長は止められません。


1年後に何がどうなっていれば成功なのかを、契約の前に決める

コンサルティング会社は、たいてい「結果にコミットします」と言います。この会社も、社長にはっきりそう伝えています。それなら、その結果とは具体的に何なのかを、契約書を交わす前に数字と行動で書いてもらいましょう。

たとえば、この住宅設備工事の会社なら、次のようになります。御社なら何を書くか、考えながら読んでみてください。

  • 見積もりを出した工事のうち、月に何件受注できているか
  • 1年間で辞めた社員が何人までにおさまっているか
  • 社長が現場に出ている時間が、月に何時間減っているか
  • 社員が自分で判断して進めた仕事が、月に何件になっているか

ここを決めずに始めると、1年後の振り返りは「雰囲気が良くなりました」「前向きな発言が増えました」で終わります。2,000万円を払った側が、良くなった気がする、としか言えない状態です。悪気があるわけではありません。ゴールを決めていないから、手応えで語るしかなくなるのです。


来年「続けますか」と聞かれたときの判断基準を、今のうちに紙にする

1年が終わるころ、必ず提案が来ます。「来期はどうされますか」「ここからが本番です」という話です。コンサルティング会社としては当然の営業ですし、実際、1年では変わりきらないことも多いのです。

問題は、そのとき社長の手元に判断材料がないことです。1年前に決めたゴールがなければ、比べるものがありません。目の前で熱心に説明されれば、来年もお願いします、となります。そうやってやめる機会を逃し続けると、2年目、3年目と同じ金額が出ていきます。

だから、契約の前に次の3つを紙に書いておきます。

  1. ここまで達していたら続ける
  2. ここに届かなければやめる
  3. この状態なら、内容を変えて続ける

書いたものは、コンサルティング会社にも渡してかまいません。むしろ渡したほうがいい。結果にコミットすると言う会社なら、その基準を見せられて困ることはないはずです。嫌がられたとしたら、それは契約する前に分かってよかった、という話になります。


やめる基準が必要なのは、コンサルティングだけではない

これは研修やコンサルティングに限った話ではありません。新しい事業、設備投資、求人媒体、どれも同じです。やめる条件を決めずに始めるから、ずるずると続きます。

求人媒体が分かりやすい例です。半年出し続けて応募が1件もないのに、担当者が替わるたびに「原稿を直しましょう」と言われて、気づけば2年契約している会社があります。応募が何件なければ切り替えるのかを、申し込む前に決めていないからです。今お使いの媒体について、何件で見切るかを言えるでしょうか。

やめる基準を決めるのは、始める前しかありません。走り出してからでは、払った金額や、関わってくれた人への気持ちが入ります。ここまでやったのだから、という思いが出てきて、冷静な判断ができなくなります。


社員には、数字の意味を先に説明する

もう1つ、この社長と話したのは、社員に数字を持たせるときの伝え方です。これまで数字に追われたことのない社員が、急に件数や金額を背負うと、多くの場合は恐怖でしかありません。

ハード(仕組み・決めごと)は、ゴール、評価の基準、やめる基準を紙にして全員に配ることです。ソフト(関わる人の気持ち・誠意)は、その数字を達成したら何が叶うのかを、社長の言葉で先に伝えることです。

「これを達成できなければ給料が下がる」と言われて力が出る人は、まずいません。「ここまでいけば、来年から新人を育てる時間をつくれる」「このやり方が身についたら、どこへ行っても通用する」と言われたほうが、同じ数字でも意味が変わります。社長が2,000万円を出す理由も、社員にそう言える会社にすることだったはずです。


よくある質問

Q. コンサルティング会社から「結果が出なければ返金します」と言われました。それなら安心してよいですか?

A. 返金の条件が書面にあるかどうかで判断してください。何をもって結果が出なかったと言えるのかが決まっていない返金保証は、あてになりません。「コンサルティング会社が指定した取り組みを実施しなかった場合は対象外」といった条件が付いていることも多いので、そこまで読んでから判断します。返金の有無より、1年後の到達点を先に決めるほうが大事です。

Q. 研修を受けた結果、社員が辞めるかもしれません。それでも教育を入れる意味はありますか?

A. 意味はあります。外部の人と関わると、自分がやりたいことはここではないと気づく社員が出てきます。ただ、それは研修が辞めさせたのではなく、もともと合っていなかったことが見えただけです。辞める人が出る前提で、引き継ぎと採用の段取りを先に決めておくことをおすすめします。誰が抜けても一番困るのはどの仕事か、そこだけでも先に書き出しておけば、急に言われても慌てずに済みます。


まとめ

年商2億円の会社が、社員の教育に2,000万円を払う。私はこの判断を支持します。設備や広告にそれだけ使う会社はあっても、人に使うと決められる会社はそう多くありません。

そのうえで、始める前にやることが1つあります。1年後にどうなっていれば続けるのか、何がどこまで届かなければやめるのかを決めて、紙に書いておくことです。これはコンサルティングでも、新規事業でも、求人媒体でも同じです。

基準を決めずに始めた投資は、やめ時が来ません。来年も、再来年も、同じ説明を聞いて同じ金額を払うことになります。社長が自分で決めた基準を持っている会社は、続けるにしても、やめるにしても、迷いません。

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