外食業の「特定技能1号」受入が一時停止されたことを、飲食店の約6割が「知っている」と回答した調査結果が出ました。一見すると情報感度の高さを示す数字にも見えますが、本当に問題なのはここからです。
認知している6割のうち、実際に採用戦略を見直し、動き始めている店はどれくらいあるでしょうか。現場感覚で言えば、ごくわずかというのが実情です。
「知っている」と「動いている」の間には、深い谷があります。この記事では、「知っているだけ」で止まっている飲食店経営者に、あえて耳の痛い3つの指摘をします。
目次
目次
- 「6割認知」の数字が示す、本当の危うさ
- 理由①:楽観している経営者ほど、半年後に現場が崩れる
- 理由②:採用停止の影響は「静かに、しかし確実に」進行する
- 理由③:「知っている」で満足した瞬間、思考が止まる
- まとめ:認知で止まるな、今すぐ採用の棚卸しを
「6割認知」の数字が示す、本当の危うさ
6割が認知しているということは、逆に言えば4割はまだ知らないということです。そして、認知している6割の中にも、「なんとなく聞いた」「ニュースでチラッと見た」レベルで止まっている経営者が多く含まれています。
さらに、同じ調査で約3割が「今後の日本人採用が難化する」と予想している一方、ほぼ同数が「外国人採用に前向き」と答えています。つまり、現場の経営者の多くが、方向性を定めきれないまま判断を先送りしているのです。
理由①:楽観している経営者ほど、半年後に現場が崩れる
「ウチは常連バイトがいるから大丈夫」「既存の外国人スタッフは続けてくれるから関係ない」——こう考えている経営者ほど、半年後に現場が崩れます。
理由は単純で、人は必ず辞めます。常連バイトの学生は卒業し、結婚や転居でシフトが減り、外国人スタッフは家庭の事情で帰国することもあります。「今いる人が辞めたとき、次をどう採るか」の備えがないまま、現状にすがって判断を遅らせるのは、経営者として無責任です。
理由②:採用停止の影響は「静かに、しかし確実に」進行する
特定技能の受入停止は、明日いきなり誰かが辞めるといった派手な変化を起こしません。影響は水面下で、静かに進行します。
具体的には、
- 新規で外国人を採用する入り口が一つ消える
- 既存スタッフが帰国・転職したとき、補充の手段が減る
- 同業他社が先に日本人採用を強化し、採用市場の競争が激化する
- 繁忙期(年末年始・GW・お盆)に限って、人手不足の本番が来る
これらは、気づいた時にはすでに手遅れになっている変化です。「そのうちやろう」の先延ばしが、最大のリスクになります。
理由③:「知っている」で満足した瞬間、思考が止まる
経営者にとって、情報を知ることと、その情報をもとに意思決定することは別物です。「知っている」で満足してしまうと、思考が止まり、行動に結びつきません。
本当に必要なのは、「自店はどうするのか」まで落とし込むことです。具体的には、現在の外国人・日本人比率を棚卸しし、特定技能停止が自店にどれだけ影響するかを数字で把握し、代替採用チャネル(地元シニア、主婦パート、副業人材、短時間バイト)を検討する——ここまでやって初めて「認識している」と言えます。
まとめ:認知で止まるな、今すぐ採用の棚卸しを
「知っている」で止まっている経営者と、知ったうえで動いている経営者。半年後に差がつくのは、行動の有無です。
外国人採用を続ける・減らす、日本人採用を強化する・しない——どちらを選ぶにしても、まず自店の現状把握と影響試算から始めるのが経営判断の基本です。感情論や楽観論で先送りすれば、必ず現場にしわ寄せが来ます。
「自店の採用構造を見直したいが、何から手をつけていいかわからない」「外国人雇用と日本人採用のバランスを戦略的に設計したい」——こうした不安を感じたら、ぜひ当社にご相談ください。飲食業を含めた中小企業の現場を数多く見てきた視点から、自店に合った採用の棚卸しと仕組み化を一緒に進めます。
筆者プロフィール
泉 正道(Masamichi Izumi)
従業員100名以下の中小企業の伴走支援コンサルタント。C&Pいずみ社会保険労務士法人 代表。
採用定着士、特定社会保険労務士、生成AIアドバイザー。2025年現在、延べ100社以上の中小企業を支援。
採用・定着・労務に関する相談は累計2,000件超。
徹底的な伴走支援で、中小企業の採用定着を「仕組み化」する事を得意とする。
商工会、商工会議所、大手生命保険会社でのセミナー講師など、精力的に「事例」中心の情報発信をし続けている。

