「AIが普及するから、新卒採用は減らしてもいい」——そう考える中小企業経営者が増えています。日経ビジネスの調査では、「新卒採用を減らす」と回答した企業が4割に達したと報じられました。
確かに、定型業務の多くはAIに任せられる時代です。しかし、「採用を減らすか、続けるか」という二択で判断してしまうと、3年後・5年後の組織に大きな歪みを生む可能性があります。
この記事では、AI時代の採用判断において経営者が押さえておくべき3つの軸を整理します。流行や周囲の動きに流されず、自社にとっての最適解を導くための判断材料としてご活用ください。
目次
目次
- 「採用減」がトレンドになっている背景
- 軸①:AIで代替できる業務範囲を見極める
- 軸②:自社の事業成長見通しから逆算する
- 軸③:育成にかけられる時間とコストを直視する
- まとめ:二択ではなく「3軸」で判断する
「採用減」がトレンドになっている背景
なぜ、これほど多くの企業が「採用を減らす」方向に動いているのでしょうか。背景には、生成AIの急速な普及があります。資料作成、データ整理、文章作成、問い合わせ対応——これまで新人が担っていた業務の多くが、AIで代替可能になりました。
経営者の目線で見れば、「人を採るより、AIを使いこなしたほうがコストパフォーマンスが良い」と感じるのは自然な流れです。しかし、その判断が短期的な視点にとどまっていないか、立ち止まって確認する必要があります。
軸①:AIで代替できる業務範囲を見極める
最初の軸は、「自社の業務のうち、本当にAIで代替できるのはどこまでか」を冷静に棚卸しすることです。
AIは万能ではありません。顧客との関係構築、現場での判断、属人的なノウハウの継承——こうした領域は、依然として人にしかできません。「AIで効率化できた業務」と「人がやるべき業務」を切り分けないまま採用を減らせば、本来人がやるべき仕事まで手薄になります。
まず行うべきは、自社の業務一覧を作り、AI代替の可否を業務ごとに評価することです。その結果、「人が必要な業務」が想定以上に多いことに気づくケースは少なくありません。
軸②:自社の事業成長見通しから逆算する
2つめの軸は、「3年後・5年後に自社の事業をどう成長させたいか」からの逆算です。
事業を拡大する計画があるなら、いま採用を止めると将来の中堅層が枯渇します。新規事業を立ち上げる予定があるなら、その推進役は今のうちに育てておく必要があります。逆に、現状維持または縮小が前提なら、無理に採用する必要はないかもしれません。
採用は単年度の判断ではなく、「未来の組織図」から逆算する経営判断です。経営計画と切り離して採用人数だけを議論するのは、本末転倒だと言えます。
軸③:育成にかけられる時間とコストを直視する
3つめの軸は、「採った人材を、自社が本当に育てきれるか」を直視することです。
採用は入口に過ぎません。育成の仕組みがないまま新卒を迎えても、本人が育たず、3年以内に辞めていきます。OJTを担う中堅社員の余力、研修にかけられる予算、育成計画の有無——これらを正直に棚卸しすると、「採るより育成体制を整えるのが先」というケースもあります。
逆に、育成体制が整っているなら、AI時代だからこそ少数精鋭で採用し、しっかり育てる戦略が活きます。「採るか採らないか」の前に、「自社は育てられるか」を問うことが大切です。
まとめ:二択ではなく「3軸」で判断する
「採用を減らす・続ける」の二択で考えるのではなく、①AIで代替できる業務範囲、②事業成長見通し、③育成体制の3軸で総合的に判断する。これがAI時代の採用戦略の基本です。
周りに流されて減らせば、3年後に中堅候補が枯れます。何も考えずに採れば、AI時代の組織設計から取り残されます。どちらに転んでも代償は大きいため、自社の状況に即した冷静な判断が必要です。
「自社にとっての正解はどこにあるのか」「AI時代に合わせた採用戦略をどう設計すればよいか」——こうした問いに不安を感じたら、ぜひ当社にご相談ください。御社の事業計画と人材状況を踏まえ、最適な採用・育成プランを一緒に設計します。
筆者プロフィール
泉 正道(いずみまさみち)|特定社会保険労務士/採用定着士/生成AIアドバイザー
姫路を拠点に中小企業延べ150社以上へ伴走。採用・定着・労務の相談累計3,000件超(2026年6月現在)。北は福島、南は佐賀まで顧問先があり、全国オンライン対応。
「採用より定着が先」——これが口癖であり、信念。耳が痛くても言い続ける。親に与えてもらった環境や収入を「全て自分の力」と誤解する2代目社長に説教して解約された経験あり。それでも伝え続けるのが私の役目。
支援の軸は制度(ハード)と対話(ソフト)の両輪。就業規則や評価制度を整えるだけでも、研修や面談を繰り返すだけでも、人の問題は解決しない。両方が噛み合って初めて、人が辞めない組織が動き出す。伴走とダメ出しができる社労士。
生成AI支援では「研修を受けた企業の9割が1ヶ月後に何もしていない」という現実に向き合い、経営者のPCを直接触り、当日に課題を解決する「実装型」の伴走を展開。商工会・商工会議所・大手生命保険会社でのセミナー講師としても精力的に活動中。

