ここ数年で、副業・兼業を取り巻く環境は大きく変わりました。
以前は「原則禁止」が当たり前だった会社でも、
今では実質的に副業を認めている、あるいは黙認しているケースが増えています。
その一方で多いのが、
就業規則や兼業・副業規程を昔のまま放置していることによるトラブルです。
現場の実態とルールがズレたまま時間が経つと、
いずれ必ず問題として表面化します。
目次
1. 「うちは黙認している」が一番危ない
人数が少ない会社ほど、
「副業しているのは知っているけど、特に問題は起きていない」
という状態になりがちです。
しかし、規程上は
「許可なく兼業・副業を禁止する」
と書かれたまま、というケースは少なくありません。
この状態で何か起きると、
- 注意や指導ができない
- 処分の根拠が曖昧になる
- 会社の対応がブレる
結果として、
トラブルがこじれやすくなります。
2. 兼業・副業トラブルが起きやすい典型パターン
規程を放置したまま起きがちなトラブルには、共通点があります。
- 副業先での疲労が本業に影響する
- 競合に近い仕事をしていた
- 本業の情報を不用意に使っていた
- 労働時間の管理が曖昧になる
このとき、
「副業自体はOKなのか」
「どこまでがNGなのか」
が整理されていないと、会社としての判断ができません。
3. 副業=リスク、ではない
副業という言葉に、
「トラブルの種」
というイメージを持っている経営者も多いかもしれません。
しかし、視点を変えると、副業には明確なメリットもあります。
- 他社で得た知識やスキルが本業に活きる
- 視野が広がり、仕事の質が上がる
- 外の評価を知ることで主体性が高まる
特に、賃上げが簡単ではない状況の中で、
従業員の年収を上げる手段として副業を認めることは、現実的な選択肢でもあります。
収入面の不安が減ることで、
転職リスクを下げられるという効果も見逃せません。
4. 問題は「禁止か容認か」ではなく「ルールがあるか」
副業を完全に禁止するか、自由に認めるか。
この二択で考えると、判断を誤りやすくなります。
重要なのは、
「何を守ってほしいのかを明確にすること」
です。
例えば、
- 競業・利益相反はNG
- 本業に支障が出る場合は見直す
- 事前申告を必須にする
- 情報管理のルールを決める
こうしたポイントを整理するだけで、
副業は「管理できないリスク」から「コントロールできる制度」に変わります。
5. 小規模企業ほど「アップデート」が重要な理由
人数が少ない会社では、
一人の行動が組織全体に与える影響が大きくなります。
だからこそ、
曖昧な運用や場当たり対応は、後々大きな問題につながります。
規程をアップデートすることで、
- 社員も安心して副業に取り組める
- 会社としてのスタンスが明確になる
- トラブル時の判断基準ができる
というメリットがあります。
6. 規程見直しの際に押さえるべきポイント
① 現場の実態を前提にする
すでに副業している人がいるなら、そこを無視しない。
② 副業のメリットも正面から認める
会社にとってもプラスになる点を明確にする。
③ 禁止事項は絞る
全部ダメ、ではなく「ここだけは守ってほしい」を整理する。
まとめ:副業規程は「止めるため」ではなく「活かすため」にある
兼業・副業を巡るトラブルの多くは、
副業そのものではなく、
ルールのアップデートを怠ったことが原因です。
他社での学びが自社に還元され、
従業員の収入も安定する。
これは、
人材確保が難しい環境において、
小規模企業が取り得る現実的な選択肢でもあります。
副業を「禁止するかどうか」で止まらず、
どう付き合うかを制度として整理する。
それが、トラブルを防ぎながら組織を強くする、一番の近道です。
筆者プロフィール
泉 正道(いずみまさみち)|特定社会保険労務士/採用定着士/生成AIアドバイザー
姫路を拠点に中小企業延べ150社以上へ伴走。採用・定着・労務の相談累計3,000件超(2026年6月現在)。北は福島、南は佐賀まで顧問先があり、全国オンライン対応。
「採用より定着が先」——これが口癖であり、信念。耳が痛くても言い続ける。親に与えてもらった環境や収入を「全て自分の力」と誤解する2代目社長に説教して解約された経験あり。それでも伝え続けるのが私の役目。
支援の軸は制度(ハード)と対話(ソフト)の両輪。就業規則や評価制度を整えるだけでも、研修や面談を繰り返すだけでも、人の問題は解決しない。両方が噛み合って初めて、人が辞めない組織が動き出す。伴走とダメ出しができる社労士。
生成AI支援では「研修を受けた企業の9割が1ヶ月後に何もしていない」という現実に向き合い、経営者のPCを直接触り、当日に課題を解決する「実装型」の伴走を展開。商工会・商工会議所・大手生命保険会社でのセミナー講師としても精力的に活動中。

