「働きやすい職場にしたつもりなのに、なぜか辞めていく」
そんな経験はありませんか?
残業を減らした。有給を取りやすくした。怒鳴らないようにした。でも辞める。
実は、「優しすぎる職場」が離職の原因になるケースが増えています。これをホワイトハラスメント(ホワハラ)と呼びます。
マイナビの調査によると、中途入社1年以内の社員の13.6%がホワハラを経験しており、そのうち71.4%が転職を希望しているというデータがあります。善意が裏目に出ている現実です。
目次
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ホワイトハラスメントとは何か
ホワイトハラスメントとは、上司や先輩が部下・後輩に対して、過剰な配慮・先回りのサポート・業務量の過度な調整を行い、結果として相手の成長機会を奪う行為です。
悪意はありません。むしろ親切心から来ています。だからこそ気づきにくく、対処が難しい。
具体的には、こんな場面で起きます。
- 失敗しそうだからと、難しい仕事を最初から外す
- 「まだ慣れていないから」と、単純な作業ばかり任せ続ける
- ミスを指摘せず、こっそり自分で直してしまう
- 残業させないよう、仕事量を意図的に少なくする
- 「気を遣って」フィードバックを一切しない
どれも「その人のため」と思ってやっていること。しかし受け取る側は、「期待されていない」「成長できない」と感じます。
なぜ「優しさ」が離職につながるのか
人が仕事に感じる充実感の多くは、「できなかったことができるようになる」という成長体験から来ています。
失敗する機会を奪われると、成長を実感できなくなります。フィードバックがなければ、自分がどこにいるのかわからなくなります。
その結果、社員の頭の中に浮かぶのはこんな言葉です。
- 「ここにいても成長できない」
- 「自分はこの会社に必要とされていないのでは」
- 「もっと自分を活かせる場所があるはずだ」
特に中途採用で入社した社員は「前の職場ではもっと任せてもらえた」という比較が生まれやすく、早期離職につながります。
「働きやすさ」と「働きがい」は別物
ホワハラが起きやすい職場は、「働きやすさ」を追求するあまり「働きがい」を犠牲にしています。
残業なし、有給取得率100%、怒られない——確かに「楽」です。でも「楽」と「楽しい」は違います。人は適度な負荷と達成感がなければ、仕事に意味を見出せなくなります。
ホワハラが生まれやすい職場の特徴
① ハラスメント対策が「萎縮」になっている
パワハラ防止法の施行以降、「とにかく怒ってはいけない」「指摘は最小限に」という空気が職場に蔓延していることがあります。本来のハラスメント対策は、正当な指導を守るためのものなのに、過剰な萎縮で逆効果になっています。
② 「育成」の概念がない
「背中を見て学べ」の文化から「とにかく親切に」の文化に振れすぎた職場では、意図的な育成設計がされていないことが多いです。何をどの順番で任せるかというロードマップがなければ、配慮は放置になります。
③ 本人への確認がない
「この人は負担が多そうだから」と一方的に判断して仕事を減らす。でも本人は「もっとやりたい」と思っているかもしれません。本人のニーズを確認せずに行う「配慮」は、ただの思い込みです。
パワハラ・放置・ホワハラ ― 3つのバランスをどう取るか
正しい育成とは、この3つの中間にあります。
- パワハラ:過度な叱責・人格否定・威圧 → 萎縮・離職
- 放置:フィードバックなし・任せっぱなし → 孤立・不安
- ホワハラ:過剰な配慮・先回り → 成長機会の喪失
バランスの取れた育成とは、「適度な負荷をかけながら、そばでサポートする」ことです。
具体的には、
- 最初は難易度低め→徐々に上げる段階的な任せ方をする
- 失敗しても責めず、一緒に原因を考える姿勢を持つ
- 定期的に「どんな仕事がしたいか」「今の負荷はどうか」を本人に確認する
- 良い点も改善点も、具体的にフィードバックする
「厳しくしてはいけない」ではなく、「人格を否定しない範囲で、成長のための厳しさを持つ」。これが現代の育成の基本軸です。
よくある質問
Q. ホワハラとパワハラ、どう使い分ければいいですか?
A. シンプルに言えば、「相手の成長を目的とした指導」はホワハラでもパワハラでもありません。問題になるのは、「相手の人格を否定する」「必要以上の恐怖を与える」(パワハラ)か、「成長機会を奪う」「相手のニーズを無視した配慮」(ホワハラ)です。判断が難しい場合は、「この対応は相手の成長のためか?」を軸に考えると整理しやすくなります。
Q. 褒めすぎてもハラスメントになりますか?
A. 褒めること自体はハラスメントにはなりません。ただし、「根拠のない称賛を繰り返す」「改善点を一切伝えない」という状態が続くと、社員は現実のフィードバックを受けられず、成長が止まります。褒めることと、改善点を伝えることはセットで行うのが育成の基本です。
まとめ
「いい職場にしたいと思ってやってきたことが、実は離職を生んでいた」——これがホワイトハラスメントの怖さです。
悪意がないだけに、気づくのが遅くなります。そして気づいた時には、戦力になりかけていた社員が辞めた後、ということになりかねません。
大切なのは、「社員のために何をするか」より、「社員が何を必要としているか」を確認することです。
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筆者プロフィール
泉 正道(Masamichi Izumi)
従業員100名以下の中小企業の伴走支援コンサルタント。C&Pいずみ社会保険労務士法人 代表。
採用定着士、特定社会保険労務士、生成AIアドバイザー。2026年5月現在、延べ100社以上の中小企業を支援。採用・定着・労務に関する相談は累計3,000件超(日々更新中)。
徹底的な伴走支援で、中小企業の採用定着を「仕組み化(内製化)」する事を得意とする。
商工会、商工会議所、大手生命保険会社でのセミナー講師など、精力的に「事例」中心の情報発信をし続けている。

