専門家に任せきりが一番危ない、姫路の社労士が見た補助金トラブル(過去のトラブルと進行中トラブル)

専門家に任せきりが一番危ない、姫路の社労士が見た補助金トラブル(過去のトラブルと進行中トラブル)

先日、顧問先の社長からこんな相談を受けました。「ものづくり補助金」の申請を任せていた中小企業診断士から、ある日突然「もう降ります」と言われたというのです。理由を聞くと、「あなたが非協力的だから」。

しかし話を聞く限り、社長に心当たりはありません。工事はすでに始まっており、銀行からの融資も実行済み。今さら後戻りはできない状況の中で、社長は途方に暮れていました。

実はこの手の話、私自身も他人事ではありません。補助金申請の途中で専門家が「逃げた」案件を、過去に2件対応したことがあります。信頼できる人からの紹介であっても、専門家に「任せきり」にすることには、想像以上のリスクが潜んでいます。今回は、進行中のトラブルと、私自身が過去に対応した経験の両方から、専門家との付き合い方について考えてみたいと思います。


目次

  1. 「非協力的だから降ります」――ある社長が経験した混乱
  2. なぜ専門家は途中で「逃げる」のか
  3. 信頼できる紹介でも、契約内容は自分の目で確認する
  4. 「個人事業だから危ない」わけではない
  5. 専門家に依存しすぎない体制のつくり方
  6. よくある質問

「非協力的だから降ります」――ある社長が経験した混乱

この社長が困っていたのは、補助金申請にあたって、工事の様子を専用アプリで写真記録しなければならないというルールでした。診断士からは「いつも通してるやり方があるので、その通り撮ってください」とだけ伝えられていたそうです。フォーマットの有無を事前に確認しても、「特にありません」という回答しか返ってきませんでした。

ところが実際に撮影を進める段階になって、指定アプリでの撮影に漏れがあることが発覚します。工事業者からは「言われた通りにやっただけなのに、なぜ今さら」と困惑され、板挟みになった社長が診断士に事情を確認しようとすると、「電話には出ないでください、いい方法を考えます」とだけ告げられ、連絡が取れなくなりました。

さらに、写真の取り漏れの件は「公文書偽造にあたる可能性がある」とまで言われ、社長自身が直接、行政側や関係者に確認を取らざるを得ない状況に追い込まれました。「専門家に任せているはずなのに、なぜ自分が矢面に立たされるのか」――社長はそう感じたそうです。

最終的に診断士は、「契約は補助金の金額決定までだった」という立場を取り、そのまま契約を終了しました。工事業者との間にも軋轢が生まれたまま、社長は紹介元の会計事務所を通じて、新しい専門家への引き継ぎを一から進めることになったのです。工事はすでに動いており、途中で立ち止まることもできません。「とりあえず続けるだけ続けて、ダメだった場合はその時に考える」という、綱渡りのような状況が今も続いています。


なぜ専門家は途中で「逃げる」のか

私自身、社労士として補助金申請に関わる中で、専門家が途中で手を引く案件を2件、対応したことがあります。どちらのケースにも共通していたのは、「どこまでが専門家の仕事で、どこからが依頼者の仕事か」という線引きが、最初から曖昧だったことです。

補助金の審査や実績報告は、想像以上に手間のかかる作業です。書類の細かい不備一つで差し戻され、期限に追われながら何度もやり取りをする、という場面も珍しくありません。専門家の側にも「ここまでは手伝うが、細かい実務は依頼者側でやってほしい」という本音があります。それが契約の段階ではっきり共有されていないと、途中で認識のズレが表面化し、「これ以上は責任を負えない」という判断につながってしまうのです。

大きな金額が動く分野だからこそ、途中で連絡が取れなくなったり、案件から降りたりする専門家は、決して珍しくありません。私が過去に対応した2件も、依頼者側からすれば「まさか途中で投げ出されるとは思わなかった」というものでした。「専門家に頼んでいるから安心」という考え方こそが、実は一番のリスクなのです。


信頼できる紹介でも、契約内容は自分の目で確認する

先の社長のケースでも、私自身が過去に対応した2件のケースでも、専門家は「信頼できる人からの紹介」でした。だからこそ、契約内容を細部まで確認しないまま進めてしまう、という共通点があります。「紹介してくれた人が信用できるから、この専門家も大丈夫だろう」という気持ちは、経営者であれば誰しも持つものだと思います。

しかし、紹介者の信用と、契約内容そのものの妥当性は、まったく別の話です。契約書に「どこまで対応するか」「途中で終了する場合の条件はどうなっているか」がどう書かれているかは、紹介の有無にかかわらず、経営者自身が目を通しておくべきです。ここを曖昧にしたまま契約を進めると、いざという時に「言った・言わない」の水掛け論になりかねません。

専門家との間で権利義務の内容を確認しておくことは、決して「信頼していない」という意味ではありません。むしろ、お互いの認識を揃えておくことこそが、信頼関係を長く保つための土台になります。契約書を読み込む時間がなければ、少なくとも「どこまでやってもらえるのか」を、口頭でも明確に確認しておくだけで、リスクはかなり減らせます。


「個人事業だから危ない」わけではない

こうした話をすると、「個人で活動している専門家だから危ないのでは」と思われるかもしれません。実際、今回のケースも私が対応した2件も、比較的小規模な事務所の専門家が関わっていました。しかし、実際はそうとも言い切れません。

かつて、大型の補助金を数多く手がけ、その分野で一時は「1番稼いだ」とまで言われた北浜グローバル社という会社が、倒産に至った例があります。組織の規模が大きいからといって、途中で対応が立ち行かなくなるリスクがないわけではありません。むしろ、規模が大きく案件数が多いほど、一件一件への対応が手薄になるリスクもあります。

個人事業か、大きな組織かという基準だけで安心・危険を判断するのは危険です。大切なのは、専門家の看板の大きさではなく、契約内容と責任の範囲がどれだけ明確になっているか、そして途中で何かあった時にどう連絡が取れる体制になっているかです。


専門家に依存しすぎない体制のつくり方

専門家に任せること自体は、決して悪いことではありません。すべてを自社でこなそうとすれば、それはそれで別のリスクを生みますし、専門家の知見があるからこそ進められる手続きも数多くあります。大切なのは、任せながらも、経営者自身が最低限の理解を手放さないことです。

これは、制度や仕組み(ハード)だけの話でも、対話や関係性(ソフト)だけの話でもありません。契約書という「仕組み」を整えることと、専門家と定期的に進捗を確認し合う「対話」を続けること、この両輪があって初めて、専門家依存のリスクを減らすことができます。どちらか一方だけでは、いざという時に足元をすくわれてしまいます。

先の社長も、今回の経験を通じて「専門家の選定や契約内容の確認は、自分自身の役目でもある」と痛感したと話していました。任せることと、丸投げすることは、似ているようでまったく違います。専門家の力を借りながらも、最後の判断と責任は経営者自身にある、という意識を持っておくことが、結局は会社を守ることにつながります。


よくある質問

Q. 専門家との契約を結ぶ際、最低限どこを確認すればいいですか?

A. どこまでの業務を対応してもらえるのか、途中で契約を終了する場合の条件はどうなっているのか、この2点は必ず確認してください。「補助金が決定するまで」なのか「実績報告や入金確認まで」なのかで、専門家の責任範囲は大きく変わります。曖昧な言葉で説明された場合は、その場で書面に落としてもらうよう依頼するのも一つの方法です。

Q. もし専門家が途中で対応を終了してしまったら、どうすればいいですか?

A. まずは行政側の窓口や紹介元に相談し、引き継ぎ可能な専門家を探すことを優先してください。そのうえで、契約書の内容を確認し、途中終了による損害が発生していないかを整理しておくことをおすすめします。感情的に対立するより、次の一手を落ち着いて進めることが、結果的に会社を守ることにつながります。


まとめ:専門家は「頼る相手」であって「丸投げする相手」ではない

補助金申請は、専門家の力を借りることが多い分野です。しかし今回ご紹介した事例のように、「専門家に任せているから大丈夫」という油断こそが、一番のリスクになることがあります。

信頼できる紹介であっても、組織の規模が大きくても、途中でつまずく可能性はゼロにはなりません。契約内容を自分の目で確認する仕組みと、専門家と対話を続ける姿勢、その両輪を持っておくことが、経営者自身と会社を守ることにつながります。

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