熊本地震で気づいた”データ管理”の甘さ——姫路の特定社会保険労務士が語る、自社サーバの盲点とクラウド移行

熊本地震で気づいた”データ管理”の甘さ——姫路の特定社会保険労務士が語る、自社サーバの盲点とクラウド移行

2026年7月28日、熊本県で最大震度7を観測する地震が発生しました。突然のニュース速報に、驚き、そして胸を痛めた経営者の方も多いのではないでしょうか。私自身、テレビの映像を見て、しばらく言葉が出ませんでした。

熊本は、2016年にも震度7の揺れを2度観測する大地震を経験しています。あの記憶がまだ癒えないうちに、再び大きな揺れに見舞われた熊本の皆さまのことを思うと、本当に胸が締め付けられます。まずは、被害に遭われた方々の安全と、一日も早い復旧を心からお祈りいたします。

今回の地震では、建物の倒壊や道路の崩壊に加えて、通信障害や大規模な停電も発生しました。「まさか自分の会社が」と思っていたことが、いつ現実になってもおかしくない。そのことを、改めて突きつけられた出来事だったと思います。

今日は、この地震をきっかけに、姫路の中小企業経営者の皆さまと一緒に「企業のデータ管理」について考えていきたいと思います。


目次

  1. データ管理を見直して気づいたこと——「人」と「データ」は両輪
  2. 自社サーバ管理、実はここが危ない
  3. 自社サーバ型 vs クラウド型、メリット・デメリットを比較する
  4. GoogleやMicrosoftのセキュリティ投資力という「圧倒的な差」
  5. 「じゃあ紙に戻ればいい」という発想は、絶対にやめてほしい
  6. よくある質問

データ管理を見直して気づいたこと——「人」と「データ」は両輪

災害への備えというと、多くの経営者の方が真っ先に思い浮かべるのは「従業員の避難経路」や「安否確認の方法」ではないでしょうか。もちろん、それはとても大事です。人の命を守ることが、事業継続の大前提ですから。

ただ、実際にお客様と一緒に見直しを進めてみると、もう一つ避けて通れないテーマが出てきます。それが「データをどう守るか」という問題です。

考えてみてください。従業員全員が無事だったとしても、顧客リスト、受発注データ、会計データ、これまでの取引履歴——こうした情報が全部消えてしまったら、事業は再開できるでしょうか。人が無事でも、データがなければ仕事は始まらないんです。

お客様とやり取りしていたとき、「うちのデータって、全部あの部屋のサーバに入ってますね」という一言がありました。その瞬間、お互いにハッとしたのを覚えています。「もしあのサーバが壊れたら、うちは何もできなくなる」と。

ちなみにこの見直しは「BCP(事業継続計画)」と呼ばれる書類作りの一環でした。もっとも、名前はどうでもよくて、大事なのは中身です。補助金の加点対策として始まった話でしたが、書き終わる頃には、加点うんぬんよりも「これはうちの会社を守るための本気の対策だ」という空気に変わっていました。書類の中身より、その気づきこそが一番の成果だったと、今でも思います。


自社サーバ管理、実はここが危ない

姫路は、台風もほとんど来なければ、大きな地震も少ない土地です。「うちは災害とは無縁だから」と思っている経営者の方も、正直少なくないと思います。

ですが、南海トラフ巨大地震をはじめ、大きな地震はいずれ必ず来ると考えておいたほうがいい。実際、1995年の阪神・淡路大震災のときも、姫路は震度3〜4を記録しています。「うちの地域は災害が少ない」というのは、「来ない」ではなく「まだ来ていない」だけなんです。

この記事を読んでくださっている方が、姫路の方とは限りません。ですが、どの地域であっても同じです。大きな災害は、いずれ必ず自分の地域にも来る。そういう前提で、備えを進めておいてほしいと思います。

昔ながらの会社では、いまだに自社オフィス内にサーバを置いて、そこでデータを一元管理しているケースが少なくありません。「うちは昔からこのやり方だから」という安心感もあるでしょう。

ですが、あなたの会社のサーバは、地震にも、水害にも、火災にも、そして経年劣化にも耐えられる場所に置かれているでしょうか。

今回の熊本地震では、建物の倒壊だけでなく、通信障害や大規模な停電も発生しました。サーバ本体が無事だったとしても、電気が来なければ動きません。ネットワークが切れれば、外部からもアクセスできません。つまり「ハード(物理的な機器)」に依存している限り、そのハードが止まった瞬間、業務も止まるという構造そのものが、大きなリスクなのです。

さらに言えば、自社サーバの管理には、日々のバックアップ、セキュリティパッチの適用、故障時の対応など、専任の担当者がいなければ手が回らない作業が山ほどあります。多くの中小企業では、そこまで手が回らず、「とりあえず動いているから大丈夫」という状態になっているのが実情ではないでしょうか。


自社サーバ型 vs クラウド型、メリット・デメリットを比較する

「じゃあクラウドにすれば万事解決なのか」というと、それも少し単純化しすぎです。まずは、それぞれの特徴を整理してみましょう。

自社サーバ型のメリット・デメリット

メリットは、社内にすべてのデータを保持できる安心感と、月額の利用料が発生しない点、そして自社の運用ルールに合わせて自由にカスタマイズできる点です。

一方でデメリットは、災害・火災・停電・通信障害など、物理的なトラブルに極めて弱いこと。そして、初期投資(サーバ機器・設置費用)に加えて、保守・更新のたびに費用と手間がかかること。何より、専門知識を持った担当者がいなければ、セキュリティ対策が後手に回りやすいことです。

クラウド型のメリット・デメリット

メリットは、データが自社の建物から離れた堅牢なデータセンターに分散して保管されるため、自社が被災してもデータそのものは守られやすいこと。自動バックアップやセキュリティアップデートが標準で行われること。そして、インターネットさえつながれば、どこからでもアクセスできる柔軟性です。

具体的に考えてみましょう。被災するのは、サーバだけではありません。オフィスが浸水すれば、社員一人ひとりのパソコンも水没しますし、倒壊すればパソコンごと壊れます。サーバ型の場合、そのパソコンとサーバがセットで使えなくなれば、そこで業務は完全にストップします。

一方、クラウド型であれば話は別です。手元のパソコンが壊れても、データそのものはクラウド上に無事に残っています。別の場所にある別のパソコンやスマートフォンからログインし直せば、それだけで仕事を再開できるんです。この「代わりが利く」という点こそ、クラウド型の一番の強みだと思います。

デメリットとしては、月額利用料が発生し続けること、インターネット環境そのものが使えない状況では一時的にアクセスできなくなること、そして社内にデータを置いておきたいという心理的な抵抗感を持つ方もいる、という点が挙げられます。

こうして比べてみると、コストや慣れの面では自社サーバ型にも一理あります。ですが、「事業を止めないこと」を最優先に考えるなら、クラウド型に分があるのは間違いありません。今回のような大規模災害は、いつ姫路で起きてもおかしくないのですから。


GoogleやMicrosoftのセキュリティ投資力という「圧倒的な差」

クラウド移行を勧めると、「セキュリティは大丈夫なのか」と心配される経営者の方は少なくありません。ただ、これは発想を逆転させたほうがいいと私は思います。

Google Drive や OneDrive を運営しているのは、Google(Alphabet)とMicrosoftという、世界でも指折りのIT企業です。両社は、世界中のサイバー攻撃を24時間365日監視する専門チームを抱え、暗号化技術やAIによる不正アクセス検知など、莫大な規模の投資をセキュリティに注ぎ込んでいます。

正直なところ、一社一社の中小企業が、自前でそこまでのセキュリティ体制を築くのは現実的ではありません。「自社で頑張って守る」より「世界トップクラスの専門家に守ってもらう」ほうが、よほど安全だという発想の転換が必要な時代になっています。

もちろん、クラウドを使うからといって何もしなくていいわけではありません。パスワード管理や二段階認証、アクセス権限の設定といった「自社側でやるべき最低限の対策」は必要です。ですが、その負担は、自社サーバをゼロから守るのに比べれば、はるかに軽いものです。


「じゃあ紙に戻ればいい」という発想は、絶対にやめてほしい

ここまで読んで、「じゃあITに頼るのをやめて、紙に戻せばいいんじゃないか」と思われた方もいるかもしれません。はっきり言います。それは絶対にやめてください。

紙にしたところで、洪水が来れば流されますし、火災が起きれば燃えます。物理的なリスクから逃れられるわけではないんです。むしろ紛失や劣化、探すのに時間がかかるという、紙ならではの弱点もついて回ります。

アナログの大切さを否定するつもりはありません。人と人との対話や、手書きの温かみが必要な場面は、確かにあります。ですが、それと「データ管理を紙に戻す」ことは、まったく別の話です。時代に逆行するだけで、リスクを別の形に置き換えているに過ぎません。

私は仕事柄、いまだに紙やFAXでのやり取りを続けている企業をたくさん見てきました。正直に言って、効率で言えば3倍から5倍は悪いというのが、現場を見てきた私の実感です。

では、なぜ続けているのか。理由は一つしかありません。「新しいことを始めるのが怖い」「面倒くさい」。それだけです。それ以外の理由は、正直見当たりません。

今回のような有事のときこそ、その「先延ばし」のツケが一気に回ってきます。だからこそ、紙に戻るという選択肢は、絶対に持たないでください。


よくある質問

Q. クラウド移行には、どれくらいの期間がかかりますか?

A. 会社の規模やデータ量によって異なりますが、早ければ数時間、遅くとも数日で完了できます。実際、当社もそれくらいの期間でした。データ量が多く数週間かかりそうな場合は、既存データの棚卸しと優先順位付けをして、まずは「一番失うと困るデータ」から着手するのが現実的です。全部を一気に移そうとすると、かえって手が止まってしまいます。

Q. Google DriveとOneDrive、結局どちらを選べばいいですか?

A. まずは両方とも無料で試してみて、使いやすいと感じたほうを選ぶくらいの気軽さでいいと思います。目安としては、すでに使っているツールに合わせるのが一番シンプルです。Word・Excelなど Microsoft 365を使っているなら OneDrive、Gmailやスプレッドシートなど Googleのツールを使っているなら Google Drive。どちらも世界トップクラスのセキュリティ基盤という点では大きな差はありません。大事なのは「どちらが優れているか」より「今すぐ始めること」です。


まとめ

今回の熊本地震で、改めて痛感させられました。事業を続けるということは、「人」を守ることと「データ」を守ることの両輪だということを。

自社サーバがこれまで会社を支えてきたことは事実です。ただ、その安心感は、「壊れないこと」を前提にした安心感でしかありません。今、姫路で同じ規模の地震が起きたら、あなたの会社のデータは無事でしょうか。

まずは自社のデータが今どこにあるのか、何かあったときにどうなるのかを、一度棚卸ししてみることから始めてみませんか。

「これって違法?」「トラブルになる前に相談したい」——そのタイミングが一番大事です。
姫路の中小企業の現場を知る社労士が、一緒に整理します。