姫路の社労士が解説|2026年10月は「法改正ラッシュ月」——106万円の壁撤廃・同一労働同一賃金・カスハラ義務化が同時スタート

姫路の社労士が解説|2026年10月は「法改正ラッシュ月」——106万円の壁撤廃・同一労働同一賃金・カスハラ義務化が同時スタート

このブログでは、これまで「106万円の壁撤廃」「同一労働同一賃金の改正」「カスハラ対策義務化」を、それぞれ個別のテーマとして取り上げてきました。実は、この3つには共通点があります。すべて、2026年10月1日に同時施行されるという点です。

姫路の中小企業経営者から、「結局、10月から何がどう変わるのか、全体像が分からない」という声をよく聞きます。個別の記事を読んでいても、それぞれがバラバラの話に感じてしまうのは無理もありません。

今日は、あえて3つをまとめて整理します。全体像をつかんだうえで、自社にとって優先すべきものから手をつけていきましょう。読み終える頃には、「うちがまず動くべきはどれか」がはっきりしているはずです。


目次

  1. なぜ10月1日に改正が集中するのか
  2. ①106万円の壁撤廃——社会保険加入の基準が変わる
  3. ②同一労働同一賃金ガイドライン改正——待遇差の説明責任
  4. ③カスハラ対策義務化——全事業主が対象
  5. 優先順位のつけ方——何から着手するか
  6. よくある質問

なぜ10月1日に改正が集中するのか

労働・社会保険関係の法改正は、年度の節目にあわせて施行されることが多く、10月1日や翌年4月1日に集中する傾向があります。今年は特に、社会保険、雇用、ハラスメント対策という異なる分野の改正が、同じ10月1日に重なりました。

経営者にとっては、「またこの時期に色々重なって大変だ」と感じるかもしれません。しかし裏を返せば、この時期に一度まとめて対応してしまえば、しばらくは大きな制度変更に振り回されずに済むということでもあります。まずは全体像を把握することから始めましょう。

私が姫路の経営者にお伝えしているのは、法改正のたびに一つひとつをバラバラに対応しようとすると、かえって疲弊してしまうということです。今回のように複数の改正が重なるタイミングは、就業規則や賃金規程をまとめて見直す、ちょうど良い機会だと捉えることもできます。


①106万円の壁撤廃——社会保険加入の基準が変わる

これまで、パート・アルバイトが社会保険に加入する基準の一つに、「月額賃金8.8万円以上(年収換算で約106万円以上)」という要件がありました。これが2026年10月に撤廃されます。

10月以降は、特定適用事業所(従業員51人以上の企業)で働く短時間労働者について、週の所定労働時間が20時間以上であることが、社会保険加入の主な基準になります。賃金額の要件がなくなることで、これまで加入対象ではなかった短時間労働者が、新たに加入対象になるケースが出てきます。

この改正については、以前のブログでも詳しく取り上げました。給与計算や社会保険料の負担に直結する話なので、まだ確認していない方は、自社の対象者を早めに洗い出しておくことをおすすめします。

特に影響が大きいのは、これまで「扶養の範囲内で働きたい」という理由で、あえて年収を106万円未満に抑えて働いていたパート社員です。基準が変わることで、本人の働き方の希望と、会社側の人員配置の両方に影響が出る可能性があります。早めに本人と話し合っておくことが、混乱を防ぐポイントです。


②同一労働同一賃金ガイドライン改正——待遇差の説明責任

2026年4月28日に公布された改正省令・告示により、同一労働同一賃金のガイドラインが10月1日から改正されます。待遇差の説明を求める権利の明示、賞与・退職手当・各種手当・福利厚生のガイドライン記載見直し、雇用管理上の措置という3つのポイントで、「不合理な待遇差」の判断基準がより実務に即した内容にアップデートされます。

法律の枠組み自体が大きく変わるわけではありませんが、正社員とパート・有期社員の間の手当・賞与・福利厚生の差について、「なぜその差があるのか」を説明できる状態にしておくことが、これまで以上に求められます。詳しい見直しポイントは、このあとのブログで個別に取り上げていますので、あわせてご覧ください。

この改正の厄介なところは、「うちは違反していない」と自信を持って言い切れる会社が、実はそう多くないという点です。悪意を持って差をつけている会社はまれで、多くは「昔からの慣習」がそのまま残っているだけです。だからこそ、今のタイミングでの棚卸しに意味があります。


③カスハラ対策義務化——全事業主が対象

2025年6月に公布された改正労働施策総合推進法等により、カスタマーハラスメント対策が、2026年10月1日から事業主の措置義務になります。従業員を1人でも雇用していれば、企業規模を問わずすべての事業者が対象です。

厚生労働省は「令和8年厚生労働省告示第51号」として、事業主が講ずべき措置についての指針を告示しています。就業規則の整備、相談窓口の設置、対応マニュアルの整備など、施行日までに揃えておくべき要素は複数あります。このブログでも、これまで複数回にわたって具体的な対策方法を取り上げてきました。

宅配業界の実態調査(過去3年でカスハラを受けた人が43%)や、事業主が必ず講じる10項目の措置、業務委託スタッフが対象に含まれるかどうかまで詳しく整理した記事もあります。あわせてご覧ください。
*宅配カスハラ4割超と2026年10月義務化 姫路の中小企業が1か月で整えるべき4ステップ

3つの改正の中でも、カスハラ対策は「従業員を1人でも雇用していれば対象」という点で、最も対象範囲が広い改正です。姫路の小規模な個人事業主であっても、他人事ではありません。まだ何も手をつけていない場合は、優先度を上げて検討することをおすすめします。


優先順位のつけ方——何から着手するか

3つとも同時に施行されるとはいえ、すべてを同じ熱量で進めるのは現実的ではありません。優先順位をつけるなら、まず自社に「対象者がいるかどうか」を基準に考えてください。

  • 短時間労働者を多く雇用している会社は、①106万円の壁撤廃への対応を優先
  • 正社員とパート・有期社員の待遇差が大きい会社は、②同一労働同一賃金の見直しを優先
  • 顧客・取引先と接する機会が多い業種(小売・飲食・医療・介護など)は、③カスハラ対策を優先

姫路の中小企業の多くは、このうち複数に該当するはずです。どれか一つだけで終わらせず、自社にとって影響が大きいものから順番に、着実に進めていくことをおすすめします。優先順位に迷ったときは、「対応が遅れた場合に、誰が一番困るか」を基準に考えると、判断しやすくなります。

もう一つおすすめしたいのが、今回の3つの改正をきっかけに、就業規則・賃金規程を一度まとめて見直すことです。個別に少しずつ改定を重ねていくよりも、一度に整理した方が、規程全体の整合性を保ちやすくなります。改定履歴も一度にまとめられるため、後から見返したときにも分かりやすくなります。


よくある質問

Q. 3つの改正すべてに、一度に対応しなければなりませんか?

A. 施行日は同じ10月1日ですが、対応の緊急度は会社によって異なります。自社の従業員構成や業種を踏まえて、影響の大きいものから優先的に着手すれば十分です。すべてを同時に完璧にする必要はありません。

Q. どこに相談すればいいか分かりません。まず何をすればいいですか?

A. まずは、このブログで取り上げている各テーマの記事を読み、自社に関係する項目を洗い出してみてください。そのうえで、優先順位が高いテーマから、顧問社労士や専門家に相談すると、話がスムーズに進みます。顧問がいない場合も、お気軽にご相談ください。


まとめ

2026年10月1日は、106万円の壁撤廃、同一労働同一賃金ガイドライン改正、カスハラ対策義務化という3つの改正が同時にスタートする日です。それぞれ分野は異なりますが、根っこにあるのは「働く人を、雇用形態や立場にかかわらず公平に扱う」という共通した方向性です。

全体像をつかんだうえで、自社にとって優先度の高いものから、一つずつ着実に対応していきましょう。制度(ハード)を整えるだけでなく、対象となる従業員への説明や対話(ソフト)も忘れずに行うことで、混乱なく新しいルールに移行できます。10月1日を過ぎてしまっても、対応そのものは可能です。「間に合わなかったから諦める」のではなく、気づいた時点からすぐに動き始めることが大切です。

「何から手をつければいいか分からない」——そう感じたときこそ、ご相談ください。姫路の中小企業の現場を知る社労士が、一緒に整理します。