先日、トラック22台を持つ運送会社の総務課長さんから、こんな相談を受けました。「紹介会社が作ってくれた当社の求人ページが、大手の求人検索サイトに、いつの間にか載っているんです。今度、自社の採用サイトを作って、そこも載せる予定なので、同じような求人が2つ並んでしまいます。紹介会社のページの質を、下げてもらったほうがいいでしょうか」。
理由を聞くと、とても現実的でした。紹介会社を通してドライバーが入社すると、手数料がかかります。年収400万円の人なら、3割で120万円です。自社の採用サイトに載せるのは、未経験のドライバー向けの原稿。ところが、紹介会社のページも「未経験者歓迎」で、書いてある中身がほとんど同じでした。同じ会社の、同じ未経験者向けの求人が検索結果に2つ並んで、応募が紹介会社のほうに行ったら、その120万円がもったいない。だったら、紹介会社のページは少し控えめにしておいたほうがいいのではないか、という考えでした。
私の答えは「下げる必要はありません」でした。紹介会社のページの質を下げても、同じ会社の求人が2つ並ぶことは変わりません。会社の印象が悪くなって、応募する人が減るだけです。考えるべきなのは、ページの質をどうするかではなく、狙う人を分けることです。紹介会社のページは経験者向けに、自社の採用サイトは未経験者向けにします。
今日はそれについて、私の持論をお話しします。
目次
目次
- 相談の概要
- 紹介会社のページは求人検索サイトに載ることがある
- 求人が2つ並ぶと起こる問題
- 質を下げても解決しない理由
- 紹介会社は経験者、自社は未経験者に分ける
- 紹介会社のページを載せない方法は確実ではない
- 面接で応募の経路を必ず聞く
- 紹介会社との契約で確認する3点
- よくある質問
- まとめ
相談の概要
この会社は、従業員が46名。ドライバーの採用を、これまで運送業に強い紹介会社に任せてきました。この1年で紹介会社から入社したのは2名。ありがたい反面、手数料は1人あたり約120万円で、2人分で240万円になります。
紹介会社が作った求人ページは、写真も文章もよく出来ています。そのページが、総務課長さんが頼んだわけでもないのに、大手の求人検索サイトに載っていました。今回、手数料のかからない自社の採用サイトを作り、そこも大手の求人検索サイトに載せて、自社で採る人を増やそうと決めました。
すると、会社名と職種で検索したとき、同じ会社の未経験ドライバーの求人が、紹介会社のページと自社の採用サイトで2つ並ぶことになります。しかも、自社の採用サイトの下書きより、紹介会社のページのほうが、写真も文章も整っています。総務課長さんが心配していたのは、応募が紹介会社のページに流れてしまうことでした。
120万円は大きなお金ですから、気持ちはとてもよく分かります。ただ、「質を下げれば、応募は自社に来る」という考えには、手数料の減らし方として大きな落とし穴があります。順番に見ていきます。
紹介会社のページは求人検索サイトに載ることがある
大手の求人検索サイトは、インターネット上にある求人ページを自動で集めて、検索結果に載せることがあります。紹介会社が作った求人ページも、その対象になることがあります。会社の側が「載せてほしい」と頼んだわけではないので、載っていることに気づいていない会社も少なくありません。
この運送会社も、総務課長さんが自分で検索してみて、初めて気づきました。会社名と職種(たとえば「会社名 ドライバー」)で、求人検索サイトを調べてみてください。紹介会社のページが出てくるのか、出てきたらどんな文面で載っているのか。自社の採用サイトを作る前に、いま何が載っているのかを、まず自分の目で確かめることが出発点です。
ご自身の会社の求人は、いま求人検索サイトに、どんな形で載っているでしょうか。
求人が2つ並ぶと起こる問題
同じ会社の、同じ未経験者向けの求人が2つ並ぶと、求職者は「どちらから応募すればいいのか」と迷います。応募は2つのページに分かれます。そして、紹介会社のページから応募が来て入社が決まれば、手数料が発生します。総務課長さんの心配は、ここにありました。
ただ、手数料よりも先に気をつけたいのは、2つの求人の内容が食い違っていないかどうかです。この運送会社も、紹介会社のページと自社の採用サイトの下書きを並べてみたら、月給、休日、仕事内容の書き方が違っていました。
- 月給:紹介会社のページは「月給28万円〜」、自社の下書きは「月給26万円〜」
- 休日:紹介会社のページは「月8日休み」、自社の下書きは「年間休日105日」
- 仕事内容:紹介会社のページは「近距離配送」、自社の下書きは「近距離中心、月に数回の中距離あり」
書いた時期や、書いた人が違うだけなのかもしれません。ですが、求職者には、その事情は分かりません。同じ会社の同じ仕事なのに、給料も休みも違って見えます。条件が食い違っている会社は、「入ってから話が違うのではないか」と疑われます。求職者が応募をやめる原因は、ページの見栄えよりも、この疑いのほうにあります。食い違いは、自社の採用サイトを出す前に、条件をそろえて直しておきます。
質を下げても解決しない理由
では、条件をそろえたうえで、総務課長さんの考えどおり、紹介会社のページの写真や文章を、あえて控えめにしたらどうなるでしょうか。求職者は、一つの会社の求人だけを見て応募を決めるわけではありません。複数の会社を見比べて、気になった会社に応募します。紹介会社のページも自社の採用サイトも、求職者から見れば同じ会社の求人です。質の低いページを先に見た人は、会社そのものに悪い印象を持ち、自社の採用サイトを見ないまま、他の運送会社に移ります。
質を下げたページを見た人は、「この会社は力を入れていないのだな」と感じて、離れていきます。しかも、質を下げても、同じ会社の求人が2つ並んでいる状態は変わりません。自社の採用サイトに応募が来るかどうかは、まず自社の採用サイトの内容で決まります。紹介会社のページを悪くしても、自社の採用サイトが良く見えるわけではありません。
紹介会社は経験者、自社は未経験者に分ける
では、どうすればよいのでしょうか。私がおすすめするのは、紹介会社と自社の採用サイトで、採りたい人を分けることです。同じ未経験者向けの原稿が2つ並ぶから、取り合いになります。最初から、狙う人が違う原稿にしておけば、被りません。
- 紹介会社:大型免許を持っている経験者など、自社の採用サイトでは見つけにくい人
- 自社の採用サイト:未経験で運送業に入りたい人や、免許の取得支援を受けたい人
こうすると、手数料を払うのは、自社では採れない人に限られます。手数料は、自社では出会えない人に会うための代金だと考えてください。紹介会社を悪者にするのではなく、紹介会社にしかできないことだけを頼む。その分、自社の採用サイトは、未経験者に向けた原稿に集中できます。
この運送会社が過去に採用したドライバー12名を数えてみると、入社時に大型免許を持っていた経験者は3名で、残りの9名は運送業が未経験でした。採用の中心は未経験者ですから、未経験者を自社の採用サイトで採る形にすれば、紹介会社に頼む人数は少なくて済みます。紹介会社のページが「未経験者歓迎」のままなら、経験者向けの内容に書き直せないかを、紹介会社に相談してみてください。
紹介会社のページを載せない方法は確実ではない
別の方法として、紹介会社のページが求人検索サイトに載らないよう、紹介会社に書き方を変えてもらうことも考えられます。求人検索サイトの仕組みに合わない書き方にすれば、取り込まれにくくなる可能性があります。
ただ、私は、この方法を確実だとは言えません。載せるかどうかの仕組みは、求人検索サイトの側が決めていて、ルールが変わることもあるからです。この方法は「うまくいけばもうけもの」くらいに考えて、載ってしまう前提で、役割分担を先に決めておくのが安全です。
面接で応募の経路を必ず聞く
「応募した人が、最初にどこで当社を知ったのか」を、この会社はこれまで一度も確認していませんでした。紹介会社から連絡が来たら面接をして、決まれば手数料を払う。それだけでした。
ですが、応募者が会社を知った経路は、手数料に見合うかを考える手がかりになります。たとえば、自社の採用サイトを出したあとで、応募者が大手の求人検索サイトで自社の採用サイトを先に見ていて、そのあと紹介会社のページから応募していたとしたら、本当は自社で採れた人かもしれません。
そこで、面接を担当する人から応募者に、次の2点を聞いてもらうよう提案しました。
- 最初に当社を知ったのは、どのサイトですか
- 応募するとき、他にどの会社を見ていましたか
面接を担当する人が、メモを残すだけで構いません。紹介会社経由の応募は、入社まで進まなかった人も含めて、全部記録します。半年から1年ほど記録がたまると、自社で採れたかもしれない人がどれくらいいたのかが見えてきます。手数料を減らす話は、そこからで遅くありません。紹介会社経由の応募の中に、自社で採れた人がいたのかどうかは、いまは分かりません。見分ける材料が、手元にないからです。
紹介会社との契約で確認する3点
紹介会社を使い続けるにしても、契約書を一度読み直してください。見ておきたいのは、次の3点です。
1. 手数料の率と支払う条件
手数料は、理論年収の3割前後が相場だと言われています。何を理論年収に含めるのか、残業代や賞与まで計算に入れるのかは、契約書で確かめられます。入社してすぐ辞めたときに、手数料が返ってくるのかどうかも、あわせて見ておきます。
2. 紹介された人が直接応募してきたときの扱い
紹介会社から紹介された人が、あとから自社の採用サイトを見て、直接応募してくることがあります。この場合に手数料が発生するのかどうかは、お金に直結します。契約書にどう書かれているかを、必ず確認してください。
3. 求人検索サイトへの掲載を止められるか
紹介会社のページが、求人検索サイトに自動で載ってしまうことがあります。同じ会社の、同じ未経験者向けの求人が検索結果に2つ並ぶと、求職者が迷います。求人検索サイトに取り込まれない設定を、紹介会社に頼めるかどうかも、確かめておいてください。
よくある質問
Q. 紹介会社をやめて、自社の採用サイトだけにしてもよいですか?
A. 自社だけで採れる人数で足りているのなら、やめても構いません。ただ、経験者の中には、自社の採用サイトでは見つけにくい人も含まれます。経験者がどうしても必要な職種があるなら、紹介会社は残しておくほうが安全です。やめるかどうかは、半年から1年ほど経路の記録をとってから決めても、遅くありません。
Q. 紹介会社のページが載ったまま、自社の採用サイトを出してもよいですか?
A. 出してかまいませんが、先に、給料、休日、仕事内容が食い違っていないかを見直してください。そのうえで、紹介会社には経験者向け、自社には未経験者向けと、狙う人を分けておきます。2つ並ぶこと自体は避けられません。問題なのは、条件が食い違っていることと、どちらも同じ未経験者を狙っていることです。
まとめ
運送会社の総務課長さんには、紹介会社のページの質は下げないこと、2つの求人で月給や休日などの条件が食い違わないようにすること、紹介会社には経験者の採用を頼んで未経験者は自社の採用サイトで採ることをお伝えしました。あわせて、紹介会社のページが求人検索サイトに載らない書き方を試すことと、面接で応募の経路を聞いて記録すること、紹介会社との契約書の読み直しも提案しました。
120万円の手数料が気になる気持ちは、私もよく分かります。ですが、手数料を減らす近道は、どこかのページを悪くすることではなく、それぞれの場所で採る人をはっきり分けることです。紹介会社も自社の採用サイトも、会社の顔です。どちらも手を抜かず、役割を分けて使ってください。
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