国税局まで内定式で内定者をつなぎとめに動く売り手市場|姫路の採用定着士が伝える、内定者をつなぎとめるのは式ではなく、入社後に管理職がやる個別の関わり

国税局まで内定式で内定者をつなぎとめに動く売り手市場|姫路の採用定着士が伝える、内定者をつなぎとめるのは式ではなく、入社後に管理職がやる個別の関わり

2026年10月1日、東京国税局が、来年採用する国税専門官の内定式を初めて開きました。内定後に採用を辞退する学生が増えていることが背景にあります。福岡国税局も、内定を辞退して民間企業に就職する人が少なくないため、2025年から内定式を始めています。

国税局のような公的機関でさえ、内定者をつなぎとめるために動かなければならない売り手市場です。では、中小企業も内定式をやれば内定辞退は防げるのでしょうか。私は、内定式そのものより大事なことがあると考えています。

今日はそれについて、私の持論をお話しします。


目次

  1. ニュースの概要
  2. 今の若手は、意味のない内定式に迎合しない
  3. 内定式を開くなら、社長の長い話をやめて、双方向で短時間の交流にする
  4. 内定者一人ひとりに、期待と役割を個別に伝える
  5. 入社後の初日・3日目・1か月・3か月に、管理職がやること
  6. 管理職に「やれ」と言うだけではできない。コーチングを学ぶ時間を会社がつくる
  7. よくある質問
  8. まとめ

ニュースの概要

NHKによると、東京国税局が10月1日に初めて開いた内定式は、国税専門官としての仕事の魅力を内定者に伝えることが目的でした。

福岡国税局は、すでに2025年から内定式を行っています。RKB毎日放送によると、狙いは内定者をつなぎとめることです。この記事で紹介されているマイナビの調査では、学生の内定率は85.6%で、3社以上の内定を持っている学生の割合が15%を超えています。

3社以上の内定を持っている学生が15%を超えている。それが今の新卒採用です。内定を出した時点で採用が終わるのではなく、内定を出してから入社するまで、選ばれ続けなければならない時代になっています。


今の若手は、意味のない内定式に迎合しない

内定式という形式をとること自体は、内定者にとって入社する会社の人たちと顔を合わせられる貴重な機会なので、悪くないと思っています。

ただし、今の若手は特に「意味」を考えます。「これをやる意味はあるのか」と考えるのです。無駄な会議や無駄な朝礼のような、意味の分からない慣習には迎合しません。とても合理的です。内定式も同じように見られます。内定式は、何のためにやるのかが分からなければ、内定者に「意味のない行事」と受け取られます。

「毎年やっているから」「ほかの会社もやっているから」という理由で、ただイベントとして開くのなら、私はやる意味がないと思います。


内定式を開くなら、社長の長い話をやめて、双方向で短時間の交流にする

では、内定式をやるならどうすればいいのでしょうか。双方向のものにしてください。ダメな内定式の典型は、役員や社長が壇上で長々と話し続けるものです。学校の朝礼で、校長先生の話が長くて生徒が倒れる、あの光景と同じです。

社長の話が長くなる理由は、話したいことがたくさんあるからです。ですが、聞いている内定者は、時間が長くなるほど「早く終わらないかな」と考えます。内定者に伝わるのは、社長の熱意ではありません。「この会社は、人の時間を大事にしない」という印象です。

短い時間でも構わないので、何のために集まるのかを決めたうえで、内定者と社員が話せる交流の時間を入れることが大事です。たとえば、次のような形が考えられます。

  1. 社長のあいさつは短くして、残りの時間は内定者と社員が話す時間にする
  2. 内定者から社員への質問の時間を、あらかじめ取っておく
  3. 内定者同士が顔を合わせて、入社後の不安や楽しみを話せる場を用意する

内定者が口を開く場があれば、内定者の不安や考えていることが会社に伝わります。


内定者一人ひとりに、期待と役割を個別に伝える

内定式のあとに、もう一つ必要なものがあります。内定者一人ひとりに、「何のために、あなたに入ってもらうのか」という期待と役割を伝える場です。入社後の目標についても、ここで話します。期待と役割は、全員の前でまとめて話しても伝わりません。必ず一人ずつ、個別に伝えます。

なぜ全員の前では伝わらないのか。全員に向けた話は、誰にとっても「自分のこと」にならないからです。社長が壇上から「皆さんの活躍に期待しています」と言っても、内定者は「皆さん」の一人として聞くだけです。一方、「あなたには、入社したらまずこの仕事を任せたい。理由は、面接でこういう話を聞いて、こういう力があると感じたから」と言われれば、内定者は自分が選ばれた理由が分かります。

期待と役割を伝えるには、「どんな人に来てほしいのか」を決めたうえで採用していなければなりません。欲しい人を決めずに欠員補充で採用した会社は、何のために来てもらったのかを、内定者に説明できません。個別に伝える場を作ろうとして初めて、採用の段階で決めておくことが足りなかったと気づく会社もあります。


入社後の初日・3日目・1か月・3か月に、管理職がやること

そして、内定者をつなぎとめるうえで本当に大事なのは、内定式よりも、入社してからの関わりです。内定を辞退せずに入社してくれても、入社後にすぐ辞めてしまえば、つなぎとめたことにはなりません。入社した新人が辞めるかどうかは、入社後に管理職がどう関わるかに大きく左右されます。次の4つのタイミングで、管理職は新人と個別に関わってください。

  1. 初日:「誰が・何を・どこまで教えるか」を一覧にした受け入れ計画を用意します。たとえば、午前は会社の説明と備品の受け取り、午後は先輩と一緒に電話応対を見学する、といった1日の流れです。直属の上司とは別に、年齢が近い先輩を1人つけておくと、新人が「放っておかれていない」と感じます。
  2. 3日目:最初の3日間の様子を、管理職が一人ずつ聞きます。たとえば「この3日間で、分からなくて困ったことは何ですか?」と聞きます。新人が何も言えないまま我慢する前に、早めに聞くのがポイントです。
  3. 1か月:「困ったとき、最初に声をかける相手は決まっていますか?」と聞きます。業務の話の前に、新人の居場所ができているかを確認します。
  4. 3か月:会社が一方的に評価するのではなく、「入ってみてどうだったか」を新人自身の言葉で振り返ってもらいます。入社前に思っていたことと、実際に違っていたことを言葉にしてもらいます。

4つに共通するのは、管理職が話す場ではなく、新人の話を聞く場だということです。ハード(受け入れ計画のような仕組み)を整えたうえで、ソフト(聞く・認めるという日々の関わり)を、管理職が一人ずつ重ねていきます。内定式のあとに個別に伝えた期待と役割も、この4回の中で、本人の言葉で確かめていきます。


管理職に「やれ」と言うだけではできない。コーチングを学ぶ時間を会社がつくる

「管理職にやらせればいい」と考えた経営者の方は多いと思います。ですが、管理職に「やれ」と言っても、できません。新人の話を聞く、不安を引き出す、期待を伝える。こうした聞き方や伝え方は、教わらなければ身につかないからです。

聞き方や伝え方を教わる機会がないまま、管理職になる人は少なくありません。教わっていないのですから、できなくて当然です。それなのに、学ぶ時間も与えずに「新人のフォローをしておいて」と任せるから、うまくいかないのです。新人が「この上司には何も言えない」と感じると、何も言わないまま辞めてしまうことがあります。

だとしたら、会社がやるべきことは決まっています。コーチングやコンサルティングを学ぶ時間を、管理職のためにつくってあげることです。たとえば、勤務時間の中に学ぶ時間を確保する、外部の専門家に話し方・聞き方を教わる、新人役を相手に面談の練習をする、といった形です。

内定式にかける時間と費用があるなら、その一部を管理職の学びに回してください。内定者をつなぎとめるのは、内定式の演出ではなく、管理職の関わり方です。


よくある質問

Q. 内定式は、開かないほうがいいのでしょうか?

A. 何のために開くのかが決まっていて、内定者と会社が双方向で話せる形であれば、開く意味があります。ただのイベントとして開くなら、意味はありません。開く前に、「内定者に何を持ち帰ってほしいのか」を決めてください。それが決まらないなら、その時間は内定者との個別の面談に使ったほうが、入社したい気持ちは高まります。

Q. 管理職がいない小さな会社は、どうすればいいですか?

A. 社長が自分で、入社後の初日・3日目・1か月・3か月の関わりを行ってください。社員が数人の会社であれば、社長が直接やるほうが、新人に気持ちが伝わります。ただし、社長自身も、聞き方や認め方を学んでいなければ、同じ失敗をします。社長が自分で関わる会社でも、聞き方や認め方を学ぶ時間は必要です。また、年齢の近い先輩を1人つけておくと、新人が社長に言いにくいことを話せる窓口になります。


まとめ

東京国税局が初めて内定式を開き、福岡国税局も2025年から内定式を行うなど、内定者をつなぎとめる動きが広がっています。内定式という形式そのものは悪くありませんが、今の若手は意味を考えます。意味のない内定式に、迎合はしてくれません。

開くなら、社長の長い話をやめて、短時間でも双方向で交流できる形にします。そのうえで、内定者一人ひとりに、期待と役割を個別に伝えます。入社後の初日・3日目・1か月・3か月は、管理職が新人の話を聞く場にします。管理職に「やれ」と言うだけではできません。コーチングを学ぶ時間を会社がつくる。それが、内定者をつなぎとめるために会社がやるべき仕事です。

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