面接というと、
「会社が応募者を見極める場」
というイメージが強いかもしれません。
しかし実務で見ていると、採用がうまくいっている会社ほど、
面接を“選別の場”ではなく“関係づくりの場”として使っています。
その考え方を形にしたのが、
応募者をファンに変える「ファン化面接」です。
ファン化面接は、
無理に口説くことでも、良いことだけを並べることでもありません。
「この会社、いいな」「この人たちと働いてみたい」
そう思ってもらえる確率を高める、再現性のある面接設計です。
目次
1. ファン化面接とは「選ばれる前提」で考える面接
採用市場では、
会社が応募者を選んでいるようで、
実際には会社も選ばれています。
特に、
- 経験者
- 定着しそうな人
- 人柄が合いそうな人
ほど、複数の選択肢を持っています。
ファン化面接の前提は、
「どう見極めるか」ではなく
「どう感じてもらうか」
に重心を置くことです。
2. 応募者は「評価」より「扱われ方」を見ている
面接で応募者が強く覚えているのは、
- どんな質問をされたか
- 正解を答えられたか
よりも、
- 話をちゃんと聞いてもらえたか
- 尊重されていると感じたか
- 安心して話せたか
といった感情の部分です。
ファン化面接では、
応募者を「評価対象」ではなく、
一人のパートナー候補として扱う姿勢が重要になります。
3. ファン化面接の第一歩は「聞く割合」を増やすこと
多くの面接では、
会社説明や質問が多く、
応募者が話す時間は意外と短くなりがちです。
ファン化面接では、
応募者:7
会社:3
くらいの割合を意識します。
ポイントは、
スキルや経歴を詰めることではなく、
- なぜ今、転職を考えているのか
- 何に不満を感じてきたのか
- どんな働き方を望んでいるのか
を否定せずに聞くことです。
「それは違う」
「うちでは無理」
を途中で挟まないだけで、
応募者の表情は大きく変わります。
4. 「共感」と「言語化」でファンは生まれる
ファン化面接で重要なのは、
ただ聞くだけではありません。
応募者の話を、
「それって、◯◯がしんどかったということですよね」
と、言葉にして返すことです。
この一言があると、応募者は
「ちゃんと理解してもらえた」
と感じます。
人は、
理解してくれた相手に対して、
自然と好意を持ちます。
これが、
ファン化の起点になります。
5. 良いことだけを言わない方が、信頼される
ファン化面接=
会社を良く見せる面接、
ではありません。
むしろ逆で、
- 大変な点
- 合わない人の特徴
- 楽ではない部分
を正直に伝える方が、信頼されます。
例えば、
「正直、最初は覚えることが多くて大変です」
と伝えた上で、
「それでも続いている人は、◯◯が合っている人です」
これだけで、
応募者は
「誠実な会社だ」
と受け取ります。
6. 面接官自身の言葉で「想い」を語る
ファン化面接では、
用意した説明文よりも、
面接官自身の言葉が重要です。
・なぜこの仕事を続けているのか
・どんなときにやりがいを感じるのか
・逆に、しんどかった時期
こうした話は、
マニュアルよりも強く伝わります。
「この人と一緒に働くイメージが持てた」
この感覚が、
ファン化の決定打になります。
7. ファン化面接は「即決」を生みやすい
ファン化面接ができていると、
次のような変化が起きます。
- 面接後の辞退が減る
- 返事が早くなる
- 条件交渉が穏やかになる
これは、
応募者の中で
「ここで働く自分」が具体的に描けている
状態になっているからです。
まとめ:ファン化面接は「技術」より「姿勢」
ファン化面接は、
特別な質問テクニックが必要なわけではありません。
・ちゃんと聞く
・否定しない
・正直に話す
この積み重ねが、
応募者との関係性を変えます。
面接は、
評価の場である前に、
人と人が向き合う時間です。
応募者が、
「この会社のファンになった」
と感じて帰る面接は、
結果として採用の成功率を大きく高めます。
選ぶ面接から、
ファンを生む面接へ。
それが、
これからの採用で求められる面接の形です。
筆者プロフィール
泉 正道(いずみまさみち)|特定社会保険労務士/採用定着士/生成AIアドバイザー
姫路を拠点に中小企業延べ150社以上へ伴走。採用・定着・労務の相談累計3,000件超(2026年6月現在)。北は福島、南は佐賀まで顧問先があり、全国オンライン対応。
「採用より定着が先」——これが口癖であり、信念。耳が痛くても言い続ける。親に与えてもらった環境や収入を「全て自分の力」と誤解する2代目社長に説教して解約された経験あり。それでも伝え続けるのが私の役目。
支援の軸は制度(ハード)と対話(ソフト)の両輪。就業規則や評価制度を整えるだけでも、研修や面談を繰り返すだけでも、人の問題は解決しない。両方が噛み合って初めて、人が辞めない組織が動き出す。伴走とダメ出しができる社労士。
生成AI支援では「研修を受けた企業の9割が1ヶ月後に何もしていない」という現実に向き合い、経営者のPCを直接触り、当日に課題を解決する「実装型」の伴走を展開。商工会・商工会議所・大手生命保険会社でのセミナー講師としても精力的に活動中。

