採用に至らなかった応募者を、次の機会の候補者やファンに変える方法|トクリュウ事件から姫路の採用定着士が解説、定型文で断る中小企業が大きなチャンスを失い続ける理由

採用に至らなかった応募者を、次の機会の候補者やファンに変える方法|トクリュウ事件から姫路の採用定着士が解説、定型文で断る中小企業が大きなチャンスを失い続ける理由

2026年9月7日、広島県警は、自社の採用面接で不採用にした男性を匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)に紹介したなどの疑いで、広島市に住む建設会社の代表と元役員を再逮捕しました。

この事件を見て、採用面接と不採用通知の関係について、私がいつも経営者の方にお話ししていることを思い出しました。不採用の通知をどう出すかで、会社の評判は大きく変わります。


目次

  1. 事件の概要
  2. 定型文の不採用通知は、誰の記憶にも残らない
  3. 雑な断り方は、Googleクチコミに書かれる
  4. ファン化面接は、不採用の通知まで続いている
  5. 不採用にした人の履歴書をどう扱うか
  6. 応募が少ない会社ほど、不採用の理由まで書く
  7. 不採用の通知に必要なハードとソフト
  8. よくある質問
  9. まとめ

事件の概要

時事通信の報道によると、2人は不採用にした35歳の男性に「海外で稼げるテレアポの仕事を紹介できる」と持ちかけ、トクリュウ側に紹介した疑いが持たれています。

面接の場では、会社は応募者の名前も連絡先も経歴も、正面から聞くことができます。面接で会社が知った応募者の情報が、採用とは関係のない目的に使われたおそれがある点は、採用に関わる立場として見過ごせません。


定型文の不採用通知は、誰の記憶にも残らない

求人票に「〇日までにご連絡がない場合は、不採用とお考えください」と書いている会社は、今でも珍しくありません。連絡を出す会社でも、中身は「慎重に選考を重ねました結果、誠に残念ではございますが、今回はご希望に添いかねる結果となりました。今後のご活躍をお祈り申し上げます」という定型文がほとんどです。

複数の会社を並行して受けている応募者には、ほとんど同じ文面が何通も届きます。どの会社から来たのか区別がつかない通知は、会社の印象を何も残しません。連絡をしないまま終わる会社には、悪い印象だけが残ります。


雑な断り方は、Googleクチコミに書かれる

雑な対応をすれば、今はネットに書かれます。面接に来る人の中には、会社の名前をGoogleマップで調べてから来る人も少なくありません。雑にあしらわれた応募者の中には、その同じ画面で★1をつけて、めちゃくちゃに書いていく人もいます。「結果の連絡すらなかった」「定型文のメール1通で終わり」といった書き込みです。

その★1を読むのは、次の応募者です。飲食店やクリニック、小売店のように、クチコミがそのまま集客に直結する業種なら、お客様も読みます。求人広告にいくらお金をかけても、会社の名前を検索した瞬間に「連絡すらなかった」と書かれていれば、応募は来ません。


ファン化面接は、不採用の通知まで続いている

私が支援先でお伝えしている「ファン化面接」は、応募者を選ぶ場としてではなく、応募者に会社を好きになってもらう場として面接を組み立てる考え方です。この考え方は、不採用の通知まで続いています。

ある飲食店では、不採用の通知と一緒に、お店のサービス券をお渡ししています。採用にはつながらなかった人にもポジティブな印象を持ってもらうことで、良いお客さんとして繋がりが持てるからです。

不採用の通知は、その応募者と会社との最後の接点であり、いちばん記憶に残る接点です。面接の中身は忘れても、どう断られたかは覚えています。1年後に経験を積んで、もう一度応募してくる人もいます。友人に「あそこは落ちたけど、ちゃんとした会社だったよ」と話す人もいます。姫路のように、同じ業界で働く人どうしが1人か2人を挟めばつながっている地域では、なおさらです。


不採用にした人の履歴書をどう扱うか

応募者の個人情報は、採用のために預かっているものです。本人の同意なく、採用以外の目的に使うことはできません。保管しておく必要がなくなったものは、処分するのが原則です。

次のような状態になっていないか、確かめてみてください。

  • 不採用にした人の履歴書が、事務所の棚に何年分も積まれている
  • 社長や面接官の個人の携帯電話に、応募者の番号が残ったままになっている
  • 面接官が、個人のLINEやSNSのアカウントで応募者とやり取りしている
  • 応募者のデータを、誰が見られる状態になっているか説明できない

決めるべきルールは、以下の3つです。

  1. 応募者の情報を誰が見てよいか
  2. 履歴書をいつ返すか、または破棄するか
  3. そのことを不採用の通知に書いて、応募者に伝えるか

履歴書を返送するかどうかは、会社が決めて構いません。「ご提出いただいた履歴書は、当社で責任を持って破棄いたします」。この一行があるだけで、受け取る側の安心感は大きく変わります。


応募が少ない会社ほど、不採用の理由まで書く

1つの求人に何十人も応募がある会社なら、全員に理由まで書くのは現実的ではありません。定型文でも構わないので、履歴書を返すのか破棄するのかまで書いて、必ず連絡してください。

ですが、私がご相談を受ける姫路の中小企業には、求人を出しても1か月に1人来るかどうかという会社がたくさんあります。応募が少ないのであれば、私なら不採用の理由まで伝えます。「こういうところは評価できました。ただ、ここのところが難しかったです」と書きます。定型文とはまったく違う通知になるので、必ず印象に残ります。私自身、当社の採用でそうしています。

たとえば、次のような書き方です。

「先日はお忙しいなか、面接にお越しいただきありがとうございました。前のお仕事で10年間、現場の段取りを任されてきたお話は、当社としても高く評価しております。一方で、求人票にも記載しておりましたとおり、今回の募集は週に2回ほど夜間の対応が必要な仕事で、お伺いしたご希望の働き方と合わせることが難しいと判断いたしました。今回はご縁がありませんでしたが、また別の求人を出す際に、◯◯さんに合っているのでは?と私が感じた時には、連絡をさせていただいても良いでしょうか?もちろん、〇〇さんの状況も違っていると思いますし、お断りいただいても全く問題ございません」

最後のお願いを入れているのは、私が実際にこの形で通知を出しているからです。惜しかった応募者と、次の機会の候補者としてつながりを残しておけます。1年ほどたってから「今こういう募集を出しています」と連絡をすることもありますし、別の仕事で採用に至ったことも何度かあります。

全員にやる必要はありません。人柄の面でもスキルの面でも難しいと感じた人にまで、声をかけ直すことはしていません。ただ、「惜しかったな」「いい人だったな、別の機会があれば」と思った相手なら、絶対にやったほうがいいです。

あとで連絡をするつもりなら、この一文で同意をもらったうえで、連絡先を残しておきます。同意がないまま持ち続けないのが原則で、同意があるなら別です。

書くのは、仕事に必要な経験や能力、勤務条件に関することだけです。人柄や人格の評価には踏み込みません。


不採用の通知に必要なハードとソフト

ハード(仕組み・決めごと)は、面接の最後に「いつまでに、誰から、どんな手段で連絡するか」を伝えること、連絡なしを不採用の代わりにしないこと、履歴書の扱いを通知に書くことです。

ソフト(関わる人の気持ち・誠意)は、社長や面接官が、面接で感じたことを自分の言葉で書くことです。

ハードがなければ、忙しい月には連絡そのものが抜け落ちます。ソフトがなければ、期限どおりに届いても中身は定型文のままです。不採用の通知は、ハードとソフトがそろって初めて相手に届きます。


よくある質問

Q. 不採用の理由を書いたら、かえってトラブルになりませんか

A. 仕事に必要な経験・能力・勤務条件に関することに限って書けば、トラブルにはなりにくいです。本籍や出生地、家族のこと、思想・信条など、そもそも選考で聞いてはいけない事柄には触れません。理由を書こうとして手が止まるなら、選考の基準がはっきりしていなかったというサインです。何を見て採用を決めるのかを先に言葉にしておけば、不採用の理由は自然に書けるようになります。

なお、応募者本人に理由を伝える法律上の義務はありません。ただし、ハローワークから紹介を受けた応募者については、採否と、不採用の場合はその理由を、ハローワークへ連絡する決まりがあります。

Q. 不採用にした人に、Googleクチコミで★1を書かれてしまいました。消せますか

A. 誹謗中傷や事実と違う内容、個人を特定する情報が書かれていれば、Googleに違反を報告できます。ただし、報告しても削除されるとは限りません。元社員の投稿なら、利害関係のある人の投稿として報告する余地がありますが、一度も雇用関係になかった応募者には当てはまりません。本人の体験に基づく感想である限り、削除してもらうのは難しいのが実情です。名誉毀損にあたるような内容なら、弁護士への相談も選択肢になります。

クチコミには返信機能があるので、感情的にならずに、事実と今後の対応を書いておきます。その返信は、次に会社を調べに来た応募者やお客様が読みます。★1を消す方法を探すより、★1を書かれない断り方をするほうが、はるかに安くつきます。


まとめ

不採用の通知は、法律上の義務ではありません。それでも、雑に扱えばGoogleクチコミに★1が残り、次の応募者とお客様がそれを読みます。

逆に、ファン化面接の考え方で丁寧に断れば、不採用にした人が、会社のファンやお客様として残ります。応募が少ない会社ほど、定型文をやめて、評価できた点と難しかった点を書く価値があります。それを支えるのが、ハード(仕組み・決めごと)とソフト(関わる人の気持ち・誠意)の両方です。

採用は、不採用の通知を出したあとも続いています。

合う断り方は、業種や応募の数、面接官の人柄によって変わります。どう断れば、うちのことを良く覚えていてもらえるのか。社長がそれを考え続けている会社は、採用でも定着でも強くなります。

「また辞めた」「応募が来ない」——その悩み、仕組みで解決できます。姫路の中小企業の採用定着を、一緒に仕組み化しましょう。