「中学受験の経験は将来の収入に影響しない」という調査|姫路の採用定着士が伝える、生成AI時代の中小企業が学歴より課題設定力とソフトスキルで採用すべき理由

「中学受験の経験は将来の収入に影響しない」という調査|姫路の採用定着士が伝える、生成AI時代の中小企業が学歴より課題設定力とソフトスキルで採用すべき理由

2026年9月27日、朝日新聞が、中学受験の経験者538人を対象にした調査の結果を報じました。中学受験の経験者は大学進学率が明らかに高いのに、大人になってからの収入は、男性では平均と大きな差がなかったという内容です。Yahoo!ニュースには900件を超えるコメントが集まり、「やっぱり学歴は関係ない」という声と、「調査のやり方が雑だ」という声に分かれました。

私がこの記事を読んで考えたのは、子どもの受験のことではありません。中小企業の社長は、採用のときに学歴をどこまで当てにしてよいのか、ということです。

今日はそれについて、私の持論をお話しします。


目次

  1. ニュースの概要
  2. 調査は2022年、生成AIが広まる前のデータ
  3. 採用経験者の意見は、大学名より高校名のほうが地頭は分かる
  4. 生成AI時代に問われるのは、課題解決力より課題設定力
  5. 知識の量より、ソフトスキルが役に立つ
  6. 学歴に意味があるのは、同期や先輩後輩とのつながり
  7. 中小企業の採用基準は、課題設定力とソフトスキルで決める
  8. よくある質問
  9. まとめ

ニュースの概要

調査をしたのは、東京未来大学の大橋恵教授(社会心理学)たちです。2022年に、25歳から39歳の中学受験経験者538人に聞きました。結果は、大学進学率は国の統計と比べて明らかに高かった一方で、収入は、男性では平均と大きな差がなかったというものです。

女性は平均よりやや高い傾向がありました。ただし記事は、これを受験の効果とは見ていません。大学進学率が高く、未婚で正社員として働く人の割合が高いことが影響した可能性がある、と書いています。

受験した経験そのものについては、「良い友人関係が築けた」「人間的に成長できた」と答えた人がやや多くいました。その一方で、第2志望以下の学校に進んだ人や公立中学に進んだ人からは、「勉強への自信を失った」という声も目立ちました。大橋教授は、難関校に進むと周りと比べてしまい、自己肯定感が下がるリスクもあると話しています。


調査は2022年、生成AIが広まる前のデータ

この調査で、私が最初に引っかかったのは、調査をした年です。2022年のデータは、今の時代を考える材料としては古すぎます。ChatGPTが公開されたのは2022年11月で、生成AIが仕事の現場に入ってきたのは、そのあとだからです。

つまり、この538人の収入は、生成AIがまだ本格的に使われていなかった頃の働き方で決まったものです。ただ、見方を変えると、生成AIが広まる前でさえ、中学受験の経験は収入の差になっていなかったということです。生成AIが当たり前になった今、学歴で差がつく場面は、さらに減っていると私は考えています。


採用経験者の意見は、大学名より高校名のほうが地頭は分かる

以前、大手の人材会社で採用と定着に長く関わってきた方から、こんな話を聞きました。「大学の経歴は当てにならない。ただ、どこの高校を出たかを見ると、地頭は分かるよ」。

現場を知る方の言葉なので、一理あるのだと思います。大学は推薦や総合型選抜など入り方がいろいろありますが、高校入試はほとんどが学力試験なので、そこで地頭が見えるということかもしれません。

ただ、それがどこまで本当なのかは、私には分かりません。この理屈でいくと、国立高専を半年で辞めた中卒の私は、地頭を測りようがありません(笑)。大学名であれ高校名であれ、学校の名前だけで分かることには限りがあると、私は思っています。


生成AI時代に問われるのは、課題解決力より課題設定力

では、生成AIがある時代に、仕事で何が問われるのか。私は、課題を解決する力ではなく、課題を見つける力、つまり課題設定力だと考えています。

「この課題を解決する方法を考えて」と頼めば、生成AIは数秒で何通りもの案を出してきます。課題の解決は、生成AIでもできる時代になりました。ですが、そもそも何が真の課題なのか、本当のボトルネックがどこにあるのかは、生成AIにはおそらく分かりません。

なぜなら、真の課題は、現場の空気感、現場の人がふと口にした一言、会議での発言や表情を見ないと分からないからです。生成AIは、その場にいません。売上が落ちている原因が、商品にあるのか、営業のやり方にあるのか、それとも部長と課長の仲が悪くて情報が止まっていることにあるのか。それは、その場にいる人にしか見えません。


知識の量より、ソフトスキルが役に立つ

もう1つ問われるのが、ソフトスキルです。ここで言うソフトスキルとは、知識や資格以外の、仕事の場で人に伝わり、人を動かす力のことです。

  • 相手に合わせて、柔らかく話せる
  • コミュニケーション能力が高い
  • 自分の考えを発信できる
  • すぐに行動に移せる
  • 物事を前向きに捉えられる
  • 声が大きい
  • 体力がある

声の大きさや体力まで挙げると笑われるかもしれませんが、私は本気です。現場で人を動かし、お客さんに信頼されるのは、こういう人です。

反対に、知識を持っているということ自体は、これからほとんど役に立たなくなると思います。知識は、生成AIに聞けばすぐに出てくるからです。学歴が証明してくれるのは、主に「たくさんの知識を覚えて、試験で正確に答えられた」ということです。そこだけを見て採用すると、生成AIに一番置き換えられやすい力で、人を選んでしまいます。


学歴に意味があるのは、同期や先輩後輩とのつながり

それでも、私は今でも学歴に関心を持っています。理由は、人とのつながりです。

その大学が優秀かどうかは別として、「大学の同期の誰々があの会社にいるから、仕事をお願いした」「同じ学校の先輩だから、話を聞いてもらえた」という話は、経営者の方からよく聞きます。学歴の価値は、覚えた知識ではなく、そこで出会った人との関係にあるのです。朝日新聞の記事でも、中学受験の良かった点として挙がっていたのは「良い友人関係が築けた」でした。

応募者の学歴を見るなら、偏差値ではなく、その人がそこでどんな人間関係を築いてきたのかを聞いてください。


中小企業の採用基準は、課題設定力とソフトスキルで決める

中小企業に、有名大学の卒業生はなかなか応募してきません。学歴で選ぼうとすると、「うちにはいい人が来ない」と感じるばかりです。採用基準を、学歴ではなく、課題設定力とソフトスキルで決めてください。課題設定力もソフトスキルも、学歴に関係なく持っている人はいます。

私自身は、面接のときに、仕事で使う読み書きと計算の筆記試験、そして適性検査を必ず実施しています。「最低限、これができないと採用しない」という基準を、求人を出す前に決めているのです。知識の量を見るためではなく、仕事を覚えるための土台があるかを確かめるためです。

そのうえで、課題設定力とソフトスキルは、面接の質問で確かめます。一例として、次のような質問が考えられます。

  1. 「前の職場で、一番の問題は何だったと思いますか。なぜ、そう思いましたか」(課題を自分で見つけていたかを見ます)
  2. 「その問題に対して、あなた自身は何をしましたか」(行動に移せる人かを見ます)
  3. 「学生時代や前の職場の人で、今も連絡を取り合っている人はいますか」(人との関係を続けられる人かを見ます)

話している間の声の大きさや表情、言葉の選び方からも、ソフトスキルは分かります。

採用基準と筆記試験、面接で聞く質問を紙に書いて決めておくのが、ハード(制度・ルール)です。そして、面接では応募者の話を最後まで聴き、入社後は上司が「この前の提案、よく気づいたな」と、課題を見つけたことを言葉にして認めます。これがソフト(日々の対話や声かけ)です。課題を見つけても誰にも聞いてもらえない会社では、課題設定力のある人ほど先に辞めていきます。


よくある質問

Q. 従業員10人ほどの会社でも、面接で筆記試験をしたほうがよいですか?

A. したほうがよいです。難しい試験は要りません。見積書の計算やお客さんへの連絡文など、その仕事で実際に使う読み書きと計算を、10分ほどで確かめれば十分です。「いい人そうだから」で採用すると、入社してから「こんなこともできないのか」と分かり、本人も会社も困ることになります。

Q. 有名大学を出た人が応募してきました。それだけで採用してよいですか?

A. 学歴だけで決めないでください。有名大学の卒業生にも、ほかの応募者と同じ筆記試験と質問をして、同じ基準で判断します。そのうえで、大学時代の人とのつながりが会社の仕事に活きそうであれば、それは評価してよいと思います。


まとめ

中学受験の経験者538人の調査では、大学進学率は高いのに、男性の収入は平均と大きな差がありませんでした。しかもこれは2022年、生成AIが広まる前のデータです。生成AIがある今、覚えた知識の量で差がつく場面は、さらに減っていると私は考えています。

これからの仕事で問われるのは、真の課題を見つける課題設定力と、人と一緒に仕事を進めるソフトスキルです。学歴に意味があるとすれば、そこで築いた人とのつながりです。中小企業こそ、採用基準を学歴ではなく、課題設定力とソフトスキルで決めてください。

御社の面接では、応募者の何を確かめているでしょうか。社長自身が本気になって、「うちの会社に本当に必要な力は何か」を問い続けてほしいのです。

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