求人を出しても応募が来ない。せっかく採用しても続かない。
そんな悩みを抱える地方都市の中小企業は、今や珍しくありません。
特に人口10万人未満の地域では、若手人材の流出が進み、求人媒体を変えても状況がほとんど改善しないという声が多く聞かれます。
しかし、「人がいない」「応募が来ない」と嘆く前に、まず見直すべきは“採用の前提”です。
今すぐの人手を埋める採用ではなく、3年後に経営を支える“ナンバー2”を育てる採用。
この視点こそが、地方の中小企業が人材難を乗り越えるための鍵となります。
目次
なぜ地方の中小企業には「3年後のナンバー2採用戦略」が必要なのか
地方都市では、「人材がいない」という表面的な問題の裏に、もっと根深い構造的な課題があります。
それは、“経営者がすべてを抱え込む”構造です。
営業、管理、採用、現場。すべてを社長一人が回している。
だからこそ、「右腕となる人を採りたい」という思いは強いのですが、実際には次のような壁に直面します。
- 経営者の考えを理解し、信頼して動ける人がいない
- 求人広告を出しても応募ゼロ、もしくは条件が合わない
- 入社しても数か月で辞めてしまう
このような状況を抜け出すためには、「ナンバー2を今すぐ採る」のではなく、“3年かけてナンバー2を育てる”という発想の転換が欠かせません。
地方企業にとっての採用は、即戦力探しではなく、未来の右腕づくりなのです。
「3年後のナンバー2採用戦略」とは何か
この戦略の基本はシンプルです。
「今すぐ会社を支える人」ではなく、「3年後に会社を支えられる人」を採用する。
そして、入社後の3年間で、段階的に育てていく。
つまり、採用の目的を「戦力補充」から「経営を支える人材の育成」に切り替えることです。
この発想の転換だけで、採用活動の質が大きく変わります。
たとえば、面接の質問も次のように変わります。
- 「今までどんな仕事をしてきましたか?」 → 「3年後、どんな役割を担いたいですか?」
- 「どんなスキルを持っていますか?」 → 「どんなことを学びながら成長していきたいですか?」
これだけで、応募者が「すぐ辞める人」から「一緒に未来を描ける人」へと変わります。
ナンバー2採用戦略とは、経営者と未来を共有できる人を見つけ、育てるための仕組みづくりなのです。
地方企業がナンバー2人材を採用・育成するための3つの視点
① 採用条件よりも「価値観の一致」を優先する
地方都市では、スキルや経験よりも、価値観の一致が定着の決め手になります。
なぜなら、採用できたとしても、人間関係や経営者との考え方のズレがあると、長続きしないからです。
求人票でアピールすべきは「どんな会社か」ではなく、「どんな考えで経営しているか」。
経営者の想いや会社の信念をしっかり言語化し、それに共感してくれる人を採用する。
この一歩が、ナンバー2人材との出会いの出発点になります。
② 「育てながら任せる」仕組みをつくる
ナンバー2を採るということは、同時に「経営者が手放す覚悟を持つ」ということです。
最初から完璧な人材を求めず、小さな仕事を任せて成長を促す。
このステップを意図的に設計しておくことで、信頼関係が自然に育まれます。
例えば、入社1年目は実務中心、2年目はチームリーダー、3年目には経営会議に参加――。
こうした成長ロードマップを共有しておくことで、本人も目標を持ちやすく、社内も受け入れやすくなります。
③ 「採用=発信」の意識を持つ
地方企業に応募が来ないのは、単に「人がいない」からではなく、「知られていない」からです。
地域で魅力的な企業であっても、情報発信をしていなければ、求職者の目に触れることはありません。
自社サイトやSNSで、経営者の考え方・会社の雰囲気・社員の声を定期的に発信するだけでも、反応は変わります。
そして、この発信を「採用広報」として意識することが、長期的な採用ブランディングにつながります。
3年後に“経営を支える人”がいる会社になるために
地方の中小企業にとって、人材難は避けられない現実かもしれません。
しかし、嘆いているだけでは状況は変わりません。
変えられるのは、「採用の前提」と「育成の仕組み」です。
即戦力を探す採用から、「3年後にナンバー2を育てる採用」へ。
スキルよりも価値観。
面接では未来を語る。
採用後は育てながら任せる。
この3つを実践する企業ほど、時間はかかっても、確実に“経営者を支える人”が育っています。
そして、その積み重ねこそが、地方企業の未来を強くしていくのです。
筆者プロフィール
泉 正道(いずみまさみち)|特定社会保険労務士/採用定着士/生成AIアドバイザー
姫路を拠点に中小企業延べ150社以上へ伴走。採用・定着・労務の相談累計3,000件超(2026年6月現在)。北は福島、南は佐賀まで顧問先があり、全国オンライン対応。
「採用より定着が先」——これが口癖であり、信念。耳が痛くても言い続ける。親に与えてもらった環境や収入を「全て自分の力」と誤解する2代目社長に説教して解約された経験あり。それでも伝え続けるのが私の役目。
支援の軸は制度(ハード)と対話(ソフト)の両輪。就業規則や評価制度を整えるだけでも、研修や面談を繰り返すだけでも、人の問題は解決しない。両方が噛み合って初めて、人が辞めない組織が動き出す。伴走とダメ出しができる社労士。
生成AI支援では「研修を受けた企業の9割が1ヶ月後に何もしていない」という現実に向き合い、経営者のPCを直接触り、当日に課題を解決する「実装型」の伴走を展開。商工会・商工会議所・大手生命保険会社でのセミナー講師としても精力的に活動中。

