人口10万人未満の地方都市にある、従業員50名以下の中小企業で、
「求人を出しても反応がない」
「応募が来ても、なぜか噛み合わない」
という悩みは珍しくありません。
このとき、多くの会社は
媒体が悪い、条件が弱い、地域的に不利
と考えがちですが、実際の原因はもっと手前にあります。
それが、
「ほしい人材が明確でないまま求人票を書いていること」です。
目次
1. 応募が集まらない求人票に共通する特徴
応募が来ない求人票には、共通する“ある状態”があります。
それは、誰に向けて書いているのか分からないことです。
具体的には、次のような表現が並びがちです。
- 未経験OK
- 年齢不問
- 人柄重視
- やる気があれば大丈夫
一見、応募しやすそうですが、
求職者から見ると判断材料がほとんどありません。
「自分は当てはまるのか」
「入社後、何を求められるのか」
が分からず、不安が勝って応募に至らないのです。
2. 「間口を広げるほど応募が減る」という現実
地方の中小企業ほど、
「条件を絞ると誰も来なくなるのでは」
という不安から、求人をぼかしてしまいがちです。
しかし実際には、
誰でもいい → 誰にも刺さらない
という結果になりやすくなります。
求職者は「自分のことを分かってくれている会社」に安心します。
逆に、誰にでも当てはまりそうな求人は、
「自分じゃなくてもいい会社」と受け取られます。
3. ペルソナ設定とは「理想像」ではなく「現実解」を描くこと
ここで重要になるのがペルソナ設定です。
ただし、ペルソナを勘違いすると逆効果になります。
ペルソナとは、
優秀で完璧な人材を想定することではありません。
地方の中小企業にとっての正解は、
「実際に定着している人に近い人物像」
です。
次の視点で整理してみると、現実的なペルソナが見えてきます。
- 今いる社員の中で、長く続いている人は誰か
- なぜその人は辞めずに働いているのか
- どんな価値観・働き方が合っているのか
- 逆に、合わなかった人の共通点は何か
この整理ができると、
「採るべき人」と「採らない方がいい人」がはっきりします。
4. ペルソナが決まると求人票の書き方が変わる
ペルソナを設定すると、求人票は次のように変化します。
- 仕事内容が具体的になる
- 求める行動や姿勢が言語化できる
- 向いていない人も正直に書ける
- 会社の価値観をはっきり伝えられる
たとえば、
「人柄重視」ではなく、
「一人で黙々と作業するより、周囲と相談しながら進める方が合う人」
と書けるようになります。
これだけで、
「自分に合いそうかどうか」を求職者が判断できるようになります。
5. 応募を増やすより「ミスマッチを減らす」発想へ
ペルソナ採用に切り替えると、
一時的に応募数が減ることもあります。
しかし、それは失敗ではありません。
合わない人が応募しなくなっただけ
というケースがほとんどです。
地方の中小企業では、
1人の採用ミスが現場や経営に与える影響が非常に大きくなります。
だからこそ、
応募数を追うより、採用後に定着するかどうかを重視すべきです。
6. 今日からできる求人票改善のステップ
① ペルソナを1人に絞る
「この人なら一緒に働けそう」という具体的な人物を1人思い浮かべます。
② その人に向けて文章を書く
「皆さまへ」ではなく、「あなたへ話しかける」つもりで書きます。
③ 合わない人をあらかじめ伝える
ミスマッチ防止のため、向いていないタイプも正直に記載します。
④ 条件より“働くイメージ”を伝える
給与や休日よりも、1日の流れや職場の雰囲気を重視します。
まとめ:応募が来ないのは「地方だから」ではない
応募が集まらない原因は、
立地や知名度よりも、
「誰を求めているかが伝わっていないこと」にあります。
ペルソナを明確にし、
その人に向けて求人票を書く。
それだけで、
「応募ゼロ」から
「合う人だけが応募してくる」
状態へと確実に近づきます。
地方の中小企業ほど、
採用は数ではなく質。
ペルソナ設定は、そのための最もシンプルで、
最も効果の高い改善策です。
筆者プロフィール
泉 正道(いずみまさみち)|特定社会保険労務士/採用定着士/生成AIアドバイザー
姫路を拠点に中小企業延べ150社以上へ伴走。採用・定着・労務の相談累計3,000件超(2026年6月現在)。北は福島、南は佐賀まで顧問先があり、全国オンライン対応。
「採用より定着が先」——これが口癖であり、信念。耳が痛くても言い続ける。親に与えてもらった環境や収入を「全て自分の力」と誤解する2代目社長に説教して解約された経験あり。それでも伝え続けるのが私の役目。
支援の軸は制度(ハード)と対話(ソフト)の両輪。就業規則や評価制度を整えるだけでも、研修や面談を繰り返すだけでも、人の問題は解決しない。両方が噛み合って初めて、人が辞めない組織が動き出す。伴走とダメ出しができる社労士。
生成AI支援では「研修を受けた企業の9割が1ヶ月後に何もしていない」という現実に向き合い、経営者のPCを直接触り、当日に課題を解決する「実装型」の伴走を展開。商工会・商工会議所・大手生命保険会社でのセミナー講師としても精力的に活動中。

