「辞めたから採る」「足りないから急いで採る」。
多くの中小企業で当たり前のように行われているのが欠員補充採用です。
一見すると合理的ですが、実はこのやり方を繰り返すほど「また辞める」「定着しない」という状態に陥りやすくなります。
なぜ欠員補充採用が続くと、定着率が下がるのでしょうか。
目次
結論:欠員補充採用は“原因”ではなく“結果”に対応しているため、同じ問題が繰り返される
結論から言うと、欠員補充採用は「人が辞めた理由」に手を付けないまま進むため、
同じミスマッチが再生産されやすい採用手法です。
結果として、
採用 → 早期離職 → また欠員 → また採用、
という悪循環に入り、定着率は下がっていきます。
欠員補充採用で起きやすい3つの問題
欠員補充を前提にすると、次のような状態が重なりやすくなります。
1. 採用が「急ぎ」になり、判断基準が甘くなる
現場が回らない状況では、
「条件が少し合わないが仕方ない」
「早く来てくれる人でいい」
となりがちです。
この時点でミスマッチの種が生まれます。
2. 仕事や環境の問題が放置される
本来見直すべきなのは、業務量・人間関係・評価・上司の関わり方などです。
しかし欠員補充では「人を入れれば解決する」と考え、
根本原因が置き去りになります。
3. 周囲の社員の負担が増え、職場の雰囲気が悪くなる
欠員期間中のしわ寄せで、既存社員が疲弊します。
その状態で新しい人が入ると、教える余裕がなく、
受け入れ態勢も整いません。
この3つが重なると、新しく入った人ほど
「思っていた職場と違う」
と感じやすくなります。
よくある誤解:辞めるのは「本人の問題」
欠員補充採用を続ける企業ほど、
「辞めた人が根性なしだった」
「若手は続かない」
と個人の問題にしがちです。
しかし、同じ職場で同じ理由で人が辞め続けるなら、
それは構造の問題です。
- 業務量が常にギリギリ
- 教える人が決まっていない
- 期待されている役割が曖昧
- 評価や給与の仕組みが見えない
こうした状態で採用だけ繰り返しても、結果は変わりません。
欠員補充が続くと「採用の質」も下がる
欠員補充採用が常態化すると、採用活動そのものも劣化します。
- ペルソナが「今すぐ来てくれる人」になる
- 求人票が実態より良く書かれる
- 面接で厳しい話を避ける
- ミスマッチを承知で採用する
これにより、入社後のギャップが大きくなり、早期離職が増えます。
結果として「定着しない会社」という評判ができ、
さらに採りにくくなるという悪循環に陥ります。
どうすれば悪循環を止められるか
欠員補充を完全にやめる必要はありませんが、次の視点が欠かせません。
- 「なぜ辞めたのか」を必ず言語化する
- 仕事量・役割・期待値を整理する
- 定着している人の共通点を確認する
- 採用前に“きつい部分”も正直に伝える
- 入社後3か月のフォローを仕組みにする
特に重要なのは、
「辞めた人」ではなく「残っている人」を基準に採用を考えることです。
まとめ:欠員補充採用は短期的対応。定着を考えるなら設計が必要
欠員補充採用は即効性はありますが、
定着という観点では非常に弱い方法です。
人が辞める理由を放置したまま採用を続けると、定着率は確実に下がります。
「辞めたから採る」から
「続く人が増える設計をしてから採る」へ。
この視点に切り替えない限り、
欠員補充のループは終わりません。
筆者プロフィール
泉 正道(いずみまさみち)|特定社会保険労務士/採用定着士/生成AIアドバイザー
姫路を拠点に中小企業延べ150社以上へ伴走。採用・定着・労務の相談累計3,000件超(2026年6月現在)。北は福島、南は佐賀まで顧問先があり、全国オンライン対応。
「採用より定着が先」——これが口癖であり、信念。耳が痛くても言い続ける。親に与えてもらった環境や収入を「全て自分の力」と誤解する2代目社長に説教して解約された経験あり。それでも伝え続けるのが私の役目。
支援の軸は制度(ハード)と対話(ソフト)の両輪。就業規則や評価制度を整えるだけでも、研修や面談を繰り返すだけでも、人の問題は解決しない。両方が噛み合って初めて、人が辞めない組織が動き出す。伴走とダメ出しができる社労士。
生成AI支援では「研修を受けた企業の9割が1ヶ月後に何もしていない」という現実に向き合い、経営者のPCを直接触り、当日に課題を解決する「実装型」の伴走を展開。商工会・商工会議所・大手生命保険会社でのセミナー講師としても精力的に活動中。

