後継者・幹部選びを「誰が」決めているか|福岡出身の特定社労士が解説する属人的人事のリスク

後継者・幹部選びを「誰が」決めているか|福岡出身の特定社労士が解説する属人的人事のリスク

福岡県議会の正副議長ポストを巡る疑惑では、「議長団幹部の意向」で特定の人物にポストが与えられていたのではないか、という証言が出ています。つまり、正式な選考プロセスというより、一部の実力者の判断で、重要なポストの行方が左右されていた可能性があるということです。

私は福岡県の出身です。地元の県議会がこうした形で注目されるのは複雑な思いですが、だからこそ、この一件を単なるゴシップとしてではなく、組織論としてきちんと考えたいと思っています。

今日は、「後継者や幹部を、誰が、どう決めているのか」という問いを、姫路の中小企業に投げかけたいと思います。事業承継や幹部育成に悩む経営者は、決して少なくありません。


目次

  1. 「一部の幹部の意向」で決まるポストの危うさ
  2. 中小企業の後継者選びに潜む属人化リスク
  3. 属人的人事から抜け出す4つの視点
  4. 後継者選びは「早く」「複数の目」で
  5. よくある質問

「一部の幹部の意向」で決まるポストの危うさ

福岡県議会のケースで浮き彫りになっているのは、組織にとって重要なポストの選定が、公式な仕組みではなく、一部の実力者の意向によって左右されていたのではないかという疑念です。こうした構造の怖さは、決める人が変われば、基準そのものが簡単に変わってしまうことにあります。

今回のように「うわさを聞いていた」人が半数近くいたということは、周囲もこの決め方に薄々違和感を持っていたということでしょう。それでも慣行として続いてきたのだとすれば、組織として選考プロセスを見直す仕組みが機能していなかったということになります。

重要なポストほど、決め方そのものが組織の価値観を映し出します。実力や信頼で決まる組織なのか、それとも力関係や距離の近さで決まる組織なのか。一度でも「距離の近さ」で決まった前例ができると、その後も同じ基準が繰り返されやすくなります。前例は、良くも悪くも次の基準になるのです。


中小企業の後継者選びに潜む属人化リスク

中小企業の事業承継・幹部育成の相談を受けていると、後継者選びが完全に経営者一人の頭の中で完結しているケースによく出会います。

  • 「なんとなく息子(娘)に継がせる」以外の選択肢が検討されたことがない
  • 次期幹部の候補が、経営者と気が合うかどうかだけで選ばれている
  • 本人の意向やスキルの棚卸しがないまま、突然後継者に指名される

「なんとなく」で継がせる決断は、後になって「もっと早く別の準備をしておけばよかった」という後悔につながりやすいものです。気が合うかどうかだけで選ばれた幹部候補は、実務能力とのギャップに本人が一番苦しむことになります。そして、ある日突然の指名は、本人にとっても、周囲の社員にとっても、納得感を欠いたまま新体制がスタートすることを意味します。

経営者一人の判断がすべて悪いわけではありません。しかし、判断のプロセスが本人の頭の中だけにあると、周囲からは「なぜあの人が」という疑問が生まれやすく、後継者自身も「自分は本当に選ばれるべき人材なのか」という不安を抱えたまま重責を背負うことになります。この不安は、いざポストに就いたあとのリーダーシップにも影を落とします。


属人的人事から抜け出す4つの視点

1. 「なぜこの人なのか」を言葉にする

後継者や幹部候補を選ぶ際、経営者自身が「なぜこの人なのか」を、実績・強み・今後期待する役割という形で言語化してみてください。言葉にできない場合は、感覚だけで決めようとしている可能性があります。うまく言葉にできないときは、紙に書き出しながら整理すると、頭の中の曖昧さがはっきり見えてきます。

2. 複数の管理職の視点を取り入れる

経営者から見える顔と、現場の部下から見える顔は、しばしば異なります。複数の管理職からの評価を集めることで、一人の視点だけでは見えなかったリスクや強みが見えてきます。経営者の前では模範的に振る舞っていても、部下への接し方に課題がある候補者は珍しくありません。

3. 早い段階から本人と対話する

後継者候補に「ある日突然」重責を伝えるのではなく、早い段階から意向を確認し、必要な経験を積ませていくプロセスを踏むこと。本人の納得感が、その後のリーダーシップの土台になります。

4. 決定理由を、周囲にも共有する

後継者や幹部が決まったら、その理由を社内に向けて説明する機会を持ってください。説明がなければ、周囲は自分たちで理由を推測し始めます。推測は往々にして、実際の理由よりもネガティブな方向に膨らみがちです。


後継者選びは「早く」「複数の目」で

福岡県議会のケースは、ポストを巡る決定プロセスが不透明だったことが、結果として大きな信頼の毀損につながりました。中小企業の後継者・幹部選びも、決定が急で、プロセスが不透明であるほど、社内外からの信頼を損なうリスクが高まります。

逆に、早い段階から複数の目で候補者を見極め、対話を重ねながら進めていく組織は、後継者が実際にポストに就いたときも、周囲からの納得感を得やすくなります。

後継者育成は、一朝一夕でできるものではありません。だからこそ、思い立ったときにはすでに手遅れになっているケースも多いのが実情です。「まだ先の話」と後回しにせず、経営者自身が元気で判断力のあるうちに、次の体制について考え始めることが、結果として一番リスクの少ない選択になります。


よくある質問

Q. 後継者候補が一人しかいない場合、どうすればいいですか?

A. 候補が一人であっても、選考プロセスを省略していい理由にはなりません。その一人に対して「なぜこの人なのか」「今後どんな経験を積んでもらうか」を明文化しておくことで、周囲の納得感を高めることができます。候補が一人だからこそ、丁寧なプロセスがより重要になります。

Q. 幹部候補の選定に、社労士はどう関わってくれるのですか?

A. 社労士は、評価制度や役職の基準を第三者の立場で整理するお手伝いができます。経営者お一人では気づきにくい「属人化しているポイント」を洗い出し、社内で説明可能な基準に落とし込むところまで伴走します。

Q. 複数候補がいる場合、比較していることが本人たちに伝わると角が立ちませんか?

A. 隠そうとするほど、かえって社内の噂として広まりやすくなります。むしろ「複数の視点から公平に検討している」ことをオープンにする方が、選ばれなかった候補者にとっても納得感につながります。プロセスの透明性は、結果を受け入れてもらうための土台になります。


まとめ:ポストは「誰が」ではなく「どんな基準で」決まるべき

福岡県議会の疑惑がどのような結末を迎えるのか、福岡出身の私としては今後も気にかけていきたいと思います。この一件が教えてくれるのは、重要なポストの決め方が不透明であればあるほど、組織の信頼は静かに蝕まれていくということです。

姫路の中小企業の経営者の皆さんも、後継者や幹部の選び方が「誰かの頭の中」だけで完結していないか、この機会に一度見直してみてください。

ポストは、決めた人のためのものではなく、そのポストに関わるすべての人のためのものです。誰が決めるかよりも、どんな基準で、どんなプロセスで決めるか。そこに向き合うことが、長く信頼される組織づくりの第一歩になります。福岡出身の私にとっても、これは他人事ではないテーマです。

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