エアワーク?マイナビ?求人媒体を決める前にやるべきこと——姫路の採用定着士が説く、穴の開いたバケツの話

エアワーク?マイナビ?求人媒体を決める前にやるべきこと——姫路の採用定着士が説く、穴の開いたバケツの話

2026年8月18日

「エアワークとマイナビ、どっちがいいですか?」「大手の求人検索サイトにも出したほうがいいですか?」——姫路の経営者からいただく相談で、実はかなり多いのがこの質問です。求人媒体の比較サイトを見比べ、料金プランを検討し、どの媒体に出すかで頭を悩ませる。その気持ちはよく分かります。

しかし、私がいつもお伝えしているのは、媒体選びは、一番最後に決めることでいいということです。今日は、なぜ媒体比較から入ってはいけないのか、「穴の開いたバケツ」の話を交えてお伝えします。


目次

  1. 穴の開いたバケツに、水を注ぎ続けていませんか
  2. 媒体選びの前に、必ず確認すべきこと
  3. 媒体はあくまで「入口」でしかない
  4. 穴をふさいでから、初めて媒体を選ぶ
  5. よくある質問

穴の開いたバケツに、水を注ぎ続けていませんか

底に穴が開いたバケツに、いくら水を注いでも、水は溜まりません。注ぐ量を増やしても、注ぐ勢いを強めても、結果は同じです。求人採用も、まったく同じ構造をしています。

定着率が低い会社が、媒体を変えたり、求人広告費を増やしたりするのは、まさに穴の開いたバケツに水を注ぎ続けているのと同じ状態です。せっかく採用できても、数ヶ月から半年で辞めていく。その繰り返しの中で「もっと良い媒体があるはずだ」と探し続けても、根本の穴がふさがらない限り、水は一向に溜まっていきません。

先日、ある中小企業の専務とお話しした際、まさにこの状態を目の当たりにしました。求人広告に月20万円をかけて大手媒体に出稿し、月3人ほどの応募があり、採用自体はできている。ところが、採用できた人のほとんどが3ヶ月未満で辞めていくというのです。話を聞くと、給与計算は自社で行っているものの残業代の計算に誤りがあり、他にも労務上のミスが複数ある。社長自身もそれを自覚していながら、「支給しない」という判断のまま止まっているとのことでした。私はその専務に、こう伺いました。「そこを解決しない限り、定着率が上がることはないと思いますが、変えたいですか?」専務ご自身は変えたいと感じている様子でしたが、最後は社長がそこに向き合う覚悟を持てるかどうかにかかっています。この会社に本当に必要なのは、給与計算を誰が担当するかという実務的な問題以上に、もっと根っこにある制度設計(ハード)と、経営者自身の考え方(ソフト)、両方への支援でした。

厄介なのは、バケツに穴が開いていること自体には、なかなか気づけないという点です。水を注いでいる瞬間は、バケツの中に水があるように見えます。応募が来て、面接をして、内定を出して、入社してもらった。その一連の動きだけを見れば、「採用はうまくいっている」ように感じてしまいます。しかし数ヶ月後、気づけば水位は元通り。この繰り返しに慣れてしまうと、「うちはこういうものだ」と穴の存在そのものを疑わなくなってしまいます。

2026年上半期の人手不足倒産が過去最多を更新したというニュースもありました。焦る気持ちから「とにかく求人を出さなければ」と媒体選びに飛びつく経営者は多いですが、順番を間違えると、焦れば焦るほど遠回りになります。


媒体選びの前に、必ず確認すべきこと

  • 直近1年で採用した人の、定着率・平均在籍期間はどれくらいか
  • 辞めた人の退職理由を、本音ベースで把握できているか
  • 「また辞めるかもしれない」という不安を抱えたまま、採用予算だけを増やそうとしていないか

この3つに答えられないまま媒体を選んでも、結果は今までと変わりません。むしろ、広告費をかけて応募数だけが増え、面接の負担が増える分、現場はより疲弊します。良い媒体を選ぶこと自体は間違いではありませんが、それは「バケツの穴をふさいだ後」にやるべき作業です。

特に1つ目の「定着率・平均在籍期間」は、多くの経営者が感覚でしか把握していません。「最近よく辞めているような気がする」という肌感覚と、実際のデータには、驚くほどギャップがあることがあります。エクセル一枚に入社日・退職日を並べるだけで構いません。まずは数字として事実を見ることが、穴の場所を特定する第一歩です。


媒体はあくまで「入口」でしかない

エアワークもマイナビも、大手の求人検索サイトも、それぞれに特徴があります。若手に強い媒体、専門職に強い媒体、コストを抑えられる媒体。ターゲットに合わせて選ぶこと自体は、確かに大切な戦略です。

しかし、媒体はあくまで「入口」です。入口をどれだけ工夫しても、入ってきた人がすぐに出ていってしまう会社では、どの媒体を選んでも同じ結果になります。私が姫路の顧問先で採用の相談を受けるとき、最初に聞くのはいつも媒体名ではなく、「直近で入社した人が、今も働いているかどうか」です。ここに答えが詰まっています。

媒体ごとの特徴を比較検討すること自体は、決して無駄ではありません。ただ、その検討に費やす時間とエネルギーを、定着率の把握に半分でも振り向けている会社は、実はそう多くありません。「良い入口を探す」ことと「入った人を留める」こと、どちらにも同じだけの本気度で取り組めているか、一度振り返ってみてください。


穴をふさいでから、初めて媒体を選ぶ

では、穴をふさぐとは具体的に何をすることでしょうか。制度(ハード)としては、評価基準や教育の仕組みを整えること。対話(ソフト)としては、日頃の声かけや面談で「辞めたい」の芽を早めに拾うこと。この両輪が、バケツの穴をふさぐ作業にあたります。

この土台ができて初めて、媒体選びが意味を持ちます。定着する土台がある会社であれば、多少コストの高い媒体を選んでも、採用した人が長く働いてくれる分、投資として十分に回収できます。逆に、土台がないまま安い媒体を選んでも、結局は「安物買いの銭失い」になりかねません。

実際に穴をふさいだ会社では、面白い変化が起きます。求人広告費を増やしていないのに、応募者からの評判が良くなり、紹介で人が集まるようになるのです。定着している従業員が「うちの会社、悪くないよ」と自然に周囲へ話してくれるようになるからです。これは、どんな高額な媒体を使っても得られない、最も強力な採用チャネルだと私は考えています。

私は姫路の中小企業の経営者に、「まず穴をふさいでから、媒体を選びましょう」と繰り返しお伝えしています。遠回りに見えるこの順番こそが、結果的に一番早く、そして一番安く、必要な人材を定着させる方法です。

もちろん、穴を完全にふさぎ切ってから採用を始める必要はありません。大切なのは、「穴があることを自覚したうえで媒体を選ぶ」か、「穴に気づかないまま媒体だけを変え続ける」かの違いです。前者であれば、たとえ完璧でなくても、投じたお金は少しずつバケツに水として溜まっていきます。


よくある質問

Q. すぐに人手が必要で、悠長に定着施策をやっている余裕がありません。

A. その場合でも、媒体選びと並行して、退職理由の把握だけは同時に進めてください。穴をすべてふさいでから採用を始める必要はありません。応急処置として穴をふさぎながら水を注ぐ、というイメージで両方を並走させるのが現実的です。

Q. 結局、どの求人媒体がおすすめですか?

A. 業種・職種・エリアによって最適な媒体は変わるため、一概には言えません。ただし、媒体選びで悩む前に、自社の定着率を一度数値で把握することをお勧めします。定着率が把握できれば、媒体選びの優先順位も自然と見えてきます。定着率が低いまま媒体だけを豪華にしても、穴の大きさに見合わない出費になりがちです。

Q. 定着率は、どうやって把握すればいいですか?

A. 過去1〜2年の入社者を洗い出し、それぞれの在籍期間を一覧にするだけで十分です。難しい計算式は必要ありません。エクセル一枚で構わないので、まずは「事実」を可視化することから始めてください。


まとめ

求人媒体をどれにするか迷ったら、一度立ち止まってください。穴の開いたバケツに水を注ぎ続けていないか。媒体選びより先に、確認すべきことがあります。土台を整えてからの媒体選びは、結果的に一番の近道になります。エアワークかマイナビか、その答えを急ぐ前に、自社のバケツの底を確かめてみてください。

「また辞めた」「応募が来ない」——その悩み、仕組みで解決できます。姫路の中小企業の採用定着を、一緒に仕組み化しましょう。