姫路の採用定着士が解説、経営者が面談で「聞く力」を鍛えるべき理由

姫路の採用定着士が解説、経営者が面談で「聞く力」を鍛えるべき理由

先日、ある社長とお話ししていたときのことです。従業員との面談制度を作りたいというご相談をいただき、目的や進め方を一緒に整理していました。すると、その社長がふと、こんなことをおっしゃいました。

「僕の面談って、多分僕がずっと喋ってるんです」

誰かに指摘されたわけではありません。話しているうちに、ご自身で気づかれたのです。この気づきが、実はとても大事なものだと感じました。

面談制度をこれから作ろうとしている経営者の多くは、「何を聞けばいいか」「どんな頻度でやるべきか」という制度設計に意識が向きがちです。しかし、実際に運用が始まってから壁にぶつかるのは、制度の中身よりも、経営者自身の「聞き方」であることが少なくありません。


目次

  1. 頭の回転が速い経営者ほど、面談で損をする
  2. 「聞かれている」のか「聞かせられている」のか
  3. 聞く力は、練習すれば身につく
  4. 小さな面談の積み重ねが、定着率を左右する
  5. よくある質問

頭の回転が速い経営者ほど、面談で損をする

冒頭の社長は、こんな自己分析もしてくださいました。「頭の回転が速いというより、結論を急いでしまうんです。相手が話し終わる前に、自分の意見を挟んでしまう」。

これは決して珍しい話ではありません。むしろ、決断力があり、判断が速い経営者ほど、このクセを持っていることが多いと感じます。経営の現場で強みになるスピード感が、面談の場では裏目に出てしまうのです。

従業員からの相談に対して、すぐに答えを出す。要望に対して、すぐに条件を提示する。一見すると頼れる社長に見えますが、実はその瞬間、大切な対話のプロセスを飛ばしてしまっていることがあります。

例えば「給料を上げてほしい」という要望を受けたとき、多くの経営者は「これができるようになったら」という条件をすぐに提示しがちです。しかし、その言葉の裏には様々な気持ちが隠れています。「これだけ頑張っているのに、正当に評価されていない」という不満かもしれませんし、単純に生活のための切実な希望かもしれません。言葉だけを受け取って条件を提示すると、本当に必要だった対話を飛ばしてしまうことになります。

実際、条件だけを提示して終わったケースでは、こんなことが起こりがちです。スタッフはその条件を目指して努力したものの、結局その水準には届かず、途中で諦めてしまう。後になって、経営者はこう振り返ることになります。「あの時、なんで給料を上げてほしいと思ったのか、本人に聞けばよかった」。

条件を提示すること自体が悪いわけではありません。ただ、その前に「なぜ」を聞くプロセスを一つ挟むだけで、見えてくるものが大きく変わります。本人が本当に求めていたのは金額そのものではなく、「頑張りを認めてほしい」という承認だったというケースも珍しくありません。


「聞かれている」のか「聞かせられている」のか

面談の目的は、たいてい「本音を引き出すこと」です。しかし、経営者が話す割合が多くなればなるほど、この目的は達成しづらくなります。

「聞かれている」のではなく「聞かせられている」と従業員が感じた瞬間、本音は語られなくなります。これは、経営者が意地悪をしているつもりがなくても起こることです。むしろ、良かれと思って丁寧にアドバイスをしようとするほど、話す時間は長くなりがちです。

姫路のように経営者と従業員の距離が近い中小企業ほど、この現象は起こりやすいと感じます。距離が近いからこそ、経営者は「わかっているつもり」になりやすく、従業員は「言っても仕方ない」と諦めやすいのです。

  • 要望に対してすぐ答えを出さず、「どうしてそう思ったのか」を聞いてみる
  • 「どんな場面でそう感じたのか」と具体的な状況を尋ねる
  • 条件やルールで即座に返す前に、一呼吸置く

これだけで、本人も自分の気持ちを整理でき、経営者側も本当のニーズが見えてくることがあります。

また、経営者が話しすぎる状態が続くと、従業員側にも変化が起こります。「どうせ聞かれても、最後は社長の考えに落ち着く」という諦めが積み重なり、そもそも自分の意見を言わなくなっていくのです。これは面談の場だけでなく、日常のちょっとしたやり取りでも同じことが起きます。指示を受ける立場に慣れてしまうと、主体的に考える機会そのものが失われていきます。


聞く力は、練習すれば身につく

冒頭の社長は、この気づきをきっかけに、ご自身の定例面談の目標のひとつに「聞く割合を増やすこと」を掲げることにしました。

これは決して簡単なことではありません。特に、日々忙しく判断を重ねている経営者にとって、相手の話をじっくり待つというのは、慣れないうちはストレスに感じることもあるでしょう。

それでも、自分の弱点を自覚し、それを克服しようと練習の場を作ろうとする姿勢そのものが、すでに良い経営者の条件だと私は感じています。完璧に聞き上手になる必要はありません。まずは「結論を急がない」「5秒待つ」といった小さな工夫から始めるだけで、面談の質は大きく変わります。

部下やスタッフからの要望を受けたとき、条件やルールで即座に返す前に、一呼吸置いて「なぜ」を聞いてみる。それだけで、その後の関係性が大きく変わることがあります。


小さな面談の積み重ねが、定着率を左右する

私がこれまで支援してきた中小企業を見ていても、離職の予兆は突然現れるわけではありません。小さな不満や違和感が、誰にも聞かれないまま積み重なった結果として、ある日突然「辞めます」という言葉が出てくることがほとんどです。

面談の頻度は、年に1回でも構いません。大切なのは、頻度そのものよりも、「この会社は自分の話を聞いてくれる」という安心感を従業員が持てるかどうかです。1年目は本音を話してくれなくても、2年目、3年目と信頼関係が積み重なるにつれて、徐々に話してくれるようになるケースはよくあります。

姫路のように、経営者と従業員の距離が近い会社では、日常会話の延長で本音を拾えると思いがちです。しかし、日常のやり取りと、腰を据えて話を聞く場は別物です。あえて時間を区切って「聞く場」を作ることで、日常会話では出てこない本音が初めて出てくることがあります。

面談を「経営者が指導する場」ではなく「経営者が聞く練習をする場」と捉え直すと、面談へのハードルはぐっと下がります。完璧を目指す必要はありません。今日からできる小さな一歩は、「相手が話し終わるまで、口を挟まない」。まずはそれだけで十分です。

よくある質問

Q. 面談で従業員が本音を話してくれません。どうすればいいですか?

A. まずは経営者ご自身が話す割合を減らすことから始めてみてください。結論やアドバイスを急がず、「どうしてそう思ったのか」を聞くことに徹するだけでも、本音が出やすくなります。1回で変わらなくても、回数を重ねる中で少しずつ関係性が変化していきます。

Q. 経営者と社労士、面談を分担する場合はどう役割分担すればいいですか?

A. 社労士が先に本人と面談し、本音を引き出した上で、本人の意向を確認しながら経営者に共有するかどうかを判断する、という進め方がおすすめです。経営者の代理として聞くのではなく、本人の意思を尊重するスタンスを最初に約束することが、信頼関係のカギになります。

Q. 面談の頻度や時間はどれくらいが適切ですか?

A. 目安として、年1〜2回、1回あたり60分程度を推奨しています。短すぎる面談(5分程度)は形だけになりやすく、本音を引き出す時間として機能しません。実施のタイミングは、賞与前など、待遇に関する話題が出やすい時期に合わせると、面談の目的がぶれにくくなります。


まとめ

経営者が「聞く力」を持つことは、面談制度を機能させるための土台です。決断力やスピード感という経営者としての強みを保ちながら、面談の場だけは意識的に「聞く割合」を増やす。この小さな切り替えが、従業員との信頼関係を大きく変えていきます。

面談制度は、一度作ったら終わりではありません。実施するたびに「今回はどれくらい聞けたか」を振り返り、少しずつ調整していくものです。完璧な面談を目指すのではなく、前回より少しでも相手の話を聞けたかどうかを基準にすれば、経営者ご自身の負担も軽くなります。

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