福岡県議会で、正副議長のポストを巡って現金が動いたのではないか、という疑惑が報じられています。元議長が「議長就任前に、自民党県議団の幹部から現金を要求され、総額約2,000万円を支払った」と証言し、他の県議からも「500万円を渡した」「300万円を渡した」といった証言が相次いでいる状態です。現時点では事実関係を巡って主張が対立しており、県議会は弁護士など第三者を交えた調査に乗り出す方針です。
私は福岡県の出身です。姫路を拠点に仕事をしていますが、生まれ育った福岡がどうなっていくのかは、正直、人一倍気になります。だからこそ、このニュースをただの「よその話」として読み流すことができませんでした。
ただ、今日お伝えしたいのは政治とカネの是非そのものではありません。この一件の背景に見え隠れする「みんなやっていたから」「昔からそうだったから」という空気が、実は姫路の中小企業にとっても他人事ではないという話です。
目次
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福岡県議会で報じられていること
報道によれば、福岡県議会では正副議長というポストに就く際、現金が動いていたのではないかという証言が複数の県議から出ています。現議長はこの疑惑を否定していますが、副議長は「県政の混乱を招いた」として辞職しました。県議会は透明性を確保するため、内部だけでなく外部の目を入れた調査を行う方針を示しています。
興味深いのは、NHKが現職の県議に対して行ったアンケートで、金銭のやり取りについて「うわさを聞いたことがある」と答えた議員が半数近くにのぼったという点です。つまり、直接関わっていなくても、多くの人が「何かおかしい」と薄々気づいていた可能性があるということです。
今回の一件と並行して、県議による海外視察費が過去3年間で総額2億8000万円にのぼっていたことも報じられています。金額の妥当性そのものは今後の検証を待つ必要がありますが、こうした費用も「毎年そういうものだから」という前提で、長年にわたって大きく疑問視されずに来た経緯があるようです。ポストを巡る話も、視察費の話も、根っこにあるのは同じ構造ではないかと私は感じています。
「みんなやってるから」が一番危ない理由
組織の中で長年続いてきたやり方は、良くも悪くも「疑われないもの」になります。誰かが始めた頃には理由があったはずなのに、世代が変わるうちに理由は忘れられ、「そういうものだから」という空気だけが残る。これが一番危ないパターンです。
人は、周囲の多くが同じ行動を取っていると、それだけで「正しいこと」だと錯覚しやすい生き物です。心理学ではこれを同調行動と呼びますが、組織の中では役職が上がるほど、この錯覚に自分自身も巻き込まれやすくなります。「みんなやっている」は、思考停止への一番の近道なのです。
私は中小企業の労務相談を受ける中で、似た構図を何度も見てきました。残業代の計算方法、休憩時間の扱い、退職時の手続き。「うちは昔からこうしている」という一言で、実は法律に反したやり方がそのまま続いているケースは珍しくありません。
誰も悪気があってやっているわけではないのです。ただ、疑う人がいなかった。それだけのことが、後になって大きなトラブルの火種になります。
面白いのは、こうした慣習に一番早く気づくのが、実は外部の人間だということです。新しく入社した社員、取引を始めたばかりの取引先、あるいは私たち社労士のような外部の専門家。中にいる人が「当たり前」だと思っていることほど、外から見ると「なぜそうなっているのか」がすぐに引っかかります。福岡県議会の慣行も、長年その内部にいた人たちにとっては、疑うという発想自体が浮かびにくいものだったのかもしれません。
姫路の中小企業にも潜む「昔からの慣習」
あなたの会社にも、「なぜそうしているのか、正確には誰も説明できないルール」はありませんか。
- 役職者を決める基準が、成果や適性ではなく「年次」や「社長との距離感」になっている
- 手当や賞与の配分が、明文化されないまま「前任者がそうしていたから」で決まっている
- 特定の役職に就くと、慣習的に何かを負担する・提供することが暗黙の了解になっている
たとえば「年次」で役職を決める会社では、実力があっても若手が正当に評価されず、逆に実力が伴わないままポストだけが上がっていく人が出てきます。「前任者がそうしていたから」という手当の配分は、根拠を聞かれた瞬間に誰も答えられず、社員の不信感の火種になります。そして「役職に就いたら何かを負担するのが当然」という空気は、まさに福岡県議会で問題視されている構造そのものです。金額や形は違っても、根っこにある力学は同じだと私は感じています。
こうした慣習は、組織が小さいうちは「阿吽の呼吸」として機能します。しかし、人が増え、世代が変わり、外部の目が入るようになると、途端に「不透明な組織」というレッテルに変わります。福岡県議会の一件も、規模は違えど構図は同じです。
慣習をルールに変える3つのステップ
「うちは大丈夫」と思っている会社ほど、実は慣習が言語化されていません。ここでは、慣習をリスクに変えないための3つのステップをお伝えします。
1. 「なぜそうしているのか」を経営者自身が言語化する
まずは制度(ハード)の話です。役職・手当・評価の基準を、経営者の頭の中から紙の上に出すこと。理由を説明できないルールは、説明できる形に変えるか、やめるかのどちらかしかありません。
2. 「おかしい」と言える空気をつくる
次はソフトの話です。制度をどれだけ整えても、社員が「これって変じゃないですか」と言える空気がなければ、慣習は水面下で生き続けます。福岡県議会でも「うわさは聞いていた」人が半数近くいたのに、声にはならなかった。組織で本音が言えるかどうかは、制度以上に大きな差を生みます。
3. 定期的に「これ、今も必要ですか」と問い直す
慣習は一度見直したら終わりではありません。年に一度でいいので、就業規則や評価の運用を棚卸しし、「今の会社の実態に合っているか」を確認する機会を持つことをおすすめします。
よくある質問
Q. 慣習を変えようとすると、古参の社員から反発が出そうで怖いです。どうすればいいですか?
A. いきなり「今までのやり方は間違っていた」と否定する必要はありません。「これまで頑張ってきてくれたやり方を、これからも続けられる形に整理したい」という伝え方をすると、反発は和らぎます。変えるのはやり方であって、これまでの功績を否定するわけではない、という姿勢を見せることが大切です。
Q. うちは家族経営に近い規模です。それでも制度化は必要ですか?
A. 「家族同士で、絶対に揉めない」と自信があるなら別かもしれませんが、家族ほど、揉めた時に大変です。親しき仲にも礼儀ありと同じで「親しき仲にもルールあり」だと、私は考えます。
そして、規模が小さいうちに整えておく方が、後が楽です。人数が増えてきてからルールを作ろうとしても、反発する社員も出てきます。だからこそ、今のうちに基準を言葉にしておくことが、将来のトラブルを防ぐ一番の近道です。
Q. 慣習を洗い出そうにも、何から手をつければいいか分かりません。
A. まずは「入社したばかりの社員に、理由を聞かれて答えに詰まるルール」を思い浮かべてみてください。新しく入った人ほど、既存社員が気づかない違和感に敏感です。定期的に新入社員へ「疑問に思ったこと」をヒアリングする仕組みを持っておくと、慣習の棚卸しが自然と進みます。
まとめ:「昔からのやり方」を疑うところから組織づくりは始まる
福岡県議会の一件は、まだ全容が明らかになったわけではありません。ただ、「みんな薄々気づいていたのに、誰も声にできなかった」という構図だけは、多くの組織に共通するものだと感じます。ポストを巡る話も、視察費の話も、一つひとつは小さな「慣習」の積み重ねが、気づけば大きな金額と大きな信頼の毀損につながっていました。
姫路の中小企業でも、規模の大小にかかわらず「昔からのやり方」は必ずどこかに存在します。それ自体が悪いわけではありません。理由を説明できるか、声を上げられる空気があるか。この2点を、一度立ち止まって確認してみてください。
外の目を入れることに抵抗を感じる経営者もいるかもしれません。しかし、内部だけで完結させようとすればするほど、慣習は疑われないまま温存されます。第三者の視点を借りることは、組織を疑うことではなく、組織を守るための備えです。
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