先日、加古川で設備工事の会社を経営されている社長から、事務スタッフの採用について相談を受けました。大手の求人検索サイトに求人を出すと、応募はそれなりに来る。ところが、「面接はいつがよろしいですか」とメールを返すと、そこで返信が途絶えてしまう。ようやく日程が決まっても、前日に「今の仕事を辞められなくなりました」と辞退の連絡が来る。
社長は「最近の応募者は、とりあえず応募ボタンを押しているだけなんですかね」とおっしゃっていましたが、面接辞退や音信不通の原因は、応募者の質だけではありません。社長が「この人は良さそうだ」と思った応募者ほど、同じ日に他の会社からも連絡が来ています。その中で、後回しにされているのです。
今日はそれについて、私の持論をお話しします。
目次
目次
- 相談の概要(応募は来るのに、面接辞退や音信不通が続く会社)
- 良い応募者には、他の会社も同時に連絡している
- 面接まで来てもらえる会社は、応募直後の電話で面接の約束を大切な約束に変えている
- 応募直後の電話で聞くこと、伝えること
- 社長が電話できない会社は、一次対応の担当と話す内容を先に決める
- よくある質問
- まとめ
相談の概要(応募は来るのに、面接辞退や音信不通が続く会社)
この会社の状況を、社長から聞いた内容で整理すると、次のようになります。
- 募集している職種:事務スタッフ1名(大手の求人検索サイトで有料掲載)
- 応募の数:この3か月で12件
- 応募者への対応:社長が日中は現場に出ているため、夜に事務所でメールを返す
- メールの中身:応募のお礼と「面接はいつがよろしいですか」という日程の確認
- 結果:面接に来たのは12人中たった3人。残りは返信が途絶えるか、日程が決まった後に辞退
社長は、応募者のメールの送り方もよく見ています。夜中の2時や3時にメールを送ってくる人は、生活のリズムが合わないことが多い。こちらの返信に「承知しました」の一言も返ってこない人は、入社してからも報告や連絡が雑になりやすい。だから、メールのやり取りで人柄を見極められるのは、むしろ都合がいいと考えていました。
社長の見立てが外れているとは思いません。ただ、メールでふるいにかけている間に、社長が「会いたい」と思った人まで一緒に離れていっています。
良い応募者には、他の会社も同時に連絡している
求人サイトで仕事を探している人は、1社だけに応募しているわけではありません。気になる求人を見つけたら、2社、3社と続けて応募します。在職中の人なら、仕事の合間や帰りの電車の中でまとめて応募することも珍しくありません。
そうすると、応募者の手元には、同じ日に複数の会社から連絡が届きます。ある会社からは、その日の夕方に電話がかかってきて、「ご応募ありがとうございます。事務のご経験がおありなんですね」と話が弾む。別の会社からは、夜の10時に「面接はいつがよろしいですか」というメールが届く。応募者は、どちらの面接を先に受けたいと思うでしょうか。
応募者に悪気はありません。先に話をした会社のほうが、どんな人が働いているのかが分かり、自分がそこで働く姿も思い浮かべやすい。だから、そちらの面接を優先して、もう一方には返信をしないまま忘れてしまう。前日の辞退も同じで、面接の約束が応募者にとって軽い約束のままだから、もっと気になる会社が出てきた時点で簡単に外されます。
面接まで来てもらえる会社は、応募直後の電話で面接の約束を大切な約束に変えている
採用で結果を出している会社は、応募が来たら、まず電話をかけています。しかも、その電話でやっているのは「面接はいつにしますか」という事務連絡だけではありません。応募してくれたことにお礼を言い、これまでの経験を聞き、その経験が自分の会社のどこで生きるのかを伝える。数分話すだけで、応募者の中で「たくさん応募したうちの1社」が「ちょっと行ってみたい会社」に変わることがあります。
私はこれを、面接の約束を、大切な約束に変えると言っています。メールで日程だけを決めた面接は、応募者にとっては予定表の1行にすぎません。一方で、電話で話をして「この会社の人に会ってみたい」と思った面接は、簡単には外せない約束になります。
メールで日程だけを聞いて返信を待つ会社と、その日のうちに電話で話す会社とでは、社長が「会いたい」と思った人が面接に来るかどうかが変わります。冒頭の会社の「12人中3人」は、その差が数字に表れたものです。
応募直後の電話で聞くこと、伝えること
応募直後の電話は、面接ではありません。長々と質問をする必要はなく、5分から10分で十分です。大事なのは、こちらが応募者に関心を持っていることを、声で伝えることです。
電話で聞くこと
電話で聞くことは、次の3つで足ります。
- これまでの経験(どんな仕事を、どのくらいしてきたか)
- 今の状況(在職中か、いつ頃から働けそうか)
- この求人のどこが気になって応募してくれたか
3つ目は、志望動機を問いただすような聞き方にしないでください。「どこに興味を持ってくださったんですか」と軽く聞けば十分です。応募者が答えた内容は、面接で話を広げる材料になります。
電話で伝えること
伝えることは、応募してくれたことへのお礼と、経験への関心です。「経理の経験がおありなんですね。うちは請求書の処理が多いので、本当に助かります」のように、その人の経験が自分の会社のどこで生きるのかを、具体的に伝えてください。応募者は、自分の経験が求められていると分かったときに、その会社で働く姿を想像し始めます。
そのうえで、「よかったら、面接の前に一度、事務所を見に来てください」と誘ってみてください。いきなり面接に来てもらうより、応募者にとっての心理的なハードルがぐっと下がります。
社長が電話できない会社は、一次対応の担当と話す内容を先に決める
ここまで読んで、「それができたら苦労しない」と思った社長も多いはずです。冒頭の社長も、日中はずっと現場に出ていて、応募の通知に気づくのは夜になってからでした。社長本人がその日のうちに電話をかけるのは、現実的ではありません。
それなら、社長の代わりに応募者へ電話をかける一次対応の担当を、先に決めておいてください。事務所にいるご家族や、総務の担当者、ベテランの事務スタッフなど、日中に電話を受けたりかけたりできる人です。
ハード(仕組み・決めごと)として、次の3つを用意しておきます。
- 応募の通知を、担当者のスマートフォンやパソコンでも受け取れるようにする
- 応募が来たら、その日のうちに電話をかけるルールにする
- 電話で聞く3つのことと伝えることを、1枚の紙にまとめる
こうしておけば、担当者が替わっても同じ対応ができます。
ソフト(関わる人の気持ち・誠意)としては、電話をかける人が、応募してくれたことを本当にありがたいと思って話すことです。紙を読み上げるような電話では、応募者の気持ちは動きません。担当者には、なぜこの電話が大事なのか、社長が自分の言葉で話して伝えてください。社長の「うちに来てくれたらうれしい」という気持ちが担当者に伝わっていれば、その気持ちは電話の声にも乗ります。
よくある質問
Q. 応募者全員に電話をかける必要がありますか?
A. 全員でなくて構いません。応募の内容を見て「会ってみたい」と思った人には、その日のうちに電話をかけてください。迷う人には、まず履歴書を送ってもらい、書類で決めれば十分です。相手を絞るからこそ、一人ひとりにきちんと時間をかけられます。
Q. 面接の前に職場見学に来てもらう意味はありますか?
A. あります。面接は応募者にとって「評価される場」なので、どうしても身構えます。見学なら、応募者は気軽に来られますし、実際の職場の雰囲気や一緒に働く人を見て、自分が働く姿を想像できます。面接の前に職場と人を見てもらうと、応募者は身構えずに来られます。見学で「ここで働いてみたい」と思った応募者は、その後の面接を自分から大切な約束として扱ってくれます。会社にとっても、面接では見えにくい人柄を、見学中のやり取りから知ることができます。
まとめ
応募が12件来ても、面接に来たのはたった3人。原因は、応募者の質だけではありませんでした。良い応募者ほど、同じ日に他の会社からも連絡を受けていて、メールで日程を聞くだけの会社の面接は、軽い約束のまま後回しにされていたのです。
応募が来たら、その日のうちに電話をかけて、お礼を言い、経験を聞き、その経験がどこで生きるのかを伝える。応募直後の数分間で、面接の約束を大切な約束に変えることができます。社長が電話できないなら、代わりにかける担当と話す内容を、先に決めておいてください。
求人にお金をかける前に、応募が来た後の数時間で何をしているのかを、社長自身が見直してほしいのです。
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