労使協定を紙のまま放置し効力を失う、従業員数が少ない会社ほど陥る落とし穴

労使協定を紙のまま放置し効力を失う、従業員数が少ない会社ほど陥る落とし穴

労使協定と聞くと、
「一度作って出しているから大丈夫」
「紙でファイルに綴ってある」
そんな認識のまま止まっている会社は少なくありません。

しかし実務では、
労使協定は“放置した瞬間に効力を失う”
という落とし穴があります。

特に、管理部門が最小限で回っている会社ほど、
この問題に気づかないままリスクを抱えがちです。


1. 労使協定は「作っただけ」では意味がない

36協定をはじめとする労使協定は、

  • 作成する
  • 労使で締結する
  • 期限内に届け出る

という一連の手続きがそろって、
初めて効力を持ちます。

ところが現場では、

  • 昔作った協定書がそのまま
  • 有効期限が切れている
  • 届出を出したつもりで出ていない

というケースが珍しくありません。

紙で保管していると、
「ある=有効」
と勘違いしやすいのが、この問題の厄介な点です。


2. 36協定を出し忘れると、何が起きるのか

36協定は、
時間外労働・休日労働をさせるための“前提条件です。

これを出し忘れた状態で残業が発生すると、

その時点で、すべての残業が違法

という扱いになります。

たとえ、

  • 本人が納得している
  • 残業代を払っている
  • 忙しい時期だけだった

としても、関係ありません。


3. 36協定未届出の罰則

36協定を締結・届出せずに時間外労働をさせた場合、
労働基準法違反となります。

具体的には、

  • 6か月以下の懲役
  • または30万円以下の罰金

が科される可能性があります。

実際には、いきなり刑事罰というケースは多くありません。
しかし、

  • 是正勧告
  • 指導履歴の蓄積
  • 再調査

といった形で、
会社にとって大きな負担になります。


4. 労基署の指摘は「入口」にすぎない

労働基準監督署の調査で、
「今回は指導で終わった」
と安心してしまう会社もあります。

しかし本当に注意すべきなのは、

労働者や退職者が、弁護士を通じて動いた場合

です。

36協定が無効だった期間の残業は、
違法残業として扱われます。

結果として、

  • 未払残業代の請求
  • 付加金の請求
  • 数年分の遡及請求

につながるリスクがあります。


5. なぜ従業員数が少ない会社ほど起きやすいのか

この問題は、
規模が小さい会社ほど起きやすい傾向があります。

理由はシンプルで、

  • 専任の労務担当がいない
  • 総務・経理が兼務している
  • 期限管理が属人化している

ためです。

「去年やったから今年も大丈夫」
「前任者がやっていたはず」
という認識のまま、
気づいたときには期限切れ、というケースが後を絶ちません。


6. 紙管理が招く“見えないリスク”

労使協定を紙で管理していると、

  • 有効期限が見えない
  • 更新時期に気づかない
  • 最新版か分からない

という問題が起きます。

ファイルに綴じてあることで、
「ちゃんとやっている気になる」
のも危険なポイントです。


7. 実務で最低限やるべきチェックポイント

① 有効期限を把握しているか

36協定は原則1年。自動更新はされません。

② 届出控えが確認できるか

受付印や電子申請の控えがなければ、未届出と同じです。

③ 内容が現状と合っているか

残業時間の上限や対象者が実態とズレていないか確認します。

④ 過半数代表者の選出が適正か

会社が指名していないか、民主的な手続きを踏んでいるか。


まとめ:労使協定は「存在」ではなく「有効性」がすべて

労使協定は、
作ったかどうかではなく、

「今この瞬間に、有効かどうか」

がすべてです。

紙で保管されている協定書は、
安心材料ではなく、
見落としやすいリスクの塊になりがちです。

従業員数が少ない会社ほど、
一度の見落としが
大きなトラブルに直結します。

労使協定は、
「作業」ではなく
継続的な管理対象として扱う。

それが、
労務トラブルを防ぐための、最も現実的な対策です。

筆者プロフィール

泉 正道(Masamichi Izumi)
従業員100名以下の中小企業の伴走支援コンサルタント。C&Pいずみ社会保険労務士法人 代表。
採用定着士、特定社会保険労務士、生成AIアドバイザー。2025年現在、延べ100社以上の中小企業を支援。
採用・定着・労務に関する相談は累計2,000件超。

徹底的な伴走支援で、中小企業の採用定着を「仕組み化」する事を得意とする。
商工会、商工会議所、大手生命保険会社でのセミナー講師など、精力的に「事例」中心の情報発信をし続けている。

姫路播州採用定着研究所
C&P社労士法人 公式サイト
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