「求人広告を出しても応募が来ない」「来てもすぐ辞めてしまう」。そんな悩みを抱える中小企業は少なくありません。
特に地方では、母集団が限られているため、広告費をかけても効果が見えにくいのが現実です。今回は、姫路にある従業員3名の歯科クリニックが、求人広告依存から脱却し、理想の人材採用に成功した事例を紹介します。
支援前の状況:どこかで見た“無難な求人”
このクリニックは、地元の採用コンサル会社に支援を依頼していました。完成した求人原稿は整ってはいるものの、どこかで聞いたことのある表現ばかりでした。
- 「有休消化率100%」
- 「社会保険完備」
- 「アットホームな職場」
しかし実際には、有休消化率は60%程度で、社会保険も加入予定段階。事実とズレた表現が一部含まれていました。
結果として、入社後に「話が違う」と感じてしまう人もおり、1年足らずで退職するケースが続出しました。院の本来の強みや個性が伝わらず、「なんとなく合いそうな人」を採用し続けた結果、離職率が高止まりしていました。
戦略転換:「院の個性に合う人を獲る」
そこで方針を大きく転換しました。目指したのは「たくさん集める採用」ではなく、「院の個性・特徴に合う人を獲る採用」です。
具体的には、オウンドメディアリクルーティングを軸に、自院の価値観・診療方針・院長の想い・働くスタッフの声を丁寧に言語化しました。さらに医療特化型の採用媒体を併用し、ターゲットに届く導線を設計しました。
誇張せず、ウソを盛らず、「合う人だけに刺さればいい」というスタンスに切り替えたのです。
わずか1か月で変化が起きた
オウンドメディア公開後、1か月足らずで4名以上から応募がありました。しかも、その多くが「驚くほど理想に近い人材」でした。
その後、採用が難しいとされる歯科衛生士からも応募があり、内定。理想のチームづくりに着実に近づいています。
数を追わず、合う人を狙う。その戦略が、応募の質を大きく変えました。
院長の声
「採用活動は、自分らしくやっていい」と大きな自信をもらいました。歯科助手だけでなく、採用が難しい歯科衛生士についても、当院にピッタリの人の採用が決まりました。当院に合う人が採用できているので、院の雰囲気もとても良くなっています。
求人広告に頼らない採用の本質
この事例が示しているのは、広告費の多寡ではなく、言語化の質と戦略設計が採用成果を左右するということです。
自社の強みを正しく伝える、誇張しない、合う人を明確にする、長期的な採用基盤をつくる。これができれば、広告依存から脱却できます。
まとめ
求人広告に頼る採用は、短期的な打ち手です。一方、オウンドメディアを軸にした採用は、時間はかかりますが、確実に「合う人」を引き寄せます。
今回の姫路の歯科クリニックのように、従業員数が少なくても、戦略を変えれば結果は変わります。採用は、自社らしさを発信する活動です。無難な言葉ではなく、個性を武器にすることが、これからの地方採用の鍵になります。
筆者プロフィール
泉 正道(いずみまさみち)|特定社会保険労務士/採用定着士/生成AIアドバイザー
姫路を拠点に中小企業延べ150社以上へ伴走。採用・定着・労務の相談累計3,000件超(2026年6月現在)。北は福島、南は佐賀まで顧問先があり、全国オンライン対応。
「採用より定着が先」——これが口癖であり、信念。耳が痛くても言い続ける。親に与えてもらった環境や収入を「全て自分の力」と誤解する2代目社長に説教して解約された経験あり。それでも伝え続けるのが私の役目。
支援の軸は制度(ハード)と対話(ソフト)の両輪。就業規則や評価制度を整えるだけでも、研修や面談を繰り返すだけでも、人の問題は解決しない。両方が噛み合って初めて、人が辞めない組織が動き出す。伴走とダメ出しができる社労士。
生成AI支援では「研修を受けた企業の9割が1ヶ月後に何もしていない」という現実に向き合い、経営者のPCを直接触り、当日に課題を解決する「実装型」の伴走を展開。商工会・商工会議所・大手生命保険会社でのセミナー講師としても精力的に活動中。

