姫路の中小企業経営者へ——「国保逃れスキーム」の実態とその後に起きること

姫路の中小企業経営者へ——「国保逃れスキーム」の実態とその後に起きること




「社会保険料を大幅に削減できる」——そういう提案を受けたことはないでしょうか。

近年、一部のコンサルタントや士業が「国保逃れスキーム」と呼ばれる手法を提案するケースが増えています。表向きは「合法的な節約」に見えますが、発覚したときに何が起きるかを正確に理解している経営者はほとんどいません

公認会計士も弁護士も顧問についていながら、このリスクを見落とした会社が実際にあります。本に書いてある法律論なら誰でも言えます。問題は「実際に起きたとき、どういう影響が波及するか」の推論です。今回はその現実を、正確にお伝えします。


目次

  1. 「国保逃れスキーム」とは何か
  2. 社会保険料の実態——2026年度の正確な数字
  3. 発覚したら何が起きるか——法律論ではなく現実論
  4. 従業員負担分の回収という現実問題
  5. 公認会計士・弁護士が顧問でもなぜ見落とすのか
  6. 泉の持論——法的根拠のないスキームには手を出すな
  7. よくある質問
  8. まとめ

「国保逃れスキーム」とは何か

社会保険(健康保険・厚生年金)の適用事業所である会社が、従業員を本来加入すべき社会保険ではなく、国民健康保険・国民年金に加入させ続けるスキームです。

具体的には、法人として社会保険の適用事業所でありながら、従業員を「個人事業主扱い」「業務委託扱い」にする、あるいは実態は社員なのに「役員」「非常勤」として届け出るなどの方法が使われます。

社会保険料は労使折半です。会社と従業員が半分ずつ負担します。従業員を社会保険に加入させなければ、会社負担分がまるごとなくなる——そこに「節約」の動機があります。


社会保険料の実態——2026年度の正確な数字

2026年度(令和8年度)の兵庫県における社会保険料率を正確に確認しておきます。

  • 健康保険(協会けんぽ兵庫県):10.12%(労使折半で各5.06%)
  • 厚生年金保険:18.30%(労使折半で各9.15%)
  • 介護保険(40歳以上):1.62%(労使折半で各0.81%)
  • 子ども・子育て支援金:0.23%(2026年4月より徴収開始)

介護保険対象者(40歳以上)の合計は、30.27%(会社負担+本人負担の合計)。会社が負担する分は約15.1%です。

月給30万円の従業員一人で計算すると、会社負担の社会保険料は月約4.5万円。年間で約54万円。従業員が100人いれば年間約5,400万円になります。

「これだけ削減できる」という数字は確かに魅力的に見えます。だからこそ、このスキームに手を出す会社が出てくる。しかし、発覚したときの代償はさらに大きい


発覚したら何が起きるか——法律論ではなく現実論

「違反が発覚したら、遡って保険料を払えばいい」——そう思っているなら、甘い。実際に何が起きるか、現実の流れを追います。

① 過去2年分(故意の場合)の保険料を一括追徴

通常の時効は2年ですが、故意による未加入・未届けの場合は、より長期間の遡及が求められる場合があります。会社負担分だけでなく、従業員負担分も合わせて一括で追徴されることになります。

② 延滞金が上乗せされる

未納保険料には、年利8.9%(本則)の延滞金が加算されます。2年分の追徴に延滞金が乗れば、負担額は相当な金額になります。

③ 従業員の年金記録の修正

社会保険未加入期間は、従業員の年金記録が空白になっています。加入手続きと保険料追納によってこれを修正する作業が必要です。対象者が多いほど、事務処理は膨大になります。


従業員負担分の回収という現実問題

ここが最も見落とされているリスクです。

社会保険料は労使折半。本来、従業員が負担すべき半分も、会社が立て替えて一括納付することになります。

では、その立て替え分を従業員に請求できるか——これが現実には極めて困難です。

  • 「そんな話は聞いていなかった」と従業員が主張する
  • 給与明細に記載のない控除は同意なしにできない
  • 会社が一方的に給与から差し引けば、賃金全額払いの原則違反になる
  • 既に退職した従業員への請求はさらに困難

結果、従業員負担分も含めて会社が全額を被ることになる可能性が高い。「節約したはず」の金額の何倍もの損失が一気に生じます。

公認会計士や弁護士がこのリスクを見落とすのは、本に書かれた法律論は知っていても「実際に追徴が発生したとき、従業員との関係でどう動くか」という現場の現実を知らないからです。


公認会計士・弁護士が顧問でもなぜ見落とすのか

「公認会計士も弁護士も顧問についているから大丈夫」と思っている経営者がいます。しかし、このスキームは彼らの専門領域の外にあることが多い。

公認会計士は財務・会計・税務の専門家です。社会保険の適用・算定・実務は専門外です。弁護士は法的な争いが起きてからの専門家であり、社会保険の日常的な運用については必ずしも詳しくありません。

社会保険の実務は、社会保険労務士の専門領域です。誰の言葉でも「合法だ」と言われたら、社労士に確認する習慣を持ってください。


泉の持論——法的根拠のないスキームには手を出すな

最近、「エッグフォワード事件」のように、有名な企業が怪しいスキームに絡んで問題になる事例が出てきています。コンサルタントや士業が「合法」「節税」という言葉で提案するスキームには、必ずリスクが潜んでいます。

私の持論は一貫しています。「うまい話」には手を出すな。法的根拠が明確でないものは、どんなに節約額が大きくても断れ

問題が起きたとき、リスクを負うのは経営者本人です。提案した側は「依頼通りにやった」と言います。経営者が「言われた通りにやった」と言っても通用しない。それが現実です。

「怪しい」と少しでも感じたら、その感覚を大切にしてください。確認のコストは、後からのリスクの百分の一以下です。


よくある質問

Q. 従業員が「国保でいい」と言っています。本人の同意があれば問題ないですか?

A. 問題あります。社会保険の強制適用は、従業員の意思とは関係なく会社に課される義務です。「本人が望んだ」という事実は、会社の義務違反を免責しません。従業員が「国保でいい」と言っていても、要件を満たす場合は社会保険に加入させる義務があります。

Q. 業務委託契約にすれば社会保険の対象外になりますか?

A. 契約の名称ではなく実態で判断されます。実際には指揮命令下に置かれ、業務時間・場所が拘束されているなど、実態が「労働者」であれば、業務委託契約を締結していても社会保険の加入義務が生じます。近年、年金事務所の調査でこのような「偽装業務委託」の摘発が増えています。


まとめ

国保逃れスキームは、短期的なコスト削減に見えても、発覚した際の追徴・延滞金・従業員との関係崩壊によって、節約した額の何倍もの損失をもたらします。

特に恐ろしいのは、「従業員負担分を今さら回収できない」という現実です。この一点だけで、リスクは試算の2倍に膨らみます。

法的根拠のないスキームには手を出さない。怪しいと感じたら専門家に確認する。これが経営者を守る最善の行動です。

「これって違法?」「トラブルになる前に相談したい」——そのタイミングが一番大事です。
姫路の中小企業の現場を知る社労士が、一緒に整理します。

無料相談・お問い合わせ

    必須会社名

    必須氏名

    任意電話番号

    必須メールアドレス

    必須お問い合わせ内容

    上記の内容をご確認の上、ボックスにチェックを入れてから送信してください。

    お電話の方はこちら

    080-3404-6857