OJT担当に選ばれた社員から辞めていく|姫路の採用定着士が伝える、「教え方」を教えない会社で教育係が潰れる理由

OJT担当に選ばれた社員から辞めていく|姫路の採用定着士が伝える、「教え方」を教えない会社で教育係が潰れる理由

新しい人が入ってくると、社長は現場のベテラン社員に「この子の指導、とりあえずやっといて」と声をかけます。任された社員は、自分の仕事を抱えたまま、新人に仕事を教えることになります。そして数か月後、先に辞めていくのは新人ではなく、OJT担当に選ばれたそのベテラン社員です。こういうことが、実は非常に多いのです。

OJT担当が潰れる原因は、本人の力不足ではなく、任せ方にあると私は考えています。

今日はそれについて、私の持論をお話しします。


目次

  1. OJT担当に選ばれた社員が辞めていく会社の共通点
  2. 社長が口だけで任せるから、OJT担当は潰れる
  3. 「教え方を教わっていない」OJT担当者の悲劇
  4. OJT担当を潰さないために会社がやるべきこと
  5. よくある質問
  6. まとめ

OJT担当に選ばれた社員が辞めていく会社の共通点

OJT担当に選ばれるのは、たいてい仕事ができて、真面目で、周りからの信頼も厚い社員です。社長から見れば「この人に任せておけば安心」という人です。任された本人も、頼りにされたことがうれしくて、「分かりました」と引き受けます。

ところが、OJT担当に選ばれた社員が辞めていく会社には、共通点があります。教える役目は渡しているのに、教えるための時間も材料も渡していないことです。教える時間も、教材も、教え方も、会社からは何も用意されていません。あるのは「とりあえずやっといて」という社長の一言だけです。

仕事ができる社員ほど、責任感から「自分がなんとかしなければ」と抱え込みます。自分の仕事は減らないまま、新人の質問に答え、新人のミスを直し、新人が帰ったあとに自分の仕事を片付ける。これが1か月、2か月と続けば、どんなに優秀な社員でも疲れ切ってしまいます。会社は、新人を1人育てるために、一番頼りにしていた社員を1人失うことになります。


社長が口だけで任せるから、OJT担当は潰れる

社長自身は、先輩の背中を見て仕事を覚え、ここまで会社を大きくしてきた方がほとんどです。だからこそ「任せればできるはずだ」と思ってしまいます。では、なぜ頼りにしていた社員が潰れてしまうのか。結局のところ、社長が「とりあえずやっといて」と言うだけだからです。口だけで任せているのです。

「やっといて」と言われても、OJT担当には、いつ、何から、どこまで、どうやって教えればいいのかが分かりません。自分の仕事で手一杯なのに、教える時間をどうひねり出すかも、自分で考えるしかありません。そして、新人がなかなか仕事を覚えないと、社長から「なんでできないんだ」と怒られます。やり方を教わっていないのに、できないと怒られる。これでは、どんなに優秀な社員でも続きません。

今は人手が足りず、OJT担当は自分の仕事を減らしてもらえないまま新人を教えていることがほとんどです。「見て覚えろ」で育つのを待つ余裕は、教える側にも新人の側にもありません。


「教え方を教わっていない」OJT担当者の悲劇

では、マニュアルなどの教材を用意すれば解決するかというと、そうではありません。教材は必要です。教材がなければ、OJT担当は教える内容を毎回自分の頭の中から引っぱり出すことになり、教える人によって中身もバラバラになります。ですが、教材だけではダメです。

理由は、OJT担当が新人への教え方を、誰からも教わっていないからです。仕事ができることと、仕事を教えられることは、まったく別の技術です。自分は感覚でできてしまう仕事ほど、言葉にして教えるのは難しいものです。「ここはこう、なんとなく分かるでしょう」では、新人には伝わりません。教材は「何を教えるか」、教え方は「どう教えるか」で、OJT担当にはこの両方が必要です。

昔から「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」という言葉があります。山本五十六の言葉として知られていますが、これは教え方の順番そのものです。見せて、説明して、やらせて、ほめる。この順番を知っているかどうかで、新人の覚え方はまったく変わります。


OJT担当を潰さないために会社がやるべきこと

OJT担当を潰さないために、会社がやるべきことを、ハード(仕組み・ルール)とソフト(日々の対話や声かけ)に分けてお伝えします。

ハード:教えるための道具を会社が用意する

  1. 教える時間を、仕事として確保する:OJT担当の受け持ちを減らす、シフトに「教える時間」を入れるなど、空いた時間で片手間に教える形にしないことです。たとえば新人が入ってから最初の1か月は、OJT担当の担当件数を2割減らす、1日30分は振り返りの時間にする、といった形です。
  2. 教材(マニュアル・チェックリスト)を会社が用意する:何を、いつまでに、どこまでできればよいのかを、紙で示します。「1週間目はここまで、1か月目はここまで」と目安があれば、OJT担当も新人も、今どこにいるのかが分かります。
  3. OJT担当に「教え方」を教える:教え方の研修やロールプレイで、「やって見せる → 言葉で説明する → やらせてみる → できたところをほめる」の型を身につけてもらいます。OJT担当に選んだ時点で、半日でも教え方を学ぶ時間をとるだけで、教える側の不安はずいぶん減ります。

ソフト:OJT担当を1人にしない

  1. 社長が定期的に進み具合を聞き、教えている努力を認める:「新人、どう?」と新人の出来だけを聞くのではなく、「教えてくれてありがとう。困っていることはない?」と、OJT担当本人に目を向けます。
  2. うまくいかないときは責めず、一緒に原因を考える:新人の覚えが遅いときに「なんでできないんだ」と言うのではなく、「どこでつまずいている?」と一緒に考えます。教材が足りないのか、時間が足りないのか、教え方が合っていないのか。原因が分かれば、会社が手を打てます。

大事なのは、先輩社員から新人へのフィードバックの前に、まず社長や上司からOJT担当者への承認、肯定、フィードバックがあることです。これをやらずに「教えなさい」と言われても、続くわけがありません。社長や上司から認められたことも、肯定されたことも、自分の教え方について具体的に言葉をかけてもらったこともないOJT担当が、新人にだけそれをできるはずがないからです。上がやらないから、下もできない。そして同じことが、新人が入るたびに繰り返されます。

逆に言えば、社長や上司が承認、肯定、フィードバックを正しくやれば、OJT担当もそれを新人にできるようになります。新人を育てたいなら、まず教える人を育てることです。


よくある質問

Q. 小さな会社で、OJT担当の仕事を減らす余裕がありません。どうすればいいですか?

A. 仕事を減らすのが難しいときは、せめて「教える時間」を見える形にしてください。たとえば、1日15分だけでも、新人と振り返る時間をシフト表に書き込みます。そのうえで、新人がいる期間は、OJT担当の仕事が多少遅れても責めない、と社長が先に宣言しておくだけでも、OJT担当の気持ちは楽になります。教えることも仕事の一部だと、社長が言葉で認めることが大切です。

Q. OJT担当に向いている社員は、どう選べばいいですか?

A. 新人の話を最後まで聞ける人、自分の仕事を言葉で説明できる人を選ぶのがおすすめです。そのうえで、選んだ理由を本人に伝えてください。「あなたなら、新人の話を最後まで聞いてくれると思ったから」と、なぜその人に任せたのかを伝えるだけで、OJT担当は「押し付けられた」ではなく「任された」と受け止めてくれます。

Q. OJT担当を1人に決めると、その人に負担が集中します。どうすればいいですか?

A. 教える役目を、1人に全部背負わせないことです。たとえば、仕事の手順はOJT担当が教え、困ったときの相談は別の先輩が受ける、というように役割を分けます。OJT担当が休みの日に誰が見るのかも、先に決めておきます。「教えるのはあなた1人の仕事ではない」と、社長が職場全体に伝えておくだけでも、OJT担当は周りに助けを求めやすくなります。


まとめ

OJT担当に選ばれた社員が辞めていくのは、本人の力不足ではありません。社長が「とりあえずやっといて」と口だけで任せ、教える時間も、教材も、教え方も渡さないまま、できないと怒ってしまうからです。

教える時間を仕事として確保し、教材を会社が用意し、OJT担当に教え方を教える。そして社長や上司が、OJT担当への承認、肯定、フィードバックを正しく行い、うまくいかないときは一緒に原因を考える。上がやれば、下もできるようになります。新人が辞めない会社は、教える人が潰れない会社です。

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