2026年9月9日、対話型のAI面接サービス「SHaiN」の導入企業が、累計1,100社を超えたと発表されました。AIが面接官になって応募者と会話し、評価のレポートまで作るサービスです。これまでに延べ22万8,000名を超える人が、人間ではなくAIを相手に面接を受けています。
面接をAIに任せる流れは、大企業でこれからもっと広がっていくと私は見ています。応募が何百、何千と集まる会社にとって、面接官の人数や日程に縛られずに一次面接ができる仕組みは、魅力的に映るはずだからです。
ですが私は、中小企業はAI面接に手を出さないほうがいいと考えています。そして、大企業がAI面接に向かえば向かうほど、中小企業にはチャンスが広がるとも思っています。
今日はそれについて、私の持論をお話しします。
目次
目次
- AI面接・AIヒアリングの主なサービス
- AI面接を案内された学生の51.1%は、受ける意欲が下がる
- AI面接にできるのは、応募者の見極めまで
- 応募者は、面接官がその会社で積んできた経験を見ている
- 大企業のAI面接導入は、中小企業にとってチャンス
- 採用活動でAIを活用できる3つの業務
- 面接で一番大事なのは、承認と傾聴の姿勢
- 面接のロープレを実施している会社が、採用に強い
- よくある質問
- まとめ
AI面接・AIヒアリングの主なサービス
人の話を聞く仕事をAIが引き受けるサービスは、採用面接だけではありません。「AIヒアリング」と呼ばれるものも含めて、実際に出ているサービスをいくつか挙げます。
- SHaiN(タレントアンドアセスメント):AIが面接官になり、応募者と対話する面接サービス。導入は1,100社(2026年7月時点)、受検者は延べ22万8,000名超。使われ方は新卒採用36.5%、中途採用32.4%、アルバイト採用21.1%
- カンリーAI面接(カンリー):店舗のアルバイト・パート採用向け。2024年10月の提供開始時点で、1件500円(税別)、初期費用20万円(税別)
- AIヒアリング/InTake(Asterminds):現場の担当者から業務の手順を聞き取ったり、退職者にインタビューしたりする役を、AIが主に音声で務める
- ホンネミル:退職者に対して、AIが対話で「なぜ辞めるのか」を段階的に深掘りする
- アルサーガ5分面談AI(アルサーガパートナーズ):AIが雑談から入り、音声で従業員と面談する。トリドールが導入
並べてみると、どのサービスも同じことをしています。AIが質問し、相手の答えに合わせて次の質問を変え、最後に記録と分析をまとめる。人の話を聞く仕事のうち、「質問して、記録して、整理する」ところまでは、もうAIが担えるようになっています。
アルバイト採用の面接が1件500円でできると聞けば、心が動く社長もいると思います。今日はこの中から、採用面接に絞って話します。
AI面接を案内された学生の51.1%は、受ける意欲が下がる
では、面接を受ける側はAI面接をどう受け止めているのか。マイナビが2026年4月25日から30日にかけて、2027年3月に卒業予定の大学生・大学院生1,258名に行った「2027年卒 大学生キャリア意向調査4月」に、その答えがあります。
AI面接を受けたことがある学生は、全体の28.2%でした。新卒の就職活動では、すでに4人に1人以上がAIを相手に面接を受けていることになります。
そのうえで、企業からAI面接を案内されたときに、その面接を受ける意欲がどう変わるかを聞いたところ、「変わらない」は42.1%にとどまりました。「下がる」「どちらかと言えば下がる」を合わせると51.1%で、学生の半数は、AI面接と聞いた時点で気持ちが一歩引いています。
会社の側は、面接の手間を減らすつもりで導入します。ところが応募者の側から見ると、「あなたと会うのは、まずAIに任せます」と言われているのと同じです。会社は手間を減らしたつもりでも、応募者は「まず会ってもらえなかった」と受け取っているのです。
大企業なら、半数の意欲が下がっても、残りの応募者だけで十分な人数が集まるかもしれません。ですが姫路には、求人を出しても1か月に1人も応募がない会社がたくさんあります。中小企業は、応募者を選ぶ側である前に、応募者から選ばれる側です。ようやく来てくれた1人に最初に会わせるのがAIだとしたら、その1人の気持ちが下がった分は、どこからも取り返せません。
AI面接にできるのは、応募者の見極めまで
応募者の話に辻褄が合わないところがあるか、経歴を盛っていないか、質問にきちんと答えられるか。応募者が嘘をついていないかを確かめたり、決まった質問を投げて会話を成り立たせたりするだけなら、AI面接官でもできるでしょう。全員に同じ質問をして、評価のレポートまで自動でそろう。面接官が社長1人しかいない会社ほど、魅力的に聞こえると思います。ですが、そこに落とし穴があります。
問題は、それが面接のどこを担っているのか、です。
私は、中小企業の面接は「見極める場」である前に「口説く場」だと考えています。まず口説いて、この会社のファンになってもらう。そのうえで見極める。この順番を、ファン化面接と呼んでいます。いきなり品定めから入ると、良い人ほど他社に流れていくからです。
そもそも、応募してくる人に立派な志望動機があるとは、私は思っていません。家から近かった、条件が合った、たまたま求人を見かけた。入口はその程度で構わないのです。働く理由は、応募者が最初から持ってくるものではなく、面接の場で一緒に見つけにいくものです。
AI面接が得意なのは、見極めのほうです。そして一次面接をAIに任せるということは、口説く前に品定めから入るということで、ファン化面接の順番を最初の一歩で逆にしてしまいます。応募者の働く理由を高めてあげることも、この会社のファンにすることも、AIにはできません。中小企業の面接で本当に勝負が決まるのは、AIが担えないほうの半分です。
応募者は、面接官がその会社で積んできた経験を見ている
なぜAIには、応募者をファンにできないのか。情熱は人間からしか伝わらないからです。
人は、話の内容だけを聞いているわけではありません。今、目の前で話しているその人が、この会社で何を経験してきたのか。仕事で何に悩み、何を乗り越えて、なぜまだこの会社にいるのか。さらに言えば、その人が人生で何を経験してきたのか。応募者はそこを見ています。
たとえば「うちは若い人にどんどん任せる会社です」という同じ一言でも、入社2年目で現場の段取りを任され、手配を間違えて工期を遅らせてしまい、それでも社長から「次も任せる」と言われた職人が自分の話として語るのと、画面の向こうのAIが読み上げるのとでは、応募者の中に残るものがまったく違います。前者は、その人の経験ごと伝わります。後者は、求人票に書いてある文字と変わりません。
生成AIは、何の経験もしていません。その会社で1日も働いたことがなく、現場で汗をかいたことも、お客さんに頭を下げたこともありません。その会社で働いた経験のないロボットが何を言っても、応募者がこの会社で働く理由を見つけるうえでは、何のプラスにもなりません。
10年後、20年後のAIがどうなっているかは、正直に言って分かりません。ですが、少なくとも今のAIには、応募者をこの会社のファンにするための材料が、ひとつもないのです。
大企業のAI面接導入は、中小企業にとってチャンス
何千人もの応募者を、限られた人事担当者でさばかなければならない大企業は、これからAI面接をどんどん導入していきます。そして導入した会社の多くは、数字の上では効率が良く見えるので、AI面接がいいものだと思い込んでいくでしょう。ですが、少なくとも私が考えるファン化面接は、AIでは絶対に実現できません。ここに、中小企業のチャンスがあります。
応募者の立場で想像してみてください。大企業の選考では、スマートフォンに向かってAIの質問に答え、合否の通知を待つ。一方で、ある中小企業に行ってみると、社長が自分の言葉で、この会社で何を経験してきたのか、なぜこの仕事を続けているのかを話してくれて、「あなたのような人に来てほしい」と目を見て伝えてくれる。大企業が面接をAIに任せるほど、人間が本気で口説いてくる会社は、応募者にとって特別な存在になります。
面接で情熱を伝えることには、お金がかかりません。しかも中小企業には、決める人がその場に座っているという強みがあります。大企業がAIに手放していくものを、中小企業は社長自身の手で握っておけばいいのです。
採用活動でAIを活用できる3つの業務
ここまで読んで、「採用にAIを使うな」という話だと受け取った方もいるかもしれません。そうではありません。私が反対しているのは、面接そのものをAIに任せることだけです。面接の手前には、AIを使ったほうがいい仕事が3つあります。
1. 求人原稿のたたき台の作成
求人原稿をゼロから書くのは、中小企業の社長にとって重い仕事です。ほしい人を1人に絞り、その人が今の職場で何に困っていて、次の職場に何を求めているのかをAIに伝えれば、たたき台はすぐに出てきます。そこに、自社の現場で実際に使っている言葉や、一緒に働く社員の様子が浮かぶ話を足していけば、どこの会社にも当てはまる原稿にはなりません。
2. 履歴書・職務経歴書のチェック
応募書類を読み込んで、職歴と応募した仕事のつながりや、書類の中で辻褄が合わないところを洗い出す作業は、AIが得意です。嘘を見抜くだけならAIにもできる、と書いたとおりです。合否をAIに決めさせるのではなく、面接で確かめたい点を洗い出すところまでをAIに手伝ってもらえば、社長は面接の時間を、書類の確認ではなく、応募者の話を聞くことに使えます。
ただし、応募書類は個人情報のかたまりです。氏名や住所、電話番号など、個人が特定できる情報はできるだけ伏せてから入力してください。あわせて、入力した内容がAIの学習に使われない設定になっているかも、使う前に確認しておいてください。
3. 面接で聞く質問の準備
面接の質問を考えるのにも、AIは使えます。応募書類を読んで気になった点を伝え、「この人がうちで働く理由を一緒に見つけるには、どんな順番で何を聞けばいいか」と相談すれば、質問の候補を出してくれます。ただ、AIが出してきた候補の中に、家族構成や出身地のように、本人の適性や能力と関係のないことを聞くものが混ざっていないかは、必ず人の目で確かめてください。
質問を準備するのはAIでも構いません。ですが、その質問を目の前の応募者に投げて、返ってきた答えを受け止めるのは、人間の仕事です。
面接で一番大事なのは、承認と傾聴の姿勢
情熱を伝える、口説く、と書くと、話がうまい社長でなければできないように聞こえるかもしれません。ですが、面接で一番大事なのは、話すことではありません。承認と傾聴の姿勢、つまり、相手の話を聞いてあげることです。
ファン化面接では、最初に面接官が自己開示をします。といっても、長い演説をする必要はありません。次の3つを、自分の言葉で短く話せば十分です。
- なぜこの仕事を始めたのか
- この会社で一番きつかった時期に、何があったのか
- それでも、なぜこの会社で働き続けているのか
そこから先は、聞く時間です。「この仕事のどこに惹かれましたか」「どんな働き方ができたらいいですか」と聞いたら、途中で遮らずに最後まで聞く。答えの中に出てきた言葉を拾って、「そこを大事にしてこられたんですね」と受け止める。自分の口で話したことを、面接官がきちんと受け止めてくれた。その積み重ねの中で、この会社で働く理由が、応募者の中で少しずつ形になっていきます。これが、面接のソフトです。
これは、おしゃべり上手でなくてもできます。丁寧に、情熱を持って聞けば、口下手でも構いません。話のうまい面接官が自社の魅力を一方的に語り続けるより、言葉に詰まりながらでも応募者の話を最後まで聞いてくれる面接官のほうが、応募者の心には残ります。話すのは社長1人でなくてもよく、この会社で経験を積んできた現場の社員が聞き役に入るのもいいと思います。
面接のロープレを実施している会社が、採用に強い
とはいえ、聞く姿勢は、気持ちだけでは身につきません。練習が必要です。
ところが、面接のロールプレイング(ロープレ)を、ほとんどの会社はやっていません。私の感覚で言えば99%の会社が、採用の面接にぶっつけ本番で臨んでいます。
だからこそ、面接のロープレをやっている会社が強いのです。ほとんどの会社がやっていないことを続けるだけで、面接の中身に差がつきます。
やり方は難しくありません。社長と社員で面接官役と応募者役に分かれて、自己開示から聞くところまでを、通しでやってみてください。終わったら、応募者役に「話を遮られたと感じたところはなかったか」「気持ちが前向きになった瞬間はあったか」を聞きます。社長が面接に出られない日に備えて、一次面接に出る社員も一緒に練習しておきます。
練習と合わせて、面接までの段取りも決めておきます。
- 応募が来たら、誰が、いつまでに、どの手段で連絡するか
- 社長の予定表に、面接に使える枠を先に押さえておく
- 面接官役と応募者役に分かれるロープレを、いつ、誰とやるか
面接の日程がなかなか決まらず、2週間先になっているうちに、応募者は他社で話が決まっていきます。練習の予定と面接までの段取りを先に決めておくのが、ハードです。このハードと、面接の場で相手の話を聞いて受け止めるソフト。どちらが欠けても、ファン化面接は回りません。
よくある質問
Q. 応募が多くて、社長が全員と会えません。一次面接だけAIに任せるのもダメですか?
A. おすすめしません。一次面接をAIに任せると、応募者は口説かれる前に品定めされることになります。社長が口説くはずの二次面接にたどり着く前に、気持ちが冷めてしまいます。社長が全員と会えないなら、社長の代わりに、この会社で経験を積んできた社員が一次面接に出てください。AIには語れないその社員自身の経験が、応募者を二次面接までつなぎます。
Q. 話すのが苦手な社長でも、面接で応募者を口説けますか?
A. 話すのが苦手でも大丈夫です。面接で一番大事なのは、話すことではなく、聞くことだからです。自己開示は、なぜこの仕事を始めたのか、一番きつかった時期に何があったのか、それでもなぜ続けているのかを短く話せば十分です。あとは、応募者の話を遮らずに最後まで聞き、出てきた言葉を受け止めてください。流ちょうに話すことなら、AIのほうが得意です。うまく聞けるか不安なら、面接の前に、社員を相手にロープレをしておいてください。
まとめ
AIが面接で担えるのは、質問して、記録して、嘘がないかを確かめるところまでです。応募者の働く理由を高め、この会社のファンにすることは、その会社で経験を積んできた人間にしかできません。情熱は人間からしか伝わらない。だから、大企業がAI面接に向かう今こそ、社長が自分の言葉で口説く中小企業にチャンスがあります。
AIを使うなら、求人原稿のたたき台、応募書類のチェック、面接の質問の準備まで。面接そのものは人がやります。そして面接で一番大事なのは、承認と傾聴の姿勢で、相手の話を聞いてあげることです。口下手でも構いません。ただし練習は必要です。面接のロープレをやっている会社はほとんどないからこそ、続けた会社が勝ちます。
そのうえで、社長自身が本気になって、どうすればこの人がうちで働きたいと思ってくれるのかを、問い続けてほしいのです。
「また辞めた」「応募が来ない」——その悩み、仕組みで解決できます。
姫路の中小企業の採用定着を、一緒に仕組み化しましょう。

