御社の面接、いきなり「志望動機を教えてください」から始めていませんか。面接というと「候補者を見極める場」というイメージが強いですが、中小企業の採用においては、順番が逆です。まず口説いて、ファンになってもらってから、見極める。この順番を間違えると、良い人材ほど他社に流れていきます。
目次
目次
- 面接は「見極める場」より先に「口説く場」
- 面接前のひと手間で「来てもらえる確率」を底上げする
- 面接当日、来る前から「歓迎ムード」を作る
- 面接の流れ①:自己開示・プレゼンテーション・仕事内容の説明
- 面接の流れ②:理解度の確認・逆質問・フィードバック
- 内定後も、ご縁がなかった人も、接点を切らさない
- よくある質問
- まとめ
面接は「見極める場」より先に「口説く場」
株式会社ダトラが転職経験者111人に行った調査では、応募後の面接設定が早かった企業について「志望度が上がった」と答えた人が75.7%にのぼりました。面接そのものの中身だけでなく、そこにたどり着くまでのスピードや、面接という体験全体が、応募者の意思決定に大きく影響しているということです。
バレンタインデーに置き換えるとイメージしやすいかもしれません。いきなり「君は何ができるの?」と品定めから入るのは、義理チョコをもらった程度で「これは違うな」とドヤ顔で振ってしまうようなものです。順番が逆なのです。まずは自分(会社)が本気で口説き、相手から選ばれる存在になる。義理チョコで満足せず、本命チョコをもらいにいくくらいの本気度で臨む会社にしか、本当に良い人材は集まってきません。面接全体も、前半は会社側が話して信頼関係を作る時間、後半は応募者に話してもらい見極める時間、と分けて設計しておくと進行がぶれません。
面接前のひと手間で「来てもらえる確率」を底上げする
面接日程が決まったら、「面接の案内状」を送ることをおすすめしています。人材紹介会社は、これを当たり前にやっています。面接に来てもらえる確率が上がるからです。案内状には、次のような内容を盛り込みます。
- 面接官の自己紹介(できれば写真つき)
- 社長(代表)の自己紹介
- 配属予定先の責任者や、一緒に働くメンバーの雰囲気が伝わる情報
- 当日の面接の流れ
- 面接会場までの経路
「A社からは案内状が届いたけど、B社からは特に連絡がなかった」という場合、応募者はA社の方を丁寧な会社だと感じます。一度作ってしまえば、次の応募者にも使い回せるので、コストパフォーマンスも悪くありません。
面接前日ではなく、2日前の夕方にリマインドの連絡を入れるのも効果的です。1日前だと、もし応募者がダブルブッキングしていた場合に調整の余地がありません。2日前であれば、その後もう一度リマインドを入れる余裕も生まれます。その際、「当日のお飲み物はコーヒーで大丈夫ですか?」と一言添えるだけで、ドタキャン防止になると同時に、「こんなに丁寧な会社があるんだ」という好印象にもつながります。
面接当日、来る前から「歓迎ムード」を作る
応募者にとって、面接会場は初めて訪れる場所です。道に迷う可能性も踏まえ、面接時間の5分前になっても到着していなければ電話を入れるようマニュアル化しておきましょう。面接時間ちょうどではなく5分前にする理由は、遅刻が確定してから電話をすると、「怒られるのが嫌だ」と感じた応募者が電話に出ずそのままドタキャンしてしまうリスクがあるからです。
会場までの案内板やウェルカムボードを用意する、スタッフに事前に「〇時に面接の方が来るので、明るく挨拶をお願いします」と共有しておく、部屋の照明やエアコンを来社前に整えておく。こうした細かい気配りの一つひとつが、応募者の不安をやわらげ、「ここで働くのも悪くなさそうだ」という印象につながります。
待たせてしまう場合は、会社案内のパンフレットを机に置いておくのもおすすめです。緊張している応募者にとって、待ち時間はとても長く感じるものです。「面接までの間に読んでおいてください」と伝え、面接冒頭で「パンフレットを見て感じたことは?」と聞いてみる。それだけで場が和みますし、指示にきちんと従う姿勢があるかどうかも自然に見えてきます。そして、夏なら冷たいお茶、冬ならあたたかいお茶を一杯出す。高級なものである必要はありません。「あなたをお客様として歓迎している」という気持ちが伝わることが大切です。
面接の流れ①:自己開示・プレゼンテーション・仕事内容の説明
面接の前半は、面接官側が主に話す時間だと考えてください。おすすめの流れは次の通りです。
- 自己開示:面接官自身がなぜこの会社で働いているか、今どんなことに向き合っているかを自分の言葉で話す(単なる自己紹介ではなく、人となりを見せる)
- プレゼンテーション:会社の魅力を本気で、情熱を持って伝える。描きたい未来だけでなく、今なぜ人が必要なのか、正直な課題も含めて伝える
- 仕事内容の説明:担当してもらう業務の内容を具体的に伝える
ここで大事なのは、経営者自身が「実はこういう課題があって、だからこそ良い人に来てほしいと思っている」と正直に言えるかどうかです。かっこつけた話だけでは、応募者の心には響きません。
面接の流れ②:理解度の確認・逆質問・フィードバック
仕事内容を説明したら、すぐに理解度を確認します。「今の話、どんな風に感じましたか」「どんな風に貢献できそうなイメージがありますか」と聞くことで、応募者の反応やリアクションを見ることができます。ここでの受け答えの姿勢そのものが、実は最も重要な見極めポイントです。
その後、志望理由や将来の夢を聞きます。応募者本人も、実は「なぜこの会社に応募したか」を明確に言語化できていないことがほとんどです。だからこそ、聞き出した夢や将来像を「だとしたら、今回のこのポジションは、あなたの将来につながるイメージがありますよ」と、今回の仕事に結びつけて話してあげる。それが、応募者自身に「働く理由」を作ってあげるということです。
最後に、面接官からフィードバックを伝えます。「面接をしていて、声のトーンや姿勢がとても良かったと思います。あえて言うなら、こういう部分をこうするともっと良くなると思いますよ」というように。ここまでやる会社は実はそう多くありません。だからこそ「この会社に入ったら、こんな風にちゃんとフィードバックしてくれるんだ」というイメージを持ってもらえます。
内定後も、ご縁がなかった人も、接点を切らさない
内定承諾をもらった後、入社まで時間が空くことがあります。この期間に何もしないでいると、応募者の中で「本当にここで良かったのかな」という迷いが生まれやすくなります。懇親会に誘う、事前に簡単な課題を渡す、入社前に自己紹介シートを作ってもらうといった接点を持ち続けることを「プレオンボーディング」と呼びます。エン・ジャパンが提供する定着支援サービス「HR Onboard」の導入企業50社では、平均離職率が13.6%から5.3%に下がったという結果も報告されています。
厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査」によると、初めて勤務した会社を辞めた理由として「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」が28.5%で最多、次いで「人間関係がよくなかった」が26.4%となっています。面接や内定後のフォローで職場の実態を正直に伝え、信頼関係を積み重ねておくことは、こうしたミスマッチによる早期離職を防ぐ土台にもなります。
今回ご縁がなかった人材紹介会社では「掘り起こし」と呼ばれる作業が日常的に行われています。一度応募してきた人に対し、1ヶ月後、3ヶ月後、半年後、1年後と定期的に「今、お仕事の方はどうですか」と連絡を取るのです。DeNAの創業者・南場智子さんは、「この人に来てほしい」と思った男性を5年かけて口説き続け、一度は他社に入社されながらも接触を絶やさず、5年後に入社してもらったというエピソードがあります。その男性こそ、後にDeNAで『SHOWROOM』を立ち上げた前田裕二さんです。同じことをする必要はありませんが、それくらいの熱量で向き合ってもいいということです。今回ご縁がなかった応募者も、リスト化して定期的に接触を続ければ、いつか転職のタイミングが重なるかもしれません。
よくある質問
Q. 面接は何回やるのが理想ですか?
A. 最低2回をおすすめしています。一次面接には、社長かエース社員、もしくはコミュニケーション能力が抜群に高い人が出ることが望ましいです。誰でもいいわけではなく、応募者に「この人に会ってみたい」と思わせられる人かどうかが重要です。中小企業だからこそ、経営者や看板社員が応募者と直接向き合える距離の近さは強みになります。大企業にはなかなか真似のできない部分です。
Q. 案内状やリマインドまで手が回りません。優先順位をつけるなら?
A. まずはリマインドの一言(2日前の夕方)から始めてみてください。コストも手間もほとんどかからず、ドタキャン防止に直結します。案内状は一度作れば使い回せるので、余裕ができたタイミングで着手するのがおすすめです。
まとめ
面接を「見極めるための質問タイム」だと捉えている限り、良い人材ほど選考の途中で離脱していきます。案内状やリマインド、当日の出迎えといった仕組み(ハード)と、自己開示から始まる本気の対話(ソフト)、その両方が噛み合って初めて、選ばれる会社になります。
「うちの面接、今のままで大丈夫だろうか」と感じたら、ぜひ当社にご相談ください。
出典:株式会社ダトラ「中途採用の面接実態に関する調査」/厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査の概況」/エン・ジャパン「HR Onboard」導入企業データ/泉正道 著「(改訂版)30人以下の中小企業が求人広告なしで定着人材を採用する方法」(2024年6月)
筆者プロフィール
泉 正道(いずみまさみち)|特定社会保険労務士/採用定着士/生成AIアドバイザー
姫路を拠点に中小企業延べ150社以上へ伴走。採用・定着・労務の相談累計3,000件超(2026年7月現在)。北は福島、南は佐賀まで顧問先があり、全国オンライン対応。
「採用より定着が先」——これが口癖であり、信念。耳が痛くても言い続ける。親に与えてもらった環境や収入を「全て自分の力」と誤解する2代目社長に説教して解約された経験あり。それでも伝え続けるのが私の役目。
支援の軸は制度(ハード)と対話(ソフト)の両輪。就業規則や評価制度を整えるだけでも、研修や面談を繰り返すだけでも、人の問題は解決しない。両方が噛み合って初めて、人が辞めない組織が動き出す。伴走とダメ出しができる社労士。
生成AI支援では「研修を受けた企業の9割が1ヶ月後に何もしていない」という現実に向き合い、経営者のPCを直接触り、当日に課題を解決する「実装型」の伴走を展開。商工会・商工会議所・大手生命保険会社でのセミナー講師としても精力的に活動中。

