「なんで給料が上がらないの?」に答えられますか?姫路の中小企業向け賃金説明のコツ

「なんで給料が上がらないの?」に答えられますか?姫路の中小企業向け賃金説明のコツ

2026年6月9日




「なんで給料が上がらないんですか?」

この質問に、あなたはすぐ答えられますか?

「うちは業績が…」「今は厳しくて…」と曖昧に返してしまったり、「上げたいんだけどね」とその場を濁したりしていないでしょうか。

実は、給与への不満で辞めていく社員の多くは、「給料が低い」から辞めるのではありません。「なぜ上がらないのか、説明がない」から辞めるのです。

今日は、賃金の「説明力」と「伝え方」を中心に、採用定着に直結する実践的な内容をお伝えします。制度設計の話にも少し触れますが、まずは「説明できるかどうか」が出発点です。


目次

  1. 「給料が低い」より「説明がない」が辞める理由
  2. 実際の会話例——どう答えれば納得してもらえるか
  3. 説明できる賃金体系を作るために最低限整えること
  4. 参考事例:自己申告制昇給で誰も辞めない会社
  5. まとめ:説明できない賃金は信頼を壊す

「給料が低い」より「説明がない」が辞める理由

退職理由の調査では、「給与への不満」が上位に入ることが多いです。しかし実態を丁寧に掘り下げると、単に金額の問題だけではないことが多い。

社員が本当に感じているのは、こういうことです。

  • 「自分はこれだけ頑張っているのに、なぜ評価されないのかわからない」
  • 「何をすれば給料が上がるのか、基準が見えない」
  • 「聞いても曖昧な答えしか返ってこない」

つまり、問題の本質は「上げない」ことではなく「説明できない」ことにあります。

会社への不信感は、こういう小さな「説明のなさ」の積み重ねで育っていきます。そしてある日、「もうここにいても先が見えない」という結論に至る。それが退職です。


実際の会話例——どう答えれば納得してもらえるか

「給料を上げてほしい」「なぜ上がらないのか」と言われたとき、どう答えるか。いくつかの会話例を見てみましょう。

❌ やってはいけない返し方

  • 「今は会社も厳しいから…」→ 理由になっていない。他の社員も同じ状況だが、なぜ自分だけ上がらないのかへの答えになっていない
  • 「みんなに同じようにしているから」→ 個人の頑張りを無視した回答。モチベーションを下げる
  • 「上げたいとは思っているんだけどね」→ 曖昧すぎる。いつ上がるのか、何をすれば上がるのかが伝わらない

✅ 納得感を生む返し方

「給与の見直しは、〇〇と△△の2点で判断しています。現状、△△の部分がまだ基準に届いていないのが正直なところです。具体的には、〜〜の状態になれば、次の期での昇給対象になります」

ポイントは3つです。

  • 判断基準を明示する(何で評価されているのかを伝える)
  • 現状を正直に伝える(できていること・できていないことを両方言う)
  • 条件を示す(「こうなれば上がる」という道を見せる)

人は、「上がらない」ことより「わからない」ことに不満を感じます。「今はここで、こうなれば上がる」という道筋が見えるだけで、納得感はまったく変わります。


説明できる賃金体系を作るために最低限整えること

では、「説明できる状態」を作るために、最低限何を整えればよいのでしょうか。

① 昇給の基準を言語化する

「社長の胸三寸」では社員は安心できません。「何が評価されるのか」「何点以上でどう変わるのか」を、簡単でもよいので文字に落とす。複雑な人事制度は必要ありません。まず「見えるようにする」ことが大切です。

② 面談の場を設ける

基準を作っても、伝える場がなければ意味がありません。年に1〜2回、「あなたの現状はこうで、次のステップはこうだ」と話す時間を作るだけで、社員の見え方は変わります。

③ ハードとソフトの両輪で考える

制度(ハード面)だけを整えても、上司が傾聴・承認できなければ機能しません。「あなたの頑張りは見ている」という日常のコミュニケーション(ソフト面)があってこそ、制度は生きます。


参考事例:自己申告制昇給で誰も辞めない会社

私の知人に、従業員7名の会社を経営している経営者がいます。この方の昇給の仕組みが非常に面白い。

定期昇給をしていないのです。以前はやっていたそうですが、今は「自己申告制」に切り替えました。

昇給したい社員は自分から申し出る。申し出があれば、「いくら上げてほしいか」「その根拠は何か」を社長が直接聞く。社長が納得すれば昇給する。納得できなければ昇給せず、代わりに「この条件がクリアできたら、いくら上げる」という条件を提示する。

残業はゼロ。年間休日は130日。

結果、ここ5年間、誰も辞めていません。

この仕組みのポイントは、「社員が自分の言葉で根拠を出す」ことを求める点です。言語化することで、社員自身も自分の価値を整理できる。そして社長は「なぜか」をきちんと説明できる。双方に説明責任がある仕組みです。

これが「唯一の正解」ではありません。ただ、「こういう形でうまく回っている会社もある」という選択肢として知っておいてほしいのです。


よくある質問

Q. 評価制度を作ると運用が大変になりませんか?

A. 最初から複雑な制度を作る必要はありません。「何が評価されるのか」「上がる条件は何か」を1枚の紙で説明できる状態から始めてください。シンプルで回せるものが、中小企業には合っています。

Q. 賃金を上げる余裕がないときはどうすればいいですか?

A. 「今は上げられない、その理由はこうだ」と正直に話すことが大切です。曖昧にするより、「次はこの時期に、こうなったら見直す」と伝える方が、社員の信頼を保ちやすい。お金が出なくても、「見ている」「伝える」ことはできます。


まとめ:説明できない賃金は信頼を壊す

賃金の問題は、金額だけの問題ではありません。「説明できるかどうか」が、信頼を作るか壊すかを決めます。

制度がなくてもできることがあります。まず「何で判断しているか」を言葉にする。面談の場を作る。現状と条件を正直に話す。それだけで社員の受け止め方は大きく変わります。

「なんで給料が上がらないの?」と聞かれたとき、自信を持って答えられる状態を作ること——それが第一歩です。

賃金の仕組みや社員への説明の仕方に不安を感じたら、ぜひ当社にご相談ください。一緒に整理します。

筆者プロフィール

泉 正道(いずみまさみち)|特定社会保険労務士/採用定着士/生成AIアドバイザー

姫路を拠点に中小企業延べ150社以上へ伴走。採用・定着・労務の相談累計3,000件超(2026年6月現在)。北は福島、南は佐賀まで顧問先があり、全国オンライン対応。

「採用より定着が先」——これが口癖であり、信念。耳が痛くても言い続ける。親に与えてもらった環境や収入を「全て自分の力」と誤解する2代目社長に説教して解約された経験あり。それでも伝え続けるのが私の役目。

支援の軸は制度(ハード)と対話(ソフト)の両輪。就業規則や評価制度を整えるだけでも、研修や面談を繰り返すだけでも、人の問題は解決しない。両方が噛み合って初めて、人が辞めない組織が動き出す。伴走とダメ出しができる社労士。

生成AI支援では「研修を受けた企業の9割が1ヶ月後に何もしていない」という現実に向き合い、経営者のPCを直接触り、当日に課題を解決する「実装型」の伴走を展開。商工会・商工会議所・大手生命保険会社でのセミナー講師としても精力的に活動中。