内定を出したのに、入社前に「やっぱり辞退します」と言われた——こんな経験をした経営者は少なくないでしょう。
「他社の条件が良かったんだろう」と思いがちですが、それは表面的な理由です。内定辞退が起きる本当の原因の多くは、「内定後に会社側が何もしなかった」ことにあります。
姫路の採用定着士として100社以上の採用支援をしてきた経験から、内定辞退を防ぐための「内定後フォロー」の考え方と実践方法をお伝えします。
目次
目次
- 内定後、候補者の頭の中で起きていること
- 内定辞退が起きやすい3つのパターン
- 内定後〜入社前にやるべき4つのこと
- 「内定後フォロー」を仕組みとして設計する
- ハードとソフトの両輪で辞退を防ぐ
- よくある質問
- まとめ
内定後、候補者の頭の中で起きていること
内定をもらった候補者は、決して安心しているわけではありません。内定通知を受け取った後も、頭の中ではこんなことを考えています。
- 「本当にこの会社でよかったのか」
- 「入ってみて、聞いていた話と違ったらどうしよう」
- 「職場の人たちとうまくやっていけるか不安」
- 「もっと良い会社があるかもしれない」
特に転職活動を並行している候補者は、内定をもらった後も他社の選考を続けていることが多い。「内定をもらった=入社を決めた」ではないのです。
このタイミングで、会社側から何もアクションがなければ、候補者の不安は膨らみ続けます。そして他社から好条件の内定が届いたとき、「やっぱりあちらにします」という判断につながります。
内定辞退が起きやすい3つのパターン
① 内定通知後、入社日まで連絡がない
内定通知書を渡した後、次の連絡が「入社初日の集合場所の案内」だけ——こういうケースがあります。候補者からすると、「本当に歓迎されているのか」「忘れられていないか」という不安が膨らみます。
② 職場や一緒に働く人たちに会う機会がない
面接では社長や採用担当者としか話していない候補者にとって、「実際の職場の雰囲気」は未知のままです。入社前に職場を見たり、チームメンバーと話したりする機会がないと、不安は入社日まで解消されません。
③ 入社後のイメージを持てていない
「入社してからどんな仕事をするのか」「最初の1ヶ月はどう過ごすのか」——こうした情報が何もないと、候補者は漠然とした不安を抱えたまま入社日を迎えます。このギャップが、早期退職の原因にもなります。
内定後〜入社前にやるべき4つのこと
① 内定通知と同時に「歓迎の気持ち」を伝える
内定通知書を渡すだけでなく、「一緒に働けるのを楽しみにしています」という言葉を添えます。メールよりも電話、電話よりも直接の言葉の方が、候補者の心に残ります。「選ばれた」ではなく「迎え入れる」姿勢を最初から示すことが大切です。
② 入社までの間に最低1〜2回は連絡を取る
内定から入社まで1ヶ月以上ある場合は、その間に必ず連絡を入れます。「準備は順調ですか?」「何か不安なことはありますか?」——この一言だけで、候補者は「ちゃんと気にかけてもらえている」と感じます。
③ 入社前に職場を見せる機会を作る
入社前に職場を見学してもらい、一緒に働くメンバーと話す機会を設けます。「この人たちと働くんだ」というイメージが具体化することで、入社への不安が大幅に下がります。
④ 入社後の流れを事前に共有する
入社初日に何が行われるのか、最初の1週間はどんなスケジュールなのか、何を持ってくればいいのか——こうした情報をまとめて事前に渡すだけで、入社初日の不安は大きく軽減されます。
「内定後フォロー」を仕組みとして設計する
内定後フォローを「気が向いたときにやる」では、抜け漏れが起きます。担当者が変わったときにも同じ品質を保つために、仕組みとして設計することが重要です。
- 内定後フォローのチェックリストを作る(いつ・何をするかを明文化)
- 連絡のタイミングと内容をテンプレート化しておく
- 職場見学・顔合わせのタイミングを採用プロセスに組み込む
- 入社前案内書を作っておく(毎回作らなくてすむ)
一度仕組みを作ってしまえば、採用担当者が変わっても同じ品質でフォローができます。これが「採用を安定させる」ということです。
ハードとソフトの両輪で辞退を防ぐ
内定後フォローも、ハード面とソフト面の両方が必要です。
ハード面(フォローの仕組み)
- 内定後フォローのスケジュールとチェックリスト
- 連絡テンプレートと入社前案内書
- 職場見学・顔合わせの設定
ソフト面(候補者への向き合い方)
- 「歓迎している」という気持ちを言葉と行動で伝える
- 候補者の不安を聞き、正直に答える
- 入社後の「一緒にやっていきたい」という気持ちを伝え続ける
チェックリスト通りに連絡しても、事務的な文面だけでは候補者の心は動きません。一方、気持ちだけあっても連絡が抜ければ不安は残ります。仕組みと温かさの両方があって、はじめて「この会社に入りたい」という気持ちが固まります。
よくある質問
Q. 内定辞退された候補者に、理由を聞いてもいいですか?
A. 聞くことをお勧めします。「次の採用に活かしたいので、差し支えなければ教えてください」と丁寧に聞けば、多くの場合は答えてもらえます。「他社の条件が良かった」という答えが返ってきたとしても、その背景に「うちへの不安が残っていた」という理由が潜んでいることが多いです。
Q. 内定を出す人数を増やして辞退に備えるのはどうですか?
A. 辞退を前提とした採用は、根本的な解決になりません。複数内定を出して「どちらかが残れば良い」という発想は、候補者にも伝わります。一人ひとりに丁寧に向き合い、辞退率を下げる方が、採用の質も入社後の定着率も上がります。
まとめ
内定辞退の本当の原因は、「他社の条件」ではなく「内定後のフォロー不足」にあることがほとんどです。内定を出した後に何をするかが、採用の成否を決めます。
「内定辞退が続いている」「内定後のフォローをどう設計すればいいかわからない」という方は、ぜひ当社にご相談ください。
筆者プロフィール
泉 正道(いずみまさみち)|特定社会保険労務士/採用定着士/生成AIアドバイザー
姫路を拠点に中小企業延べ150社以上へ伴走。採用・定着・労務の相談累計3,000件超(2026年6月現在)。北は福島、南は佐賀まで顧問先があり、全国オンライン対応。
「採用より定着が先」——これが口癖であり、信念。耳が痛くても言い続ける。親に与えてもらった環境や収入を「全て自分の力」と誤解する2代目社長に説教して解約された経験あり。それでも伝え続けるのが私の役目。
支援の軸は制度(ハード)と対話(ソフト)の両輪。就業規則や評価制度を整えるだけでも、研修や面談を繰り返すだけでも、人の問題は解決しない。両方が噛み合って初めて、人が辞めない組織が動き出す。伴走とダメ出しができる社労士。
生成AI支援では「研修を受けた企業の9割が1ヶ月後に何もしていない」という現実に向き合い、経営者のPCを直接触り、当日に課題を解決する「実装型」の伴走を展開。商工会・商工会議所・大手生命保険会社でのセミナー講師としても精力的に活動中。

