福岡県議会で報じられている疑惑の核心は、「議長・副議長という役職に就くために、現金が動いたのではないか」というものです。元議長は「就任前に約2,000万円を支払った」と証言し、他の県議からも同様の証言が出ています。役職とお金が結びついてしまう組織は、いったい何が違うのでしょうか。
私は福岡県の出身です。地元の議会でこうした話が出ることは、率直に言って残念に思いますし、だからこそ「なぜこんなことが起きるのか」を自分なりに考えずにはいられません。
今日は、役職や昇進の基準が不透明な組織で何が起きるのか、そして姫路の中小企業がどう備えるべきかをお伝えします。評価制度は、大企業だけのものではありません。
目次
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役職に「お金」が動いてしまう組織の共通点
役職を巡ってお金が動くという話が出てくる組織には、ある共通点があります。それは、「誰が」「どんな基準で」その役職を決めているのかが、外から見えないということです。基準が見えないところには、必ずと言っていいほど「別の力学」が入り込む余地が生まれます。
福岡県議会のケースで問題になっているのも、まさに正副議長という重要なポストの選定プロセスです。プロセスが不透明であればあるほど、金銭であれ、派閥であれ、能力や実績以外の要素が入り込みやすくなります。
興味深いのは、こうした構造は必ずしも「悪意ある人物」だけによって作られるわけではないという点です。最初は些細な人間関係の配慮だったものが、代を重ねるうちに「そういうものだ」という暗黙の慣行に変わり、いつの間にか誰も疑問を持たなくなる。基準がないところに、時間をかけて別の基準が静かに育っていくのです。
中小企業版「ポストとお金」の実態
中小企業で、実際に現金が動くようなあからさまなケースは稀です。しかし、似た構図は形を変えて存在します。お金そのものが動かなくても、「公平さ」が失われるという意味では、本質的に同じ問題です。
- 昇進・昇給が、成果ではなく「社長との距離感」や「飲み会への参加頻度」で決まっている
- 評価基準が存在せず、最終的には経営者の「なんとなくの好み」で決まる
- 役職手当の金額や条件が、対象者ごとにバラバラで、誰も全体像を把握していない
「社長との距離感」で昇進が決まる会社では、実力があっても経営者との接点が少ない社員が正当に評価されず、逆に成果は平凡でも経営者に気に入られている社員が優遇される、という逆転現象が起こります。役職手当がバラバラなケースも同様で、後から入社した社員がふとした拍子に他の社員の待遇を知り、「なぜあの人だけ」という不満に火がつくことは珍しくありません。
これらは違法ではないかもしれませんが、社員から見れば「あの人はなぜ昇進したのか分からない」という不信感につながります。不信感は、優秀な人材ほど敏感に感じ取り、静かに会社を去っていく原因になります。不満を口にして辞めるのではなく、何も言わずに転職先を探し始める。この「静かな離脱」こそが、経営者が最も気づきにくいリスクです。
昇進基準を透明化する4つのポイント
1. 評価項目を「定量」と「定性」の両方で言語化する
売上や達成率といった数字だけでなく、協調性やリーダーシップといった定性面も、できる限り具体的な行動レベルで言語化します。「頑張っている」ではなく「何をどうしたら評価されるのか」を示すことが重要です。定性面は特に、経営者の主観だけに頼ると評価がぶれやすいため、行動例をいくつか挙げておくと運用しやすくなります。
2. 評価プロセスに複数人の目を入れる
経営者一人の判断だけで昇進が決まる状態は、福岡県議会の一部幹部だけでポストが決まっていたとされる構図と、本質的には近いものがあります。複数の管理職の意見を集約する仕組みを作るだけでも、透明性は大きく向上します。
3. 決まった基準は、決まった形で全社員に共有する
基準を作っても、一部の人しか知らなければ意味がありません。就業規則や評価制度の資料として明文化し、誰でも確認できる状態にしておくことが、透明性の最後の仕上げです。
4. 評価結果を、本人にきちんとフィードバックする
基準を作って終わりにせず、実際の評価結果がどう基準に基づいて決まったのかを、本人に説明する場を設けてください。結果だけを伝えて理由を説明しないと、基準があっても「結局よく分からない」という不信感は解消されません。
透明化は「性悪説」ではなく「安心」のためにある
評価基準を明文化しようとすると、「社員を疑っているようで気が引ける」と感じる経営者もいます。しかし、透明化の目的は社員を疑うことではありません。むしろ逆で、基準が見える化されているほど、社員は「頑張れば正当に評価される」と安心して働けます。
福岡県議会のケースのように、基準が見えない組織では、当事者だけでなく周囲の人までもが疑心暗鬼になります。透明性は、不正を防ぐためだけでなく、組織全体の心理的な安全性を高めるためにあるのです。
私が中小企業の評価制度づくりを支援する際、経営者から最初によく聞かれるのが「基準を作ると、逆に社員から突っ込まれやすくなるのでは」という懸念です。しかし実際には逆で、基準がないまま昇進を決めている状態の方が、よほど突っ込まれる余地が大きいのです。基準があれば、「なぜこの評価なのか」に対して、経営者は堂々と説明できます。透明性は、経営者自身を守る盾にもなります。
よくある質問
Q. 評価制度を作る余裕がない小さな会社でも、できることはありますか?
A. 立派な制度を一から作らなくても、まずは「なぜこの人を昇進させたのか」を、経営者自身が説明できる状態にしておくことから始められます。説明できないなら、それは基準が曖昧である証拠です。まずは頭の中にある基準を紙に書き出すところからで十分です。
Q. 評価基準を明文化したら、社員から不満が出てきそうで不安です。
A. 一時的に不満や疑問が出ることはあります。ただし、それは「これまで見えなかったものが見えるようになった」結果であり、悪いことではありません。不満が出た点については、丁寧に説明を重ねることで、かえって信頼が深まるケースが多いです。
Q. 評価基準は、一度作ったらそのまま使い続けていいですか?
A. いいえ、事業内容や組織の成長段階に応じて見直しが必要です。創業期に作った基準が、人数が増えた今の組織に合わなくなっていることはよくあります。年に一度は「今の会社の実態に合っているか」を確認する機会を持つことをおすすめします。
まとめ:見えない基準は、いつか必ず疑われる
福岡県議会の疑惑がどのような結末を迎えるのか、福岡出身の私としては注視を続けたいと思います。ただ、一つ確かなのは、役職を決めるプロセスが見えない組織は、規模の大小を問わず、いつか必ず「なぜあの人が」という疑念にさらされるということです。
姫路の中小企業でも、昇進や役職の基準を今一度言語化し、社員に見える形にしておくことをおすすめします。基準を明文化することは、社員への贈り物でもあります。何を頑張れば認められるのかが分かれば、社員は安心して力を発揮できるからです。見えない基準の上に築かれた信頼は、いつか必ずぐらつきます。
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