入社3ヶ月の落とし穴——「なぜ辞めるの?」と嘆く前に経営者が見直すべきこと、姫路の採用定着士が解説

入社3ヶ月の落とし穴——「なぜ辞めるの?」と嘆く前に経営者が見直すべきこと、姫路の採用定着士が解説

2026年6月26日




入社して3ヶ月——この時期に辞める社員が多い会社があります。「せっかく採用したのに」「なぜ辞めるの?」と嘆く経営者に、私はこう聞きます。「採用する前から、実は間違っていませんでしたか?」

入社3ヶ月での離職は、入社後ではなく採用プロセスの段階ですでに問題が起きていることがほとんどです。「面接でその人をファンにできていなかった」「内定を出す前に条件をきちんと話し合っていなかった」——これが3ヶ月離職の本当の原因です。


目次

  1. 入社3ヶ月の落とし穴——なぜこの時期に辞めるのか
  2. 面接で「ファンにできていない」という根本問題
  3. 内定前の条件面談をやっていない会社が多すぎる
  4. 3ヶ月離職を防ぐための具体的な対策
  5. よくある質問

入社3ヶ月の落とし穴——なぜこの時期に辞めるのか

入社3ヶ月以内の離職者が語る退職理由のトップは「思っていた仕事と違った」「職場環境が合わなかった」。でもこれは表面的な理由です。

本質はこうです。入社前と入社後のギャップが許容範囲を超えた。それだけです。

では、なぜギャップが生まれるのか。2つの原因があります。

  • ①入社前の「期待値」が間違って形成されていた——面接で実態と異なるいいことを言いすぎた、または正直に伝えなかった
  • ②入社後の「フォロー」がなかった——放置・丸投げ・「見て覚えろ」スタイル

①は採用プロセスの問題。②はオンボーディングの問題。どちらも「入社後に辞める」という結果に見えますが、根っこは採用の段階にあります。

特に今回は①について深く話します。多くの会社が②(入社後フォロー)に目を向けますが、そもそも①が間違っていれば、どれだけ入社後を丁寧にしても離職は止まりません。


面接で「ファンにできていない」という根本問題

面接とは何でしょうか。多くの経営者は「候補者を見極める場」と答えます。

正解ですが、半分しか正解じゃない。

面接は同時に、「この会社で働きたい」と候補者に思ってもらう場でもあるのです。採用する側が候補者を評価するだけでなく、候補者が「この会社、いい」と感じて初めて採用は成功します。

「ファンにする」というのは媚を売れということではありません。会社の正直な姿を伝え、ここで働くことのリアルな魅力を語り、候補者の話をちゃんと聞いて、「あなたのことを理解した上で一緒に働きたい」と伝えることです。

ファンになって入社した人は、多少のギャップがあっても「まあ、そういうこともある」と乗り越えられます。でも、「なんとなく条件が合ったから入った」人は、最初の壁でギブアップする。

あなたの面接は、候補者を「ファンにする設計」になっていますか?

  • 候補者が「なぜこの会社を選んだか」をちゃんと聞いていますか?
  • 自社の強みと弱みを正直に伝えていますか?
  • 「こんな人に来てほしい」と明確に語っていますか?
  • 面接後に「この会社にしよう」と思ってもらえる言葉を最後に伝えていますか?

面接が「審査の場」になっている会社は、ファンを作れていません。


内定前の条件面談をやっていない会社が多すぎる

もう一つ、多くの会社が見落としている重要なプロセスがあります。「内定を出す前の条件面談」です。

内定通知書を郵送して終わり、という会社は非常に多い。でもそれだと、候補者は「給与・勤務時間・有給・残業・試用期間の扱い」などについて、入社後に初めて詳細を知ることになります。

「聞けばよかったのに」と思うかもしれませんが、候補者からしたら聞きにくい。「細かいことを言うと落とされるかも」「失礼かも」という心理が働くからです。

だからこそ、内定を出す前に会社側から「条件の確認をしましょう」と場を設ける必要があります。具体的には:

  • 給与・昇給のルールを具体的に説明する
  • 残業の実態(「繁忙期はどのくらいか」)を正直に話す
  • 有給の取りやすさ(実際の運用)を伝える
  • 試用期間中の扱い(給与・社会保険・評価)を明確にする
  • 「入社後に気になること・不安なことはありますか?」と聞く

この面談で「それは思ってたのと違う」となって辞退されることもあります。でもそれは入社前に分かってよかったのです。入社後3ヶ月で辞められるより、はるかにコストが低い。

条件面談は「リスク管理」でもあり、「誠実さのアピール」でもある。こういう会社が信頼されます。


3ヶ月離職を防ぐための具体的な対策

採用プロセスと入社後、両方を整えることが必要です。

採用プロセスのハード面(仕組み):

  • 内定前に必ず条件面談の場を設ける(1〜2時間)
  • 面接官に「ファンにする面接」の設計を共有する
  • 求人票と実態を一致させる(「アットホーム」は禁止ワード)

採用プロセスのソフト面(対話・承認):

  • 面接で「なぜうちを選んだか」「何に不安があるか」を丁寧に聞く
  • 内定通知は書面だけでなく、電話や対面で「一緒に働けるのを楽しみにしています」と伝える
  • 内定〜入社の間に1〜2回、雑談ベースでコンタクトを取る

入社後の対応:

  • 入社1週間・1ヶ月・3ヶ月で必ず面談を行う
  • 「仕事はどう?」だけでなく「入社前に思っていたことと違う点はある?」を必ず聞く
  • ギャップがある場合は放置せず、正直に対話する

3ヶ月離職は防げます。でもそれは入社後だけを頑張っても解決しない。採用プロセスから見直すことが最短ルートです。


よくある質問

Q. 内定前条件面談で辞退者が増えませんか?

A. 正直なところ、増えることはあります。しかし入社後3ヶ月で辞めてもらうより、内定前に辞退してもらった方がコストははるかに小さい。採用費・教育費・引継ぎコストを考えると、早期離職1人のコストは採用費の3〜5倍にもなります。条件面談は「選ぶ側」が誠実に情報を出すことで、長く働ける人に絞れる仕組みです。

Q. 面接で「ファンにする」具体的なセリフを教えてください。

A. 最後の一言が重要です。「本日お話を聞けて、ぜひ一緒に働きたいと思いました。選考結果に関わらず、今日の時間に感謝します」と伝えるだけで印象が全然違います。「採用してやる」という態度より、「一緒に働けることを嬉しく思っている」という姿勢が、ファンを作ります。


まとめ

入社3ヶ月の離職は、入社後の問題ではなく採用プロセスの問題です。面接でファンにできていなかったこと、内定前に条件をきちんと話し合っていなかったこと——この2つが根本原因です。

「また辞めた」が繰り返されているなら、採用のやり方を根本から見直す必要があります。入口を変えれば、出口も変わります。

採用・定着に不安を感じたら、ぜひ当社にご相談ください。採用プロセスの設計から入社後の仕組みまで、一緒に整えていきます。

筆者プロフィール

泉 正道(いずみまさみち)|特定社会保険労務士/採用定着士/生成AIアドバイザー

姫路を拠点に中小企業延べ150社以上へ伴走。採用・定着・労務の相談累計3,000件超(2026年6月現在)。北は福島、南は佐賀まで顧問先があり、全国オンライン対応。

「採用より定着が先」——これが口癖であり、信念。耳が痛くても言い続ける。親に与えてもらった環境や収入を「全て自分の力」と誤解する2代目社長に説教して解約された経験あり。それでも伝え続けるのが私の役目。

支援の軸は制度(ハード)と対話(ソフト)の両輪。就業規則や評価制度を整えるだけでも、研修や面談を繰り返すだけでも、人の問題は解決しない。両方が噛み合って初めて、人が辞めない組織が動き出す。伴走とダメ出しができる社労士。

生成AI支援では「研修を受けた企業の9割が1ヶ月後に何もしていない」という現実に向き合い、経営者のPCを直接触り、当日に課題を解決する「実装型」の伴走を展開。商工会・商工会議所・大手生命保険会社でのセミナー講師としても精力的に活動中。