アルムナイ採用とは?|姫路の採用定着士が伝える、辞めた社員が「また働きたい」と戻ってくる会社の送り出し方

アルムナイ採用とは?|姫路の採用定着士が伝える、辞めた社員が「また働きたい」と戻ってくる会社の送り出し方

先日、ある会社の社長から「前に辞めたスタッフが、また戻ってきたいと言っているんです。受け入れても大丈夫ですか」と相談を受けました。辞めた人が「もう一度ここで働きたい」と言ってくれるのは、会社にとってとてもありがたいことです。

一方で、辞めた人が職場の悪い話を周りに広め、求人を出しても応募が来なくなってしまう会社もあります。私は、この差は、辞めていく社員をどう送り出したかで決まると考えています。

今日はそれについて、私の持論をお話しします。


目次

  1. 辞めた社員が戻ってくる会社と、応募が来なくなる会社
  2. アルムナイ採用とは
  3. 辞めたスタッフが戻ってきて、職場が落ち着いた事例
  4. 辞め方が悪いと、噂が広がり応募が来なくなる
  5. 辞める社員の送り出し方
  6. 出戻り社員を受け入れるときの手続き
  7. よくある質問
  8. まとめ

辞めた社員が戻ってくる会社と、応募が来なくなる会社

社員が辞めると、「辞めた人のことはもう関係ない」と考えてしまいがちです。退職届を受け取り、手続きを済ませ、あとは次の人をどう採るかに頭を切り替える。忙しい中小企業の社長なら、そうなるのも無理はありません。

ですが、辞めた社員との関係は、退職日で終わるわけではありません。辞めた人は、地元で暮らし続け、友人や家族に前の職場の話をします。転職先で「前の会社はこうだった」と話すこともあります。その話が「いい会社だったよ」なのか「あそこはやめておいた方がいい」なのかで、次に応募してくる人の数も、辞めた本人がいつか戻ってくる可能性も変わります。

特に姫路のような地方では、人のつながりが濃く、噂が広がるのも早いものです。辞めた社員は、会社の中を実際に見てきた人として、外で会社の話を聞かれる立場になります。


アルムナイ採用とは

アルムナイ(alumni)は、英語で「卒業生」という意味です。アルムナイ採用とは、一度退職した社員を「会社の卒業生」と考えて、もう一度採用することです。いわゆる「出戻り採用」です。辞めたあとも卒業生としてつながりを保ち、お互いのタイミングが合えばまた一緒に働く、という考え方です。

仕事の中身も社風も分かっている人なので、一から教える手間が少なく、入社してから「思っていたのと違った」というミスマッチも起きにくい。求人広告や紹介会社を使わずに採用できるので、採用費をほとんどかけずに済むことが多いのも利点です。さらに、外の会社を経験したことで、元の会社の良さに気づいて戻ってくる人もいます。

一方で、気をつける点もあります。戻ってきた人が「前はこうだった」と昔のやり方にこだわったり、残っていた社員が「辞めた人のほうが得をしている」と感じたりすることです。


辞めたスタッフが戻ってきて、職場が落ち着いた事例

従業員15人ほどの会社での話です。事務のスタッフが、家庭の事情で退職しました。辞めるときに、会社との間で揉めることはありませんでした。

それから1年ほどたって、本人から「やっぱり戻りたい」と連絡がありました。冒頭の相談は、このときのものです。再入社の手続きは、当社でまとめて対応しました。仕事を覚えている人が戻ったことで、ほかのスタッフの負担が一気に減り、職場が落ち着きました。新しい人を採用していたら、仕事を教えるだけで数か月はかかっていたはずです。

本人が自分から「戻りたい」と連絡できたのは、辞めるときに会社との関係がこじれていなかったからです。「辞めるなんて困る」と責められて辞めていたら、戻りたいと思っても連絡しづらかったでしょう。揉めずに送り出したことが、1年後の再入社につながりました。


辞め方が悪いと、噂が広がり応募が来なくなる

反対の話もあります。ある事業所で、長く勤めている社員が社長にこう言いました。「求人を出しても、噂になっているから応募は来ませんよ」。求人媒体に掲載料を払って募集を出していましたが、実際に応募はほとんどありませんでした。

その事業所では、それまでに何人かの社員が、社長とぶつかった末に辞めていました。辞めた人たちは、辞めたあとで職場のことを周りに話していました。社長は、求人原稿の書き方や媒体の選び方に原因があると考えていました。ですが、応募が来ない大きな原因は、辞めた人たちが外で話していた職場の評判でした。

求人原稿は、会社が自分で書く「いい話」です。一方、辞めた人の話は、求職者から見れば「中にいた人の本当の話」です。求職者が信じるのは、たいてい後者です。辞めるときにこじれると、その影響は辞めた本人1人では終わらず、次の採用にまで長く残ります。


辞める社員の送り出し方

では、辞めていく社員をどう送り出せばいいのか。私は、ハード(仕組み・ルール)とソフト(日々の対話や声かけ)の両輪で考えるようにお伝えしています。

ハード:送り出すための仕組みをつくる

  1. 退職面談で、辞める理由を聞いて記録に残す:引き止めるための面談ではなく、次に同じ理由で人が辞めないための面談にします。本音が出にくいときは、社長ではなく別の人や外部の人が聞く方法もあります。
  2. 「辞めた人でも再入社できる」ことを書面にしておく:再入社のときの細かい条件を、今決める必要はありません。大事なのは、「うちは、一度辞めた人でも再入社できます」ということを、就業規則や社内の案内に書いておくことです。そして、なぜそうするのか、理由もきちんと書いておきます。会社の都合のためではなく、すでに会社のことを分かってくれている人がもう一度入ってくれたほうが、働くみんなのためになる。これが社員に伝わるかどうかが大事です。
  3. 辞めたあとに連絡してよいか、本人の許可を取っておく:辞めたあとの連絡を強制すると、相当嫌がられます。退職する人は、一度気持ちをリセットしたいはずだからです。強制はせずに、「会社でイベントがあったときに、声をかけてもいいかな」「〇〇さんの状況も知りたいから、たまに連絡を取ってもいいですか」と、声をかけてよいかの許可を取っておく。それが一番大事です。

ソフト:最後の関わり方で印象が決まる

  1. お別れの場を、しっかりとつくる:お別れ会でも、朝礼などでのみんなへの挨拶の場でも構いません。みんなの前で、社長が「〇〇さんが辞めることは残念ですが、これまで本当に感謝しています」と伝え、最後に本人から皆さんに一言話してもらう。同僚からも、辞める人へお礼のメッセージや花束を贈る。こうした場を、形だけで済ませずにしっかりとやることです。
  2. 社長は、感謝と「いつでも連絡してください」を伝える:「また一緒に働きたくなったら」という言い方ではなく、まずは本当の感謝を伝えます。そのうえで、「〇〇さんの人生において、当社がもし必要になったときは、遠慮なく連絡してくださいね」と伝える。この一言が、辞めた人が会社を思い出すときの気持ちを変えます。
  3. 辞める理由を責めない、引き止めで揉めない:引き止めること自体は悪くありません。ですが、「今辞められたら困る」「恩を仇で返すのか」と責めてこじれると、その人は戻りにくくなり、周りに悪い話もされやすくなります。

3章の会社と4章の事業所の違いも、社員が辞めるときに会社とこじれたかどうかでした。最後の送り出し方は、辞めた人が外で会社をどう話すかに、そのまま出てきます。


出戻り社員を受け入れるときの手続き

出戻りの社員を受け入れるときは、「前にいた人だから」と手続きを省かないことが大切です。冒頭の会社でも、再入社のときの手続きは当社でまとめて対応しました。主に確認するのは次の4つです。

  1. 雇用契約書(労働条件通知書)を新しく作る:前の契約の続きではなく、新しい雇用です。労働基準法第15条にもとづき、賃金、勤務時間、仕事の内容などを、改めて書面で示します。
  2. 有給休暇の扱いを確認する:労働基準法第39条では、雇い入れの日から6か月継続して勤務し、全労働日の8割以上出勤した人に、10日の有給休暇を付与します(週の所定労働時間が30時間未満で週4日以下の人は、働く日数に応じて付与日数が少なくなります)。退職から再入社まで1年ほど空いている場合は、原則として前の勤続期間は通算されず、再入社の日から数え直します。ただし、継続勤務かどうかは、形式ではなく実態で判断されます(行政通達:昭和63年3月14日付け基発第150号)。退職の手続きをとっていても、すぐに再入社し、実際には働き続けているのと変わらない場合は、前の勤続期間を通算する必要があります。なお、前に勤めていたときに使い残した有給休暇は、退職した時点でなくなります。
  3. 社会保険・雇用保険の加入手続きをする:退職のときに資格を喪失しているので、再入社後の働き方が加入の条件を満たす場合は、改めて資格取得の手続きをします。雇用保険は、前に勤めたときの被保険者番号を使います。
  4. 前の勤続年数をどう扱うかを決めておく:退職金や昇給で、前の勤続年数を通算するかどうかは、法律で一律に決まっているものではなく、就業規則や退職金規程で定めるものです。規程に定めがあればそれに従い、定めがなければ、受け入れる前に規程を整えておきましょう。

特に4つ目は、残っていた社員の不満につながりやすいところです。出戻りの人だけが得をしているように見えないよう、条件は事前に決めて、社員にも説明しておくことをお勧めします。


よくある質問

Q. 辞めた社員を再入社させると、残っている社員が不満を持ちませんか?

A. 何の説明もなく受け入れると、不満が出ることはあります。そのうえで、「戻ってきた人も、残っていた人も、どちらも大事にする」と、社長が社員に言葉で伝えてください。受け入れる理由を社長の口から聞けば、社員も「会社にとって必要な人だから迎えるのだ」と受け止めやすくなります。

Q. 円満に辞めなかった社員でも、アルムナイ採用の対象にしてよいですか?

A. 一律に断る必要はありません。ただし、なぜこじれたのかを振り返ってから判断してください。会社側の対応に原因があったのなら、それを改めたうえで迎えることが、本人にとっても他の社員にとっても信頼につながります。


まとめ

アルムナイ採用とは、一度退職した社員を「卒業生」と考えて、もう一度採用することです。仕事も社風も分かっている人なので、教える手間も採用費も少なく、ミスマッチも起きにくいという良さがあります。

辞めた社員が戻ってくる会社と、噂が広がって応募が来なくなる会社の差は、辞めていく社員をどう送り出したかです。退職面談で理由を聞き、再入社できることを書面で示し、お別れの場で社長とみんなから感謝を伝える。その積み重ねが、出戻りにも、次の採用にもつながります。

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