姫路の特定社労士が解説|パート・有期社員の手当、なんとなく正社員と差をつけていませんか——同一労働同一賃金改正で見直すべき3項目

姫路の特定社労士が解説|パート・有期社員の手当、なんとなく正社員と差をつけていませんか——同一労働同一賃金改正で見直すべき3項目

先日の記事で、2026年10月1日に施行される同一労働同一賃金のガイドライン改正について取り上げました。最高裁判決の積み重ねを踏まえ、「不合理な待遇差」の判断基準がより具体的になる、という内容です。

今回は、その続きです。「では、うちは具体的にどこを見直せばいいのか」。姫路の中小企業経営者から、実際にそう聞かれることが増えてきました。今日は、優先的に見直すべき3つの項目に絞って、具体的にお伝えします。

全部を一気に見直す必要はありません。まずはこの3つから、自社の状況を点検してみてください。読み終えたときに、自社で最初に見直すべき項目が一つでも見えていれば、今日の話は十分です。

姫路のような地域の中小企業では、「うちは大企業じゃないから、そこまで厳密にやらなくても」という声も聞きます。ですが、規模の大小は関係ありません。従業員が10人でも100人でも、パート・有期社員を一人でも雇用していれば、同じ基準で問われます。この前提を踏まえたうえで、具体的に何を見直すべきかを見ていきましょう。


目次

  1. なぜ「なんとなくの差」が生まれるのか
  2. 見直すべき①生活関連手当(家族手当・住宅手当)
  3. 見直すべき②賞与
  4. 見直すべき③慶弔休暇などの福利厚生
  5. 見直しの進め方——3ステップ
  6. よくある質問

なぜ「なんとなくの差」が生まれるのか

姫路の中小企業を見ていると、待遇差の多くは「差別しよう」という意図から生まれたものではありません。創業当初に正社員向けの制度だけを作り、その後パート・有期社員が増えても、制度を見直すタイミングがなかった。それだけのケースがほとんどです。

しかし、意図がなかったことと、説明責任が果たせることは別の話です。今回のガイドライン改正で判断基準が具体化された今こそ、「なんとなく」を「きちんと説明できる状態」に変える機会だと捉えてください。

私が姫路の経営者にいつもお伝えしているのは、「差をなくすこと」がゴールではないということです。ゴールは、差があるなら理由を説明できる状態にすること。そして、説明できない差は、勇気を持って見直すことです。この順番を間違えると、無理に全員を同じ待遇にしようとして、かえって現場に混乱を招きます。


見直すべき①生活関連手当(家族手当・住宅手当)

最も見直しの優先度が高いのが、家族手当や住宅手当といった生活関連の手当です。これらの手当は「生活費の補助」という趣旨で支給されていることが多く、生活費がかかるという事実は、正社員かパートかで変わりません。

これを、姫路のある会社に置き換えて考えてみます。

  • 正社員:扶養家族がいれば月1万円の家族手当を支給
  • パート社員:同じように扶養家族がいても手当なし
  • 担当者に理由を聞いても「制度上、正社員だけの手当なので」としか説明できない

こうしたケースでは、「なぜパート社員には支給しないのか」を、雇用形態以外の理由で説明できるかどうかが問われます。所定労働時間や勤務日数によって支給額に差をつけるといった代替案も含めて、検討の余地があります。

住宅手当も同様です。「持ち家か賃貸か」「世帯主かどうか」といった支給要件を、雇用形態と切り離して設計している会社は、リスクを抑えやすい傾向にあります。逆に「正社員のみ」という一文だけが支給要件になっている場合は、優先的に見直しを検討してください。

見直しの方向性は、大きく2つあります。一つは、パート・有期社員にも同じ基準で手当を広げる方向。もう一つは、手当の趣旨をより明確にして、対象者の範囲を合理的に絞り込む方向です。どちらが正解ということはなく、自社の人件費とのバランスを見ながら判断することになります。


見直すべき②賞与

賞与についても、「正社員には出すが、パート・有期社員には一律で出さない」という運用は、リスクが高くなっています。賞与の趣旨が「会社の業績への貢献に対する報酬」であるならば、貢献度に応じた支給を、雇用形態にかかわらず検討する必要があります。

とはいえ、正社員と同額を支給する必要はありません。責任の範囲や成果への貢献度に応じた金額差は、合理的な理由として認められやすい部分です。重要なのは、「雇用形態だから一律ゼロ」という説明ではなく、貢献度に基づいた説明ができる状態にしておくことです。

姫路のある飲食業の会社では、繁忙期にパート・アルバイトスタッフが正社員以上にシフトへ入り、売上に貢献しているにもかかわらず、賞与は正社員のみという運用が続いていました。こうした実態がある場合、「雇用形態だから」という説明は特に通用しにくくなります。少額でも、貢献度に応じた寸志を検討する余地があります。


見直すべき③慶弔休暇などの福利厚生

意外と見落とされがちなのが、慶弔休暇や特別休暇といった福利厚生です。結婚や身内の不幸といった事情は、雇用形態を問わず誰にでも起こり得るものです。それにもかかわらず、「正社員のみ」と就業規則に明記されている会社は、姫路でも少なくありません。

こうした福利厚生は、待遇差を設ける合理的な理由を見つけにくい項目の一つです。まずは慶弔休暇のような「誰にでも起こり得る事情」への対応から見直すのが、着手しやすい一歩です。

健康診断や休憩室の利用、社内行事への参加といった福利厚生も、同じ視点で点検してみてください。金銭的な負担が小さいものであっても、「正社員だけ」という運用が積み重なると、パート・有期社員から見た会社への信頼感に影響します。制度の見直しは、コストの話であると同時に、現場との信頼関係を築く機会でもあります。

「うちで長く働いてくれているパートさんほど、正社員と同じ扱いをしていない」という状態は、離職の引き金にもなりかねません。採用が難しい今の時代、既に働いてくれている人を大切にする姿勢は、コスト以上の価値を持ちます。


見直しの進め方——3ステップ

見直しは、次の3ステップで進めるのが実務的です。

  • ステップ1:正社員とパート・有期社員の待遇差を一覧化する
  • ステップ2:それぞれの差について、雇用形態以外の理由で説明できるかを確認する
  • ステップ3:説明できない項目から優先順位をつけて、就業規則・賃金規程の改定を検討する

一度に全項目を是正しようとすると、人件費への影響も大きくなり、現実的ではありません。優先順位をつけて、段階的に進めることをおすすめします。

優先順位のつけ方としては、「対象人数が多いもの」「金銭的な負担が小さいもの」「説明できない度合いが高いもの」から着手すると、少ない負担で効果を出しやすくなります。慶弔休暇のような福利厚生は、金銭的負担が小さく着手しやすいため、最初の一歩として選ばれることが多い項目です。


よくある質問

Q. 手当を見直すと、人件費が大きく増えませんか?

A. 増える可能性はあります。ただし、正社員側の手当を一律に引き下げて全体のバランスを取るという選択肢もあり、必ずしも「パート・有期社員への支給額を増やす」だけが解決策ではありません。自社の人件費全体を見ながら、無理のない着地点を探ることが重要です。

Q. 就業規則を変更する場合、パート社員の同意は必要ですか?

A. 就業規則の変更手続きとしては、労働者の過半数代表者の意見聴取と労基署への届出が必要です。ただし、待遇を引き下げる内容を含む場合は、不利益変更のルールにも注意が必要になります。内容によって手続きが変わるため、変更前に確認することをおすすめします。就業規則本体だけでなく、パート・有期社員用の就業規則を別途定めている場合は、そちらとの整合性もあわせて確認してください。


まとめ

同一労働同一賃金の見直しは、生活関連手当、賞与、慶弔休暇などの福利厚生の3項目から着手するのが現実的です。すべてを一気に変える必要はありません。

大切なのは、「なんとなく」を「説明できる状態」に変えていくことです。差をゼロにすることではなく、差がある理由をきちんと言葉にできること。それが、これからの中小企業に求められる姿勢です。

「これって違法?」「トラブルになる前に相談したい」——そのタイミングが一番大事です。姫路の中小企業の現場を知る社労士が、一緒に整理します。