兵庫県の最低賃金が10月1日から1,172円に|姫路の特定社労士が伝える、最低賃金割れは「所定労働時間」と「手当」の見落としで起きる

兵庫県の最低賃金が10月1日から1,172円に|姫路の特定社労士が伝える、最低賃金割れは「所定労働時間」と「手当」の見落としで起きる

2026年10月1日から、兵庫県の最低賃金が1,172円(時間額)になりました。前の1,116円から56円の引き上げで、過去2番目の上げ幅です。しかも最低賃金は、時給1,500円になるまで毎年上がり続けるというのが私の見立てです。

時給で働くパートさんやアルバイトさんは、時給を見ればすぐに分かります。分かりにくいのは月給の社員です。月給を時給に直したことがないまま、最低賃金を下回っていることに気づかない会社があります。

今日は、月給の社員の最低賃金を確認する方法と、見落としやすい「所定労働時間」と「手当」について書きます。


目次

  1. ニュースの概要
  2. 月給の社員は、月給を時給に直して1,172円と比べる
  3. 時給に直す分母は、実際に働いた時間ではなく「所定労働時間」
  4. 最低賃金の計算に入れてよい手当と、入れてはいけない手当
  5. 最低賃金を下回っていたときに、会社がやること
  6. よくある質問
  7. まとめ

ニュースの概要

兵庫県の最低賃金は、2026年10月1日から時間額1,172円に改定されました。これまでの1,116円から56円(5.02%)の引き上げです。時間額での表示に統一されて以降では、昨年の64円に次ぐ大きさです。

最低賃金は、パートさんやアルバイトさんだけに関係する話だと思っている経営者の方が少なくありません。ですが、最低賃金はパートさんやアルバイトさんだけでなく、月給の正社員にも同じように適用されます。会社が最低賃金より低い賃金を払うことは、本人が納得していても、雇用契約書にそう書いてあっても認められません。

時給の社員は、時給を1,172円以上に引き上げれば済みます。一方、月給の社員は、月給のままでは最低賃金と比べられません。月給を時給に直す計算が必要になります。


月給の社員は、月給を時給に直して1,172円と比べる

月給の社員が最低賃金を満たしているかどうかは、月給を時給に直して確認します。計算式はとてもシンプルです。

最低賃金の対象になる賃金 ÷ 1か月の平均所定労働時間 = 時間額

この時間額が1,172円以上であれば、最低賃金を満たしています。1,172円に届かないことを、一般に「最低賃金割れ」と呼びます。確認の手順は次の4つです。

  1. 毎月の賃金から、計算に入れてはいけない手当を除く。残った金額が、最低賃金の対象になる賃金(あとで説明します)
  2. 1か月の平均所定労働時間を求める(あとで説明します)
  3. 1で出した金額を、2で出した時間で割る
  4. 答えを1,172円と比べる

たとえば、次のような月給の社員がいるとします。この会社の1か月の平均所定労働時間は、約173.33時間とします(求め方は次の章で説明します)。

  • 基本給 200,000円
  • 職務手当 10,000円
  • 通勤手当 8,000円

通勤手当は最低賃金の計算に入れてはいけない手当なので、除きます。残る基本給と職務手当の合計210,000円を173.33時間で割ると、時間額は約1,212円です。1,172円を上回っているので、この社員は最低賃金を満たしています。

月給の総額(218,000円)をそのまま割るのではなく、最低賃金の対象になる賃金だけを取り出して割るのがポイントです。


時給に直す分母は、実際に働いた時間ではなく「所定労働時間」

計算式の分母になるのが「所定労働時間」です。所定労働時間とは、会社が就業規則や雇用契約書で決めている、休憩時間を除いた1日の働く時間のことです。

たとえば、始業が9時、終業が18時で、休憩が1時間の会社なら、所定労働時間は8時間です。始業が9時、終業が17時で、休憩が1時間なら7時間です。実際にその日に何時間働いたかは関係ありません。残業をして10時間働いた日があっても、所定労働時間は8時間のままです。残業した時間は所定労働時間には入らず、残業代として別に払うものだからです。

所定労働時間は、法律で決まっている上限(法定労働時間)を超えて決めることはできません。法定労働時間は、原則として1日8時間・1週40時間です(常時10人未満の商業・サービス業など、1週44時間までとされている事業場もあります)。

月給を時給に直すときの分母が、「1か月の平均所定労働時間」です。1日の所定労働時間に、1年間に働く日数をかけて、12か月で割って出します。1年間に働く日数は、365日から年間休日を引いて求めます。

  1. 年間休日が105日の場合、1年間に働く日数は、365日 − 105日 = 260日
  2. 1日の所定労働時間が8時間の場合、1年間の所定労働時間は、260日 × 8時間 = 2,080時間
  3. 12か月で割ると、1か月の平均所定労働時間は、2,080時間 ÷ 12か月 = 約173.33時間

ここで注意してほしいのは、同じ月給でも、所定労働時間が違えば時給が変わることです。手当のない月給18万円の社員を、年間休日が同じ105日の会社で比べてみます。

  • 1日の所定労働時間が8時間の会社:180,000円 ÷ 173.33時間 = 約1,038円(1,172円を下回る)
  • 1日の所定労働時間が7時間の会社:180,000円 ÷ 151.67時間 = 約1,187円(1,172円を上回る)

7時間の会社の151.67時間は、(365日 − 105日)× 7時間 ÷ 12か月で求めた、1か月の平均所定労働時間です。

つまり、所定労働時間を長く設定している会社ほど、最低賃金を下回りやすくなります。「月給は去年と同じだから大丈夫」と考えていると、最低賃金が上がった年に、突然、下回ってしまうことがあります。就業規則と雇用契約書に書いてある所定労働時間を、一度、確認してください。


最低賃金の計算に入れてよい手当と、入れてはいけない手当

月給の中身には、基本給のほかに、いくつかの手当が含まれているのが普通です。最低賃金の計算に入れてよいのは、基本給のように、毎月決まって支払う賃金です。残業代などの割増賃金、通勤手当や家族手当、賞与は、入れてはいけません。

入れてよいのは、基本給のほか、役職手当、職務手当、資格手当、住宅手当などです。一方、最低賃金の計算から除くものは、次の8種類です。

  1. 通勤手当
  2. 家族手当
  3. 精皆勤手当
  4. 時間外労働(残業)に対する割増賃金(固定残業代として払っている金額を含む)
  5. 休日労働に対する割増賃金
  6. 深夜労働(午後10時から午前5時)に対する割増賃金
  7. 結婚手当など、臨時に支払われる賃金
  8. 賞与など、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

特に見落としやすいのが、固定残業代です。固定残業代は毎月決まって払うので、入れてよい賃金のように見えます。ですが、中身は残業をしたときの割増賃金にあたるお金です。月給の総額が大きく見えても、固定残業代は計算に使えません。最低賃金の計算で使えるのは、固定残業代を除いた部分だけです。手当の名前だけでなく、何に対して支払っている手当なのかで判断してください。

たとえば、次のような月給の社員がいるとします。年間休日は105日、1日の所定労働時間は8時間(1か月の平均所定労働時間は約173.33時間)です。

  • 基本給 195,000円
  • 固定残業代 30,000円
  • 通勤手当 8,000円
  • 精皆勤手当 7,000円

月給の総額は240,000円です。240,000円を173.33時間で割ると約1,385円になり、一見、問題なさそうです。ですが、固定残業代と通勤手当、精皆勤手当は最低賃金の計算から除きます。残る基本給195,000円を173.33時間で割ると、時間額は約1,125円です。1,172円を下回っているので、この社員は最低賃金割れです。

この社員の場合、最低賃金を満たすには、対象になる賃金を月額約203,100円以上にする必要があります(1,172円 × 約173.33時間)。足りない金額は、1か月あたり約8,100円です。総額で見ているうちは気づけない差が、手当を除いた瞬間に表に出てきます。


最低賃金を下回っていたときに、会社がやること

計算してみて最低賃金を下回っていた場合は、まず次のことを知っておいてください。最低賃金より低い賃金の約束は、最低賃金に足りない部分が無効になります。雇用契約書に「基本給195,000円」と書いてあっても、最低賃金と同じ額で契約したものとして扱われます。足りなかった分は、会社が社員に支払わなければなりません。

さらに、地域別の最低賃金より低い賃金しか払っていない会社には、最低賃金法で50万円以下の罰金が定められています。労働基準監督署の調査で見つかって慌てる前に、自分の会社で先に確認してください。

下回っていることが分かったときは、次の順番で対応します。

  1. 賃金台帳と雇用契約書で、対象の社員の賃金の内訳と所定労働時間を確認する
  2. 10月1日以降に働いた分の賃金から、最低賃金を満たす金額に引き上げる。すでに支払った賃金に不足があれば、差額を支払う
  3. 賃金規程と雇用契約書を、新しい金額に合わせて書き換える

手当の名前を変えたり、手当を基本給に組み替えたりして、時間額の数字だけ合わせる方法はおすすめしません。賃金の総額を下げたり、手当の趣旨を変えたりするのは、社員の不利益になります。本人の同意が必要になる場合があります。まずは、最低賃金を満たす金額に引き上げることを優先してください。

そして、この確認は今年だけでは終わりません。今年、来年の話ではなく、あと5年、6年、場合によってはもっと先まで、最低賃金は上がり続けると考えたほうがいいでしょう。毎年10月に、月給の社員の時間額を計算し直す。これを会社の決まった仕事にしてください。


よくある質問

Q. 日給で働いている社員は、どうやって最低賃金と比べますか?

A. 日給を、1日の所定労働時間で割って、時間額に直します。たとえば日給が9,000円で、1日の所定労働時間が8時間なら、9,000円 ÷ 8時間で1,125円となり、1,172円を下回ります。日給の場合も、月給と同じように、通勤手当など、計算に入れてはいけない手当を除いてから割ってください。

Q. 月給を変えずに、年間休日や所定労働時間を変えたときは、計算し直す必要がありますか?

A. 計算し直してください。年間休日や1日の所定労働時間を変えると、分母になる1か月の平均所定労働時間が変わるからです。月給を変えずに所定労働時間を短くすれば、時間額は上がります。反対に、年間休日を減らしたり、所定労働時間を長くしたりすると、月給は同じでも時間額が下がり、最低賃金を下回ることがあります。


まとめ

兵庫県の最低賃金は、2026年10月1日から1,172円になりました。月給の社員は、最低賃金の対象になる賃金を1か月の平均所定労働時間で割って時間額を出し、1,172円と比べます。割れる原因は、月給の額そのものよりも、分母の所定労働時間と、計算に入れてはいけない手当にあります。

所定労働時間は、実際に働いた時間ではなく、会社が就業規則や雇用契約書で決めた1日の働く時間です。通勤手当、家族手当、精皆勤手当、固定残業代を含む割増賃金、賞与などは、計算から除きます。総額で見ると問題なさそうでも、手当を除くと最低賃金を下回る社員が、あなたの会社にもいるかもしれません。

毎年10月に、月給の社員の時間額を確認する習慣をつけてください。

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