先日、従業員が30人ほどの製造業の社長さんから、定例会議についての相談を受けました。この社長さんは半年前に、課長3人と月に1回話す場をつくりました。ところが3か月目から、「議題があるときだけ開くことにした」と言います。
理由を聞くと、「課長に『議題はありますか』と聞いても、毎回『特にありません』と返ってくる。議題がないなら、開く意味がないでしょう」とのことでした。私は、この判断に待ったをかけ、「議題が出ないのは、言うことがないのではなく、言いづらいからではないでしょうか」とお伝えしました。「議題がないから開かない」を続けると、社長と課長が腰を据えて話す場そのものが、なくなってしまうからです。
今日は、議題が出ない定例会議を社長がどう変えるべきか、私の持論をお話しします。
目次
目次
- 相談の概要
- 議題を聞くだけでは、議題は出てこない
- 会議の目的は、課長を通じて現場の声を社長が聞く場をつくること
- 議題がなくても開き、社長から毎回問いかける
- 毎回の確認事項を決めて、進み具合は数字で報告してもらう
- 形骸化したらやめる。ただし最低2回は続ける
- よくある質問
- まとめ
相談の概要
この会社の状況は、次のとおりです。
- 従業員30人の製造業で、課長は3人
- 半年前に、社長と課長3人が月1回話す定例会議をつくったこと
- つくった理由は、従業員が社長に意見を言いづらく、社長が注意すると「パワハラだ」と受け取られるおそれがあったこと
- 3か月目から、社長が「議題があるときだけ開く」に変更したこと
- 事前に「議題はありますか」と聞いても、課長からは「特にありません」と返ってくること
- 社長は「言いたいことがあれば、課長から持ってくるはず」と考えていること
この社長は、気づいたことをその都度、課長に直接伝えています。「何かあれば、そのときに言えばいいのだから、わざわざ会議を開かなくても困らない」という感覚です。
一方で、課長の側はどうでしょうか。作業の割り振りや、新人の教え方について、社長に言いたいことはあるのに、「これを言っていいのか」「言ったら、どう思われるのか」と迷っています。社長は「言わないから、ないのだろう」と考え、課長は「言いづらいから、言わない」と考えている。ここにズレがあります。
議題を聞くだけでは、議題は出てこない
課長にとって、社長に意見を言うのは負担の大きいことです。「議題はありますか」と聞かれたとき、課長にとって一番安全な答えは、「ありません」です。議題を出すことは、社長への要望や不満を、自分から口にすることに近いからです。
たとえば、課長の一人が「新人の教育を、私一人に任せきりにしないでほしい」と議題に出したとします。社長が「それは違うと思う」と答えれば、その課長は、自分の意見が否定されたと感じます。次の会議からは、議題を出すのが怖くなります。何も出さなければ、傷つきません。だから、「議題はありますか」と聞くだけでは、議題は出てきません。
さらに、社長が気づいたことをその都度伝えている場合、課長は「言われる側」に回ります。気づいたことは社長から直接伝わるので、課長が会議で話す必要がなくなります。社長は「困っていることがあれば、課長から言ってくるだろう」と待ち、課長は「どうせ社長から先に言われる」と思っています。
ちなみに、私の顧問先を見ていても、週に1回、月に1回、毎日短く、と頻度は違いますが、社長と課長のような現場のリーダーが顔を合わせる場は、多くの会社にあります。議題があるときだけ集まる会社は、珍しいです。
会議の目的は、課長を通じて現場の声を社長が聞く場をつくること
もともと、この会議は何のためにつくられたのでしょうか?従業員は社長に言いづらい。社長も、うかつに注意するとパワハラと受け取られかねない。だから、課長を間に入れて現場の声を聞けるように、社長と課長が月に1回話し合う場をつくりました。この会議は、議題をさばく場というより、課長を通じて現場の声を社長が聞く場だったはずです。
この目的で考えると、「議題がないから開かない」は、本末転倒です。議題が出ない状態こそ、一番困っている状態だからです。言いづらさが原因なのに、場をなくせば、言いづらさだけが残ります。
場がなくなったあと、従業員の不満は消えません。課長同士の雑談の中で大きくなったり、ある日突然、退職の申し出という形で出てきたりしがちです。私が社長から相談を受けるのは、たいてい、退職の申し出が出るほど不満が大きくなってからです。「そんな話は聞いていなかった」と、社長は驚きます。聞いていなかったのは、聞く場を、社長自身がなくしていたからです。
議題がなくても開き、社長から毎回問いかける
議題がない月があっても、会議は開きます。議題がなければ、ないでかまいません。社長から、毎回、課長に問いかけてください。
社長は、毎回の最初に、「どうですか」と聞きます。たとえば、次のように聞きます。
- 「課長のところの若い人から、どんな声が上がっていますか」
- 「課長のみなさん自身は、いま何に困っていますか」
課長にとって、社長に自分から意見を言うのは簡単ではありません。だから、社長が先に水を向ける。「何もないですか」と聞かれた課長は、「ありません」と答えるしかありません。「どうですか」と聞かれれば、答えの幅が広がります。
社長が聞いたあとは、課長の役割です。課長には、聞かれたらしっかり答えてもらいます。「特にありません」で終わらせず、気づいていることを伝えてほしいのです。社長は、答えを聞いて、「なるほど」と受け止めます。課長が話している途中で、「いや、それはね」と遮るのは避けてください。意見を言った人が「言ってよかった」と思えるかどうかで、次の会議の中身が決まります。
毎回の確認事項を決めて、進み具合は数字で報告してもらう
議題が出ない状態は、毎回の確認事項を先に決めておけば避けられます。たとえば、この会社なら、次の4つです。
- 課長が担当している新人教育は、いま、どこまで進んでいるか
- 課長が持っている案件は、誰が何をいつまでにやり、あと何日で終わりそうか
- 課長の部下から社長へ、どんな声が上がっているか
- 課長自身が、いま困っていることは何か
ここで大事なのは、答え方です。1と2のような進み具合は、「なんとなくできています」「順調だと思います」ではなく、数字で報告してもらいます。新人教育なら「予定した10項目のうち6項目が終わっています。進み具合は60%です」。案件なら「Aさんが見積書を今月末までに作る予定で、あと3日で終わる見込みです」。この形で答えてもらえば、社長は遅れに気づけます。
数字で答えるとなると、課長も自分の担当を把握しておかないといけません。社長にも、どこが遅れていて、どこで迷っているかが見えてきます。
ただし、数字で答える1と2は、会議の前にChatworkなどで共有してもらえば足ります。会議の場で話すのは、3と4のような数字にならない部分です。迷っていること、気になっていること、社長に言いづらいことを引き出したいので、数字の報告は会議の前に済ませておきます。
形骸化したらやめる。ただし最低2回は続ける
それでも課長が何も言わなかったら、どうするか。
社長が毎回「どうですか」と聞き、数字の報告も会議の前に済ませ、少なくとも2回続けても課長が何も言わない。会議が形だけになっている。そうであれば、私は、やめるべきだと考えています。集まる時間が、もったいないからです。やめる場合も、課長の声を聞く別の方法(個別の声かけなど)は残してください。
ただし、1回開いて、社長が「次に話すことが分からない」と感じても、そこでやめるのは絶対にNGだと考えています。少なくとも2回は開きます。1回目は、課長も、何を話していいのか分かりません。社長が「どうですか」と聞く習慣ができるまで、時間がかかります。2回目に、社長が1回目の続きを話します。声が出ていれば、その声がどうなったかを伝えます。その声が返ってくれば、「言ったら、何かが変わるかもしれない」と課長は感じ始めます。
それでもやめると決めたときは、やめることと、その理由を、課長にきちんと伝えてください。会議を、何も言わずに開かなくなると、課長は「やはり、聞く気はなかったのだ」と受け取ります。
よくある質問
Q. 課長から議題が出ないときは、会議を開かなくてもよいですか?
A. 開いてください。議題がなければ、社長から「どうですか」と聞く形に変えます。何もない月は、10分で終わってかまいません。
Q. 進み具合を数字で答えさせると、責められているように感じませんか?
A. 責めるためではなく、「なんとなく」を減らすための数字です。遅れていることを数字で言えた課長を、責めずに、まず受け止めてください。遅れを言ったら怒られる、と課長が思うと、次から数字が信用できなくなります。私なら「どこで詰まっているか、一緒に整理しよう」と返します。
Q. 社長が聞いても、課長が何も言わないときは、何回続ければよいですか?
A. 声が出なくても、最低2回は開いてください。声が出たときは、社長が次の回で答えを返してください。返せていれば、次も声が出やすくなります。2回開いても何も出ず、会議が完全に形だけになっているなら、やめる理由を伝えたうえで、やめてかまいません。
まとめ
「議題があるときだけ開く」会議は、議題が出ないまま、いずれ開かれなくなります。課長は社長に言いづらいから、議題が出ません。議題がない月こそ、社長から「どうですか」と聞く場が必要です。
- 議題がなくても会議は開き、社長から毎回「どうですか」と聞く
- 毎回の確認事項を決め、進み具合は数字で答えてもらう
- 数字で伝えられる報告は会議の前にChatworkなどで共有し、会議では顔を合わせて話すべきことだけを話す
- 形だけになったらやめる。ただし、少なくとも2回は続ける
会議をなくしても、従業員の不満はなくなりません。社長から見えなくなるだけです。いま、あなたの会社の定例会議で、課長や、その向こうにいる従業員の声は、社長に届いているでしょうか。一度、振り返ってみてください。
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