セブン-イレブンが全国の加盟店に警告文を出した、というニュースが話題になっています。一部の店舗で、オーナーや従業員が人気キャラクターの限定商品を発売前に抜き取り、転売サイトに流していた、というものです。
「モラルがない」と怒る声で溢れていますが、私はこのニュースを他人事だとは思っていません。なぜなら、これはどんな中小企業にも起こりうる「構造」の問題だからです。この記事では、セブン転売問題を入り口に、中小企業の内部不正をどう防ぐかを整理します。
目次
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セブン転売問題で起きていたこと
報道によれば、セブン-イレブン・ジャパンは今月13日付で全国の加盟店に文書を通知しました。「事前に告知した日時前の販売」「店舗関係者による買い占めや転売」「一部のお客さまへの優先販売」といった不適切な事例が、SNSやお客さまからの指摘で散見される、という内容です。
悪質と判断されたケースでは、加盟店契約の中途解約に踏み切った例もあると報じられています。商品を売る側が、店頭に並ぶ前に自分で抜き取り、高値で第三者に流す。やったこと自体を擁護するつもりはありません。
実際に手を染めた人の責任は消えません。事実確認をし、就業規則に照らして対応する。それは大前提です。そのうえで経営者が考えるべきは、「なぜ、その職場でそれが起きたのか」です。
「うちの社員は大丈夫」が一番危ない理由
労務の相談を受けていると、経営者から本当によく聞く言葉があります。「ウチに限って、そんなことをするやつはいない」。その気持ちはよくわかります。ですが、多くの相談を聞いてきた中で、私は一つの結論に近づいています。
人は、性根が悪いから不正をするのではありません。「やれてしまう環境」と「バレなさそうな空気」が揃ったとき、真面目な人でも、ふっと手が出てしまうのです。限定品が目の前にあり、一人で全部を回していて、チェックする人もいない。その条件が揃えば、誘惑は誰にでも忍び寄ります。
「信じるか、疑うか」の二択で考えない
大切なのは、「人を信じるか、疑うか」の二択で考えないことです。人を信じたい気持ちは持ち続けていい。だが同時に、信じている人に悪いことができない仕組みを用意しておく。本気で人を信じるからこそ、その人が魔が差さないよう環境を整えるのが、経営者の役目です。
中小企業に潜む「一人で完結する仕事」
コンビニの話だと他人事に聞こえるかもしれません。ですが、これはどの会社にもある光景です。
- 経理を一人の社員に丸ごと任せ、通帳もハンコも本人が管理している
- 仕入れの担当者が、発注も検品も支払いも一人で完結している
- 現場の売上金を、その日の担当が一人で数えて入金している
- 在庫の棚卸しを、いつも同じ人が一人でやっている
これらは真面目な人が回している限り、何も起きません。ですが「一人で完結し、誰もチェックしない」という一点で、セブンの店舗と構造はまったく同じです。そしてこういう仕事ほど、「あの人は昔から信頼できる人だから」で放置されがちです。
ハードとソフトの両輪で防ぐ内部不正対策
では、チェック体制さえ作ればいいのか。そうとも言い切れません。ルールで縛り、疑いの目で監視する職場は息が詰まり、真面目な人ほど気持ちが冷えていきます。だから私は、いつもハード(仕組み)とソフト(対話)の両輪で考えます。
ハード(仕組み)でできること
- 一人で完結させず、二人以上の目が入る流れを作る
- 限定品や現金など、誘惑の強いものほどルールを明文化する
- 就業規則に、私的利用の禁止と懲戒事由をきちんと書いておく
ソフト(対話)でできること
- なぜそのルールがあるのかを、疑いではなく「あなたを守るため」と伝える
- 普段から、ありがとうと承認が飛び交う関係を作っておく
- 困ったとき、相談できる相手が社内にいる状態にしておく
仕組みは、魔が差す前に手を止めさせます。対話は、そもそも魔が差しにくい心をつくります。どちらか片方だけでは、必ずどこかが漏れます。両方が噛み合って初めて、不正は起きにくくなります。
よくある質問
Q. 就業規則に「私的利用の禁止」と書いていないと、懲戒できないのですか?
A. 懲戒処分には、就業規則に懲戒の種類と事由が定められていることが前提になります。記載が曖昧だと、いざというときに処分が難しくなったり、後から争われたりします。平時のうちに条文を点検しておくことが大切です。
Q. 社員を疑うようで、チェック体制を作るのに抵抗があります。
A. その感覚は大切です。だからこそ「あなたを疑っている」ではなく「あなたが要らぬ疑いをかけられないように」と伝えます。ダブルチェックは、担当者自身を守る仕組みでもあります。
まとめ
セブンの件を「一部の心ない店員のせい」で片付けた瞬間に、自分の会社の中にある同じ構造は見えなくなります。あなたの会社にも、「あの人だから大丈夫」で止まっている仕事はないでしょうか。
人を信じる気持ちと、人を守る仕組みは両立できます。就業規則の服務規律や業務のチェック体制を、一度点検してみませんか。自社だけで判断が難しいと感じたら、採用・定着・労務を「仕組み化」する私たちが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。

