「うちも若い子がまた辞めた」「最近の若者はすぐ辞める」——経営者の口からそんな言葉を聞くことが、今もまだあります。でも、ちょっと待ってください。それ、本当にそうですか?
2026年6月19日、ITmediaビジネスオンラインが興味深い調査結果を報じました。「今の会社で働き続けたい」と答えた新入社員が66.3%に達し、調査開始以来過去最多を更新したというのです(ALL DIFFERENT調べ)。
つまり、新入社員の3人に2人は、むしろ今の会社に居続けたいと思っている。「若者はすぐ辞める」という思い込みは、もうとっくに古いんです。では、なぜ「うちの会社は辞める」のか。そこに向き合わない経営者が、一番危ない。
目次
目次
- 「若者はすぐ辞める」は思い込みだった——データが示す現実
- それでも「うちは辞める」なら、原因はどこにある?
- 「選ばれなかった会社」との格差が静かに広がっている
- 定着率を高める「入社後3ヶ月」の過ごし方
- よくある質問
「若者はすぐ辞める」は思い込みだった——データが示す現実
今回の調査(ALL DIFFERENT株式会社、2026年新入社員対象)によると、「今の会社で働き続けたい」と回答した新入社員は66.3%と過去最多。一方、「将来的に転職したい」は12.7%と、コロナ禍の2020年以来の低水準を記録しました。
売り手市場が続く中、就活生は入社先を以前よりもずっと慎重に選んでいます。「なんとなく受けて受かったから入社する」という時代ではなく、企業研究や口コミ、インターンシップを通じて「ここで働きたい」と納得した上で入社する学生が増えているのです。
ウェルビーイング(心身の豊かさ)重視の価値観も影響しています。「給料さえ良ければどこでも」という世代ではない。「この会社で成長できるか」「職場の人間関係は良さそうか」「自分の価値観と合うか」——そこまで見た上で入社している。だからこそ、入社前の期待値が高い分、それが裏切られたときのダメージも大きい。
つまり、「若者はすぐ辞める」のではなく、「期待を裏切った会社から辞める」のが正確な表現です。
それでも「うちは辞める」なら、原因はどこにある?
では、「うちの会社は若者がすぐ辞める」と感じている経営者の方に聞きたいのですが——入社した若者が期待していたものを、ちゃんと提供できていましたか?
よくあるパターンを挙げます。
- 面接で「アットホームな職場です」と言ったが、実際には人間関係がギスギスしていた
- 「成長できる環境」と伝えたが、入社後はひたすら雑用をさせた
- 「残業は少ない」と言ったが、実態は月30〜40時間超えが当たり前だった
- 上司から「見て覚えろ」スタイルで教育らしい教育がなかった
- 入社後1ヶ月、誰もちゃんと話しかけてこなかった
どれも「若者の問題」ではありません。全部、会社側の問題です。
私が姫路を中心に多くの中小企業を支援してきた中でよく見るのは、「採用は頑張るが入社後は放置」というパターン。採用に予算と時間を使っても、迎え入れる準備がまったくできていない。これでは辞められても仕方がありません。
さらに根本的な問題を言えば、「面接の段階でその人をファンにできていなかった」ということも大きい。面接とは、会社が候補者を選ぶ場ではなく、候補者に「この会社で働きたい」と思ってもらう場でもあります。そこを間違えている経営者は多い。
「選ばれなかった会社」との格差が静かに広がっている
今回のデータには、もう一つ読み取れることがあります。「働き続けたい」が過去最多ということは、それを実現できている会社が存在するということ。
その会社と、「うちは辞める」という会社の差は、規模でも給料でも業界でもありません。「入社後の関わり方」と「期待値の管理」の差です。
売り手市場の今、学生は情報を持っています。企業の口コミサイト、OBOGへの連絡、SNSでのリアルな声——調べようと思えばいくらでも調べられる時代です。「選ばれる会社」と「選ばれない会社」の格差は、今まさに拡大しています。
そしてこれは採用だけの話ではありません。今いる社員が「友人にこの会社を勧めたいと思うか」——そのくらいのレベルで職場環境を磨いている会社だけが、今後の採用市場で戦えます。
「若者はすぐ辞める」と嘆いている間に、隣の会社が着々と「定着する組織」を作り上げている。気づいたときには手遅れ、ということも十分あり得ます。
定着率を高める「入社後3ヶ月」の過ごし方
定着のカギは、入社後3ヶ月にあります。この期間は「会社への期待」と「現実」のギャップが最大化しやすい時期。ここをどう乗り越えるかで、長期定着できるかどうかが決まります。
ハード面(仕組み)での対応:
- 入社前に1〜3ヶ月間の仕事の流れを明示する「オンボーディングシート」を準備する
- 入社後1週間・1ヶ月・3ヶ月のタイミングで上司または経営者が面談を行う仕組みをつくる
- 「聞ける人」を明確にしておく(誰に何を聞けばいいかが分からない環境は不安のもと)
ソフト面(傾聴・承認)での対応:
- 面談では「大変じゃない?」より「最近どう?何か気になることある?」と開く質問を使う
- 小さなことでも「ありがとう」「よくできてたよ」を言葉にして伝える
- 「この会社に入ってよかった」と思える体験を、意図的に作り出す
仕組みと関わりの両方が揃って初めて、人は「ここにいたい」と思います。どちらか片方では足りない。
「若者はすぐ辞める」という言葉は、もう使わないでください。データはとっくに反証しています。自社を見直すきっかけとして、今回の調査結果を受け取ってほしいと思います。
参考記事:「若者はすぐ辞める」はもう古い? 今の会社で働き続けたい新入社員、6割超で過去最多(ITmedia ビジネスオンライン)
よくある質問
Q. 入社後の面談は、誰が行うべきですか?
A. 理想は直属の上司と、経営者(または幹部)の両方が行うことです。上司との面談は「業務の悩み」を拾い、経営者との面談は「会社への期待・不安」を拾う場として機能します。特に20人以下の小規模な会社では、経営者が直接関わることで「見てもらえている」という安心感が生まれやすいです。
Q. 定着率改善のために、まず何から手をつければいいですか?
A. まずは「なぜ辞めたのか」を把握することです。退職者にヒアリングできていない会社は非常に多い。退職理由が分からなければ、対策の打ちようがありません。退職者アンケートや、退職後に時間を置いてから行う「オフボーディング面談」は、改善に直結する情報を得られる手段です。
まとめ
「若者はすぐ辞める」は過去の話。データが示す通り、今の新入社員の3人に2人は「今の会社で働き続けたい」と思っています。問題は若者ではなく、迎え入れる側の準備と関わり方にあります。
定着のカギは入社後3ヶ月。オンボーディングの仕組みと、傾聴・承認の文化を両方つくることが、離職を防ぐ最短ルートです。
「また辞めた」と感じたら、ぜひ当社にご相談ください。採用の入口から定着の仕組みまで、一緒に整えていきます。
「また辞めた」「応募が来ない」——その悩み、仕組みで解決できます。
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筆者プロフィール
泉 正道(いずみまさみち)|特定社会保険労務士/採用定着士/生成AIアドバイザー
姫路を拠点に中小企業延べ150社以上へ伴走。採用・定着・労務の相談累計3,000件超(2026年6月現在)。北は福島、南は佐賀まで顧問先があり、全国オンライン対応。
「採用より定着が先」——これが口癖であり、信念。耳が痛くても言い続ける。親に与えてもらった環境や収入を「全て自分の力」と誤解する2代目社長に説教して解約された経験あり。それでも伝え続けるのが私の役目。
支援の軸は制度(ハード)と対話(ソフト)の両輪。就業規則や評価制度を整えるだけでも、研修や面談を繰り返すだけでも、人の問題は解決しない。両方が噛み合って初めて、人が辞めない組織が動き出す。伴走とダメ出しができる社労士。
生成AI支援では「研修を受けた企業の9割が1ヶ月後に何もしていない」という現実に向き合い、経営者のPCを直接触り、当日に課題を解決する「実装型」の伴走を展開。商工会・商工会議所・大手生命保険会社でのセミナー講師としても精力的に活動中。

