「うちの社員、ChatGPT使ってるみたいなんやけど、何を入力してるか分からなくて…」
最近、姫路の経営者からこういう相談をよく受けます。
生成AIの普及スピードは想像以上に速い。
気づいたら社員が自由に使っていた、という会社は珍しくありません。
便利なのは間違いない。でも、ルールなしで使い続けるのは、鍵をかけずに金庫を開けておくようなものです。
この記事では、「AI利用規程って何?」という基本から、中小企業がまず取り組むべき第一歩まで、社労士の視点でわかりやすく解説します。
目次
目次
- AI利用規程がない会社で起きていること
- ChatGPT・Gemini・Claude・Copilot、それぞれのリスクの違い
- AI利用規程とは何か——就業規則との違い
- ルールがある会社とない会社、何が違うか
- 今日できる第一歩
- よくある質問
- まとめ
AI利用規程がない会社で起きていること
ルールがない状態では、社員ごとに判断がバラバラになります。
- ある社員は顧客情報をChatGPTに入力している
- 別の社員は「怖いから使わない」とAIを全く触らない
- また別の社員は業務時間中に私的なことにAIを使っている
これが現実です。
誰も悪意はない。でも、「何をしていいか分からない」状態が、思わぬリスクを生むのです。
実際に起きているトラブルとして、こんな事例があります。
- 社員が取引先との契約内容をAIに入力し、情報が学習データになった可能性がある
- AIが生成した文章をそのまま顧客に送り、誤情報でクレームになった
- AIで作った画像が著作権問題を含んでいた
どれも「知らなかった」では済まないリスクです。
ChatGPT・Gemini・Claude・Copilot、それぞれのリスクの違い
「AIってひとくくりに言っても、ツールによって全然違うんですよ」
これはよく経営者に話すことです。
ChatGPT(OpenAI)
最も広く使われているツール。無料版では入力データが学習に使われる可能性がある。有料版(ChatGPT Team・Enterprise)ではオプトアウト設定が可能。社員が個人アカウントの無料版を使っている場合、会社が管理できない。
Gemini(Google)
GoogleのAI。GmailやGoogleドキュメントと連携するため、社内データへのアクセス範囲が広がりやすい。Google Workspaceを使っている会社は特に注意が必要。
Claude(Anthropic)
安全性を重視した設計で知られるAI。ただし、無料版と有料版でデータの扱いが異なる。企業利用にはClaudeのビジネスプランの確認が必要。
Microsoft Copilot
WordやExcel、Teamsと連動するMicrosoft製のAI。Office365を使っている会社で急速に普及中。社内ファイルへのアクセス権限管理が重要になる。
ツールごとにリスクの性質が異なるからこそ、「どのAIをどんな目的で使うか」を会社として定める必要があるのです。
AI利用規程とは何か——就業規則との違い
「AI利用規程」と聞くと、難しそうに感じるかもしれません。
でも本質はシンプル。「うちの会社でのAIの使い方ルール集」です。
就業規則との違いはここにあります。
- 就業規則:労働基準法上の義務。勤務時間・休日・賃金・懲戒など、雇用に関する基本ルールを定めたもの
- AI利用規程:就業規則とは別に定める社内規程。AIの使い方・禁止事項・責任体制などを定めたもの
重要なのは、AI利用規程だけでは懲戒処分できないという点です。
違反を懲戒の対象にするためには、就業規則との連動が必要。
この話は5本目の記事で詳しく解説します。
ルールがある会社とない会社、何が違うか
AI利用規程を整備している会社と、そうでない会社の差は、じわじわと広がっていきます。
- 情報管理の信頼性:取引先や大手企業から「AI利用のルールはありますか?」と聞かれる時代になっています。整備している会社は信頼を得やすい。
- トラブル対応力:何か問題が起きたとき、ルールがある会社は「違反かどうか」を判断できる。ない会社は曖昧なまま。
- 社員の安心感:「これを使っていいの?」という不安がなくなると、社員は安心してAIを活用できる。
ハード(規程という制度)とソフト(社員が納得して使える環境)の両輪が整ってこそ、AIは本当に業務を助ける道具になります。
今日できる第一歩
「規程を作る」と聞くと、ハードルが高く感じるかもしれません。
でも、最初の一歩はもっとシンプルでいい。
- まず実態を把握する:社員が今、どのAIツールをどんな場面で使っているかを確認する
- 使用ツールをリスト化する:ChatGPT・Gemini・Claude・Copilot…社内で使われているものを洗い出す
- 「入力禁止情報」だけでも決める:顧客情報・個人情報・契約内容はAIに入力しない、とアナウンスするだけでもリスクは下がる
完璧な規程を一気に作る必要はありません。「小さく始めて、育てていく」——それが中小企業に合ったやり方です。
よくある質問
Q. 社員数が少ない会社でもAI利用規程は必要ですか?
A. 必要です。むしろ小さい会社ほど、1人の社員の行動が会社全体に影響します。「うちは少人数だから大丈夫」と思っている会社ほど、ルールが曖昧なままになりがちです。まずは1ページの簡易版でも構いません。
Q. AI利用規程は社労士に頼まないと作れませんか?
A. 基本的なものなら自社で作ることもできます。ただし、就業規則との連動や懲戒規定の整備など、労務リスクに関わる部分は専門家のチェックをおすすめします。「作ったつもり」が「機能しない規程」になっているケースは少なくありません。
まとめ
AI利用規程は、AIの使用を禁止するためのものではありません。
社員が安心してAIを使える環境を作るためのものです。
ChatGPT・Gemini・Claude・Copilotなど、ツールによってリスクの性質は異なります。
「何を使っていいか」「何を入力してはいけないか」——この2点を明確にするだけで、会社のリスクは大きく変わります。
ハード(規程)とソフト(社員の納得)の両輪を整えること。
それが、AIをビジネスの武器にする第一歩です。
「AIって結局何から始めればいい?」——その答え、一緒に見つけましょう。
姫路の中小企業の現場に合った生成AI活用を支援します。
筆者プロフィール
泉 正道(いずみまさみち)|特定社会保険労務士/採用定着士/生成AIアドバイザー
姫路を拠点に中小企業延べ150社以上へ伴走。採用・定着・労務の相談累計3,000件超(2026年6月現在)。北は福島、南は佐賀まで顧問先があり、全国オンライン対応。
「採用より定着が先」——これが口癖であり、信念。耳が痛くても言い続ける。親に与えてもらった環境や収入を「全て自分の力」と誤解する2代目社長に説教して解約された経験あり。それでも伝え続けるのが私の役目。
支援の軸は制度(ハード)と対話(ソフト)の両輪。就業規則や評価制度を整えるだけでも、研修や面談を繰り返すだけでも、人の問題は解決しない。両方が噛み合って初めて、人が辞めない組織が動き出す。伴走とダメ出しができる社労士。
生成AI支援では「研修を受けた企業の9割が1ヶ月後に何もしていない」という現実に向き合い、経営者のPCを直接触り、当日に課題を解決する「実装型」の伴走を展開。商工会・商工会議所・大手生命保険会社でのセミナー講師としても精力的に活動中。

