「AI利用規程、一応作りました」——そう言う経営者に内容を見せてもらうと、ほぼ同じ問題が出てきます。
作ったことは素晴らしい。でも、「作っただけの規程」は現場で機能しないのです。
この記事では、よくあるAI利用規程の失敗パターンを5つ挙げます。
「うちは大丈夫」と思いながら読んでみてください。
意外と当てはまるかもしれません。
目次
目次
- NG①:ネットからコピペしただけの規程
- NG②:「禁止」しか書いていない規程
- NG③:IT部門だけで作った規程
- NG④:作りっぱなしで更新していない規程
- NG⑤:就業規則と紐づいていない規程
- よくある質問
- まとめ
NG①:ネットからコピペしただけの規程
検索すればAI利用規程のテンプレートはたくさん出てきます。
それをダウンロードして、会社名だけ変えて配布——これが最も多いパターンです。
何が問題か。
自社の実態と合っていないのです。
製造業と飲食業ではAIの使い方が違う。
社員数3名の会社と50名の会社では管理体制が違う。
「ソースコードを入力しない」という条項は、システム開発会社には必要でも、姫路の食品メーカーには関係ない話かもしれません。
社員が読んで「これ、うちの会社の話じゃないな」と感じた瞬間、その規程は機能しなくなります。
テンプレートを参考にするのは構いません。でも最後は、自社の言葉・自社の事例・自社の実態に合わせて書き直すことが必須です。
NG②:「禁止」しか書いていない規程
「個人情報の入力禁止」「機密情報の入力禁止」「無断使用禁止」……
禁止事項の羅列だけで終わっている規程がよくあります。
これでは社員は困ります。
「じゃあ、何ならいいの?」が分からないからです。
禁止規程は、社員にとって「AIを使うことへの不安」を生みます。
結果として、「怖いから全部使わない」か「ルールを無視して使う」の二択になってしまいます。
規程には「禁止事項」と同時に「利用可能な範囲」を明記することが大切です。
- 使っていいAIツール(会社が承認したもの)
- 使っていい業務の種類(文章作成・調査など)
- 入力していい情報の例
「ここまでならOK」が分かると、社員は安心して活用できます。
NG③:IT部門だけで作った規程
「AIのことだからITに任せた」——この発想で作られた規程は、現場の実態を無視していることが多い。
ITの担当者はシステムリスクは見えても、営業や製造・接客の現場でどうAIが使われているかは見えにくいものです。
規程を作るときに声を聞くべき人は、実は現場の社員です。
- 日常的にどのAIを使っているか
- どんな情報を入力したくなるか
- どこに不安を感じているか
この声を拾わずに作った規程は、現場で「使いにくい」「現実離れしている」と言われて形骸化します。
IT担当者・管理部門・現場の代表者・経営者が一緒に考えることが、実効性ある規程への近道です。
NG④:作りっぱなしで更新していない規程
2023年に作ったAI利用規程を、今もそのまま使っている——そんな会社が実は多い。
生成AIの進化スピードは異常に速い。
2年前には存在しなかったツールが今や当たり前に使われている。
AIエージェント(AIが自律的に動いて業務を代行する)という新しいリスクも出てきました。
作った当時は正しくても、今は時代遅れになっている規程は、むしろリスクです。
「規程がある」という安心感が、見直しを怠らせるからです。
少なくとも半年に一度は規程を見直す仕組みを作ることをおすすめします。
見直しのタイミングとしては、
- 新しいAIツールが社内で使われ始めたとき
- AIに関する法律・ガイドラインが改正されたとき
- 社内でAI関連のトラブルが起きたとき
- 半年ごとの定期レビュー
NG⑤:就業規則と紐づいていない規程
これが最も致命的なNGです。
AI利用規程をしっかり作っても、就業規則と連動していなければ、違反した社員を懲戒処分にできないのです。
懲戒処分には「就業規則に根拠があること」が法的に必要です。
「AI利用規程に違反した場合は就業規則第○条の懲戒規定を適用する」という一文が、両文書をつなぐ重要な橋渡しになります。
この一文がないと、どれだけ悪質な違反があっても「注意するだけ」で終わってしまいます。
逆に言えば、この一文を加えるだけで、規程の抑止力は大きく変わります。
AI利用規程を作るときは、必ず社労士や専門家に就業規則との整合性を確認してもらいましょう。
よくある質問
Q. 既存のAI利用規程を見直したいのですが、どこから手をつければいいですか?
A. まず「就業規則と連動しているか」を確認してください。次に「入力禁止情報が具体的に書かれているか」「利用可能な範囲が明記されているか」をチェックします。この2点を押さえれば、最低限のリスク対策になります。
Q. 社員が規程を守っているかどうか、どうやって確認すればいいですか?
A. 完全な監視は現実的ではありません。それよりも「なぜ守るべきか」を社員が理解している状態を作ることが重要です。定期的な研修や、ヒヤリハット事例の共有など、オープンに話せる文化づくりが、監視より効果的です。
まとめ
「守られる規程」を作るためのポイントを整理します。
- 自社の言葉・実態に合わせて書く(コピペNG)
- 禁止事項と利用可能範囲をセットで書く
- 現場の声を反映する(IT部門だけで作らない)
- 半年ごとに見直す仕組みを作る
- 就業規則と連動させる
ハード(条文)だけでなく、ソフト(社員が納得している状態)の両輪があって初めて、規程は機能します。
「作って終わり」ではなく、「育て続ける規程」を目指してください。
「AIって結局何から始めればいい?」——その答え、一緒に見つけましょう。
姫路の中小企業の現場に合った生成AI活用を支援します。
筆者プロフィール
泉 正道(いずみまさみち)|特定社会保険労務士/採用定着士/生成AIアドバイザー
姫路を拠点に中小企業延べ150社以上へ伴走。採用・定着・労務の相談累計3,000件超(2026年6月現在)。北は福島、南は佐賀まで顧問先があり、全国オンライン対応。
「採用より定着が先」——これが口癖であり、信念。耳が痛くても言い続ける。親に与えてもらった環境や収入を「全て自分の力」と誤解する2代目社長に説教して解約された経験あり。それでも伝え続けるのが私の役目。
支援の軸は制度(ハード)と対話(ソフト)の両輪。就業規則や評価制度を整えるだけでも、研修や面談を繰り返すだけでも、人の問題は解決しない。両方が噛み合って初めて、人が辞めない組織が動き出す。伴走とダメ出しができる社労士。
生成AI支援では「研修を受けた企業の9割が1ヶ月後に何もしていない」という現実に向き合い、経営者のPCを直接触り、当日に課題を解決する「実装型」の伴走を展開。商工会・商工会議所・大手生命保険会社でのセミナー講師としても精力的に活動中。

