「圧迫面接で本性を見極める」——そんな時代は終わりました。
人手不足が深刻な今、面接で強い態度をとれば「あの会社はやばい」とSNSに書かれ、次の採用に響きます。それどころか、不採用にした応募者が取引先の関係者だったというケースも実際にあります。
令和の面接に必要なのは、「ファン化面接」という発想です。採用できてもできなくても、面接を受けた全員が「いい会社だな」と感じて帰っていく。それが、これからの採用で勝ち続けるための基本戦略です。
目次
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面接は「クチコミされる場」である
面接が終わった後、応募者は必ず誰かに話します。
家に帰って家族に「今日の面接さ……」と話す。友達にLINEで「行ってきたよ」と送る。緊張が解けた瞬間、人は誰かに話したくなるものです。そして今の時代、それがSNSに投稿されることもある。
その内容が「あの会社、感じよかった」なのか「なんか威圧的だった」なのかで、次の採用のしやすさが変わります。
特に歯科・介護・建設など資格者が多い業界は、横のつながりが強い。悪評が地元の業界に一気に回ります。「あそこの面接はきつい」という評判が立った瞬間、応募が来なくなる。これは大げさではなく、実際に起きていることです。
だからこそ、「採用でも不採用でも、全員にファンになって帰ってもらう」というスタンスで面接に臨む必要があります。
ファン化面接の流れ——60分のシナリオ
ファン化面接には「型」があります。場当たり的にやっていては、応募者の本音を引き出せません。以下は約60分を想定した流れです。
①アイスブレイク(約3分)
面接は応募者にとって異常な空間です。「全く知らない場所で、知らない人に自分をさらけ出す」——日常ではありえない状況です。まず緊張をほぐすことが先決。「今日は暑かったですね」「駅から迷いませんでしたか?」「お飲み物どうぞ」など、小さな配慮から始めます。
②面接の流れを説明する(約2分)
「今日の面接は60分ほどで、こういう順番で進めます」と伝えるだけで、応募者の安心感が大きく変わります。「うちは面接官も自己紹介をして、お互いのビジョンを語り合う形にしています」と一言添えると、「この会社は違うな」という印象を与えられます。
③面接官の自己紹介・自己開示(約3分)
ここが最大のポイントです。応募者に履歴書から内面まですべてを開示させるのに、面接する側が名前すら言わないのは不公平です。面接官が先に「なぜこの会社にいるのか」「何を目指しているのか」を熱く語る。そうすることで、応募者も本音でビジョンを語ってくれるようになります。
④会社説明・募集の背景(約5〜10分)
会社の理念・社長の考え方・今回募集する背景を伝えます。「なぜ今募集しているのか」「どんな人と一緒に働きたいのか」を正直に伝えることで、応募者の「この会社に合うかどうか」の判断材料になります。
⑤応募者のビジョン・経験の確認(約15〜20分)
「どんな未来を描いているか」「当社でどう貢献できるか」「前職での経験は何か」を聞きます。抽象的な答えには「具体的にはどういうことですか?」と深掘りする。本音を引き出すのが目的です。
⑥ビジョンの共有(合格させたい人のみ)
通過させたい応募者には、最後にもう一度ビジョンの話を持ち出します。「あなたの〇〇という目標、うちなら実現できる環境があります。ぜひ一緒に頑張りましょう」と言い切る。ピークエンドの法則——人は「一番盛り上がった瞬間」と「最後」しか覚えていません。面接の終盤を熱く締めることで、応募者の記憶に残ります。
社長が一次面接に出るべき理由
採用に強い中小企業は、例外なく社長が一次面接に出ています。総務・経理に丸投げしている会社は、採用で負け続けます。
理由はシンプルです。一次面接こそ、応募者に「この会社のビジョン」を直接伝えられる最大のチャンスだからです。社長が直接語ることで、応募者の熱量は変わります。「社長自らが会ってくれた」という体験が、入社後の定着にも影響します。
面接の理想的な構成は、
- 一次面接:社長(または会社で最も信頼できるエース社員)
- 二次面接:配属先の現場責任者・チームメンバー
「社長は忙しいから」という声もよく聞きますが、採用を後回しにした結果、また「人が辞めた→急いで採用→ミスマッチ→また辞めた」の負のループにはまります。社長が採用に関わることは、経営上の最重要投資です。
面接は1回で済ませない
「その場で社長が内定を出す」——この対応はやめてください。
応募者にも家族がいます。配偶者や親に相談したい。その時間なしで「いつから来れる?」と迫るのは、入社後のミスマッチや早期離職の原因になります。
推奨する流れはこうです。
- 一次面接(社長)→「合格です。後日、条件面談を行います」と伝えて終わる
- 二次面接(現場)→終了後に条件面談(給与・入社日の調整)を行う
- 条件面談:「面接で良かった点」を伝え、一緒に働くスタッフを紹介する
「内定」という言葉は法的拘束力を生みます。「選考に合格しました」と伝え、入社条件が確定してから書面で内定通知を出すのが正しい手順です。
面接後のフォローが定着を決める
面接が終わった瞬間、案内役のスタッフが「面接どうでしたか?」と声をかける。東証一部上場企業でも実施している、この「出口フォロー」が定着への第一歩です。
緊張がほぐれた状態の応募者の本音が聞ける唯一のタイミング。「正直どうでしたか?」と聞ける担当者を配置するだけで、辞退率が下がります。
また、在職中の応募者が内定を受け入れた場合は、前職の退職フォローも忘れずに。「退職の仕方がわからない」「引き留められて困っている」という応募者に寄り添うことで、内定辞退を防げます。
よくある質問
Q. 社長が面接するメリットは?
A. 大きく2つあります。1つ目は「会社のビジョンを直接伝えられる」こと。社長が語るビジョンと、担当者が語るビジョンでは応募者への刺さり方が違います。2つ目は「社長と価値観が合う人を採れる」こと。採用は入社後の定着に直結します。社長のビジョンに共感した人が入社してこそ、定着につながります。
Q. アイスブレイクって何をすればいい?
A. 難しく考えなくて大丈夫です。「今日は暑い中お越しいただきありがとうございます」「駅から迷いませんでしたか?」「お飲み物どうぞ」——この3つだけでも十分です。大切なのは「あなたをお客様として歓迎しています」というメッセージが伝わること。他社がやっていないからこそ、それだけで「この会社は違う」と感じてもらえます。
まとめ
面接は「選考の場」であると同時に、「応募者に自社のファンになってもらう場」です。この発想の転換が、採用力を変えます。
今日からできることを3つ挙げます。
- ① 社長が一次面接に出る(総務・経理任せをやめる)
- ② 面接官が先に自己開示する(熱く語ることで応募者も本音を話す)
- ③ 面接後にフォロースタッフが声をかける(出口の配慮が辞退率を下げる)
「採用より定着が先」——これは私の口癖ですが、ファン化面接はその定着の第一歩でもあります。採用面接の質が上がれば、入社後のミスマッチが減り、早期離職も減ります。
「また辞めた」「応募が来ない」——その悩み、仕組みで解決できます。姫路の中小企業の採用定着を、一緒に仕組み化しましょう。
筆者プロフィール
泉 正道(いずみまさみち)|特定社会保険労務士/採用定着士/生成AIアドバイザー
姫路を拠点に中小企業延べ150社以上へ伴走。採用・定着・労務の相談累計3,000件超(2026年6月現在)。北は福島、南は佐賀まで顧問先があり、全国オンライン対応。
「採用より定着が先」——これが口癖であり、信念。耳が痛くても言い続ける。親に与えてもらった環境や収入を「全て自分の力」と誤解する2代目社長に説教して解約された経験あり。それでも伝え続けるのが私の役目。
支援の軸は制度(ハード)と対話(ソフト)の両輪。就業規則や評価制度を整えるだけでも、研修や面談を繰り返すだけでも、人の問題は解決しない。両方が噛み合って初めて、人が辞めない組織が動き出す。伴走とダメ出しができる社労士。
生成AI支援では「研修を受けた企業の9割が1ヶ月後に何もしていない」という現実に向き合い、経営者のPCを直接触り、当日に課題を解決する「実装型」の伴走を展開。商工会・商工会議所・大手生命保険会社でのセミナー講師としても精力的に活動中。

