【姫路の経営者へ】ストレスチェック義務化に備える準備ロードマップ|2028年施行まで何をすべきか

【姫路の経営者へ】ストレスチェック義務化に備える準備ロードマップ|2028年施行まで何をすべきか

2026年6月15日



「2028年まであと2年あるから、まだ大丈夫」——そう思っていると、確実に後手を踏みます。

準備なしに義務化当日を迎えた場合、何が起きるか。担当者が決まっていない。規程がない。誰に相談すればいいかわからない。その状態で「今日からやれ」と言われても、動けません。

この記事では、50人未満の事業場が「今から何を、どの順番で準備すればいいか」を、時系列のロードマップ形式で整理します。難しく考える必要はありません。やることを順番にこなすだけです。


目次

  1. 「2年あれば大丈夫」が一番危ない理由
  2. 準備ロードマップ全体像
  3. フェーズ① 今すぐやること(〜2026年末)
  4. フェーズ② 体制を整える(2027年)
  5. フェーズ③ 試験実施・改善(2027年後半〜)
  6. 準備で一番つまずきやすいポイント
  7. よくある質問
  8. まとめ

「2年あれば大丈夫」が一番危ない理由

2年。長いように聞こえますが、実際の中小企業の現場で考えると、決して余裕ではありません。

経営者は日々の業務で手一杯です。労務担当者がいない会社では、「誰が担当するか」から決めなければなりません。就業規則の改定が必要になれば、社内確認・従業員への説明・労基署への届け出まで手間がかかります。外部委託先を探すにも、比較・選定・契約・テスト運用と、複数のステップがあります。

これらを「義務化直前」にまとめてやろうとすると、どうなるか。混乱したまま実施する、あるいは実施できないまま施行日を迎える——これが最悪のシナリオです。

義務化後に「うちはまだ準備中です」は通用しません。施行日以降は、「やっていない」こと自体がリスクになります。余裕があるうちに、一つひとつ積み上げておくことが重要です。


準備ロードマップ全体像

以下の3フェーズに分けて準備を進めましょう。

  • フェーズ① 今すぐ(〜2026年末):現状確認・情報収集・担当者の仮決め
  • フェーズ② 体制整備(2027年):規程整備・実施方法確定・外部委託先の契約
  • フェーズ③ 試験実施(2027年後半〜施行前):試験的に実施・課題を洗い出し・本番に備える

「完璧に準備してから始める」必要はありません。まず動く、動きながら整える——これが中小企業に合ったやり方です。完璧主義で動けないまま2028年を迎えるより、不完全でも早く動き始めた方が圧倒的にいいです。


フェーズ① 今すぐやること(〜2026年末)

ステップ1:自社の対象者数を確認する

まず、自社で「誰がストレスチェックを受ける対象になるか」を整理します。受検対象になる基本的な基準は以下の通りです。

  • 雇用期間が1年以上(見込みを含む)
  • 週の所定労働時間が、通常の労働者の4分の3以上

正社員はほぼ全員対象です。パート・アルバイトは上記の基準で判断します。「うちは正社員だけ」という会社はシンプルですが、パートが多い業種(飲食・小売・介護など)は、対象者の洗い出しに少し手間がかかります。今のうちに雇用形態別の人数を整理しておきましょう。

ステップ2:担当者(実施事務従事者)を仮決めする

ストレスチェックには、実施に関わる事務を担う「実施事務従事者」を決める必要があります。具体的には、アンケートの配布・回収・データ管理などを担当する役割です。

ただし、人事・労務の担当者は実施事務従事者になれません。実施事務従事者は個人の結果データに触れる立場になるため、人事権を持つ人物がその役を担うと「会社に情報が筒抜けになる」という不信感につながるからです。

「では、総務や経理の担当者に頼めばいい」——そう思うかもしれません。しかし現実はどうか。多くの中小企業では、1人の従業員が総務・経理・労務・人事をすべて兼務しています。「人事権を持たない人」を社内で探そうとしても、そもそも該当者がいない、というケースが珍しくありません。

そうした場合は、外部の専門機関に委託するのが最も現実的な解決策です。社会保険労務士が「実施事務従事者」として関与することができます。結果データの管理も外部で行うため、「会社に知られる」という従業員の不安も払拭できます。社内に適任者がいないことを悩むより、最初から外に出す設計にしてしまう方が、小規模事業場ではむしろスムーズです。

ステップ3:実施方法の方向性を決める

ストレスチェックの実施方法は大きく3つあります。

  • 厚生労働省提供の無料ツールを使って自社で実施
  • SaaSサービス(有料)を導入して効率化
  • 外部の実施機関(産業保健機関・社労士など)に全面委託

この段階では「方向性を決める」だけで十分です。具体的な選定はフェーズ②で行います。「社内でできそうか、外に頼むか」という大枠だけ決めておきましょう。


フェーズ② 体制を整える(2027年)

就業規則・社内規程に実施方針を明記する

ストレスチェックを実施するにあたり、以下の内容を就業規則や社内規程に定める必要があります。

  • ストレスチェックの実施方針(年1回実施など)
  • 実施者・実施事務従事者の役割
  • 結果の取り扱い・個人情報保護の方針
  • 高ストレス者への面接指導の手順
  • 不利益取扱いの禁止に関する方針

就業規則にこれらを盛り込むことで、「会社としての姿勢」が文書として残ります。従業員への説明にも使えますし、万一トラブルが起きたときの証拠にもなります。規程がないまま実施しても、いざというときに会社を守れません。

就業規則の変更は、従業員への周知・意見聴取・労働基準監督署への届け出が必要です。時間がかかることを見越して、2027年上半期には着手しておきたいところです。

実施機関・委託先を確定する

外部委託を選んだ場合は、実施機関との契約を締結します。主な選択肢としては、産業保健総合支援センター(無料相談あり)、各種SaaSサービス、または社労士事務所への委託があります。

委託先を選ぶ際のチェックポイントは次の通りです。

  • 医師・保健師など「実施者」の有資格者が関与しているか
  • 個人情報の取り扱い方針が明確か(データの保管・廃棄方法)
  • 高ストレス者が出た場合の面接指導体制があるか
  • 費用が自社規模に見合っているか(1人あたりの単価を確認)

複数社を比較して決めましょう。「安ければいい」という選び方は禁物です。後から対応が不十分とわかって変更するコストの方が大きくなります。

従業員への事前説明

制度を導入する前に、従業員にきちんと説明しておくことが重要です。説明なしに「来月からストレスチェックをやります」と言っても、「なぜ?」「会社に情報が漏れるんじゃないか?」という不安や不信感が広がります。

伝えるべきポイントは3つです。

  • ①なぜやるのか(法的義務、従業員のメンタルを守るため)
  • ②結果は本人にしか渡らない(同意なく会社に提供されない)
  • ③高ストレスと判定されても、会社から不利益な扱いはしない

これを丁寧に伝えるだけで、受検率が大きく変わります。「正直に答えていい環境」を作ることが、制度を機能させる最大のポイントです。


フェーズ③ 試験実施・改善(2027年後半〜施行前)

体制が整ったら、義務化前に一度「試験的に実施」することを強くお勧めします。

試験実施の目的は「完璧にやること」ではありません。わざとエラーを出す場として使う——これが正しい使い方です。

実際にやってみると、必ず「想定していなかった問題」が出てきます。

  • アンケートの回答率が想定より低かった(従業員への説明が足りなかった)
  • 高ストレス者が出たとき、誰がどう対応するか決まっていなかった
  • 結果データをどこに保管するか決めていなかった
  • 外部委託先との連絡フローが不明確で、やり取りに時間がかかった
  • 面接指導を依頼できる医師の確保が間に合わなかった

こうした問題は、やってみて初めてわかります。机上でどれだけ準備しても、出てこないものです。だからこそ、試験実施の段階で「エラーを全部浮き彫りにしておく」ことに意味があります。

義務化後にエラーを発見しても、「実施できていない期間」が生じてしまいます。今のうちにすべての穴を塞いでおくことで、2028年以降は「毎年回すだけ」の状態になれます。

試験実施後に確認すること

  • 受検率は何%だったか(低ければ従業員説明を見直す)
  • 高ストレス者が出た場合、面接指導の案内から実施まで対応できたか
  • 個人情報の取り扱いに漏れはなかったか
  • 実施にかかった工数・コストは想定通りだったか
  • 担当者が「次回も同じ手順で回せる」と感じているか

これらを確認・改善した上で、2028年の施行後は通常運用に入ります。


準備で一番つまずきやすいポイント

実際に準備を進める中で、多くの中小企業が同じところで止まります。あらかじめ知っておきましょう。

① 「担当者が決まらない」問題

最もよくある詰まりポイントです。人事担当者は実施事務従事者になれない、社内に適任者がいない、外部委託にするにも誰が窓口になるかが決まらない——この堂々巡りで時間が過ぎていきます。

解決策はシンプルです。「誰かに委ねる」と決めることです。外部の専門家(社労士など)に窓口ごと任せてしまうのが、小規模事業場では最も現実的なケースが多いです。

② 「就業規則を変えるのが面倒」問題

就業規則の改定を後回しにして、「実施だけ先にやっておけばいいか」と考える経営者も多いです。しかし、規程のない状態での実施は、万一トラブルが起きたときに会社を守る根拠がありません。就業規則への明記は、形式的な手続きではなく、会社の「盾」になります。

③ 「高ストレス者が出たときの対応」が未整備

ストレスチェックを実施した結果、高ストレス者が出ることがあります。そのとき「どうすればいいか」が決まっていないと、会社として適切に対応できません。面接指導の案内方法、対応する医師の確保、記録の保存——これらを事前に決めておかないと、いざというときに慌てます。


よくある質問

Q. 従業員が5人しかいません。それでも就業規則を作る必要がありますか?

A. 就業規則の作成・届け出義務は「常時10人以上」の事業場に生じます。10人未満であれば法律上の届け出義務はありませんが、ストレスチェックの実施方針や個人情報の取り扱いを社内文書として整備することは強く推奨されます。文書があることで、従業員への説明がスムーズになり、万一のトラブル時にも会社の姿勢を示せます。

Q. 今すぐ外部委託先を決めなければなりませんか?

A. 今すぐ契約まで進める必要はありません。まずは「情報収集・比較検討」を始める段階です。ただし、委託先の選定・見積り・契約・テスト運用には数か月かかることもあります。2027年には委託先を確定させておくことを目標に、今年中に候補を絞り込み始めることをお勧めします。


まとめ

ストレスチェック義務化の準備は、「完璧な状態を目指す」必要はありません。大切なのは、「今の自社に何が足りないか」を把握して、一つずつ動き始めることです。

フェーズ①では現状確認と担当者の仮決め。フェーズ②では規程整備と委託先の確定と従業員説明。フェーズ③では試験実施と課題の改善——この流れで動けば、2028年の施行日を余裕を持って迎えられます。

「手順はわかったけど、一人でやるのは不安」という方も多いと思います。当社では、ストレスチェック導入の準備を社労士がまるごとサポートするサービスを提供しています。何から始めればいいかわからない段階からご相談ください。

筆者プロフィール

泉 正道(いずみまさみち)|特定社会保険労務士/採用定着士/生成AIアドバイザー

姫路を拠点に中小企業延べ150社以上へ伴走。採用・定着・労務の相談累計3,000件超(2026年6月現在)。北は福島、南は佐賀まで顧問先があり、全国オンライン対応。

「採用より定着が先」——これが口癖であり、信念。耳が痛くても言い続ける。親に与えてもらった環境や収入を「全て自分の力」と誤解する2代目社長に説教して解約された経験あり。それでも伝え続けるのが私の役目。

支援の軸は制度(ハード)と対話(ソフト)の両輪。就業規則や評価制度を整えるだけでも、研修や面談を繰り返すだけでも、人の問題は解決しない。両方が噛み合って初めて、人が辞めない組織が動き出す。伴走とダメ出しができる社労士。

生成AI支援では「研修を受けた企業の9割が1ヶ月後に何もしていない」という現実に向き合い、経営者のPCを直接触り、当日に課題を解決する「実装型」の伴走を展開。商工会・商工会議所・大手生命保険会社でのセミナー講師としても精力的に活動中。